第13話 キララ

 地下の駐車場の彼女の車の前だ。かなり高級外車だ。


「ベンツかァ~😆🎶✨ ご機嫌だなァ~ー」

 ヒデは羨ましそうに車の回りを覗きこんだ。

「くゥ……」六人部むとべキララは視線を逸らせた。


「あなたは先日、ユウキの部屋を訪れましたねぇ」

「え、知りません…… そんな方」


「うッわァ~、ッでェな…… 

 セレブ御曹司と一緒になるから売れないビジュアル系はお払い箱かよ」


「な、これ以上、訳の解らない事を言うなら承知しないわよ」

 構わず車に乗り込もうとした。


「待って下さい。ユウキは死んだンですよ」

「え、それは御愁傷様……

 でも…… 本当にユウキさんなんてギタリストは知らないの」


「ほォ~、だなんて……

 ひとことも言ってませんけど」


「え……」一瞬、キララは言葉に詰まった。

「そうワイドショーか、何かで見たのよ」

 視線を逸らせ言い訳をした。


「なるほど…… ワイドショーねぇ」

 彼女の言う通りユウキ事は何度か、テレビでも報道された。


「もう良いでしょう…… 私はあなた方と話しているほど暇じゃないの」


「この曲は御存知ですよねェ……」

 スマホから音楽が流れた。


 『ラストソングは届かない』だ。


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