第24話 バラード

 俺はステージの上からキララを見つめ歌った。

 心なしかキララは震えているようだ。


 演奏が終わり俺はキララに向かって切々と語りかけた。


「この曲はユウキがキララ…… 

 あんたを思って作ったバラードだ」

「……」


「あんたは、あの夜、ユウキの部屋でこの曲を聴いた。そうだろ」

「し、知らない……」小さく首を振った。


「だから、あの時間、山下さんからの電話でバックに、このバラードが流れていたンだ」


「……」

「このCDは、この世に存在しない」


「え……」

「ひとつはリーダーのアツシ……

 もう一枚は俺の元に届けられた」

「……」

「そして最後の一枚は、キララ❗

 あんたが『あの夜』に受け取ったはずだ」


「……❗」キララの顔が強張こわばった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る