第10話 六人部《むとべ》キララ

 その若い男性は山下真治と言った。


 僕らは近くの公園のベンチに座り話した。休日なので子供連れが多い。



「これは、俺の親友の曲ですが」

 簡単に説明した。


「なるほど曲のタイトルは……」


「『ラストソングは届かない』ッて曲だけど売り物じゃないンだ」


「え、売り物じゃない。そうですか」

 山下は残念そうに肩を落とした。



「いったい、あなたはこの曲をどこで聴いたンですか」



「え、ああ」

 山下は恥ずかしそうに顔をしかめた。



 彼の話しによると数日前、彼女をデートに誘おうとしたがそうだ。


 その時、彼女のバックで『ラストソングは届かない』が掛かっていたらしい。



「待って下さい……」俺は少し気になった。

「その彼女に、いつ電話を掛けたンです」



「はァ~…… 三日前ですねぇ」

「え、三日前の何時ごろですか❓」



「さァ~、かなり深夜でした」



「その時、バックでこの曲が流れてたンですねェ……」



「ええ、そうですが…… 何か❓」

 山下は不審な顔をした。


「その時の通話は録音されてますね」

 最近のスマホなら削除しない限り通話は録音される。



「ええ、まぁ……」山下は驚いていた。



「その彼女の名前を教えて下さい」



「はァ~……六人部むとべキララですけど」

「むとべ……❓❓」

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