第9話 クリス

 ユウキの事件は売れないミュージシャンの自殺で片付けられそうな気配だ。



 翌日、郵便受けを見るとユウキからゆうメールが届いていた。



「あ、ユウキからだ」日付は彼が亡くなった日の昼間だ。


 中身を調べてみるとCDが入っていた。早速、プレイヤーに掛けた。

 


 『ラストソングは届かない』なのだろう。


 さすがにギターは上手いが、歌はお世辞にも達者とは言えない。

 特にコーラスが意味不明だ。


『アイ ラブ x x x x 』何と言っているのか、聞き取れない。



 俺は、美人警部補のクリスに連絡し彼女と落ち合った。


 彼女は真っ赤なロードスターでお出座でましだ。派手なオープンカーだ。


「スッゲェ……😆🎶✨ オープンカーだぜ」

 ヤケにヒデは嬉しそうだが、こっちは乗るのに躊躇する。


「私、見かけが地味でしょ」

 クリスが苦笑した。


「え……」どこがだ。ミニスカートで目を瞠目みはるような巨乳だ。


 誰もが振り向くような美女のクセに。

 取り敢えず彼女の車に乗り込んだ。



「これが、ユウキの亡くなる数時間前に送って来た『ラストソング』だ」

 俺は信号で停車した時、スマホで聴かせた。

 オープンカーなので外にも音楽が漏れた。



「ふゥン…… あの歌詞の歌ねぇ」

「ああ……」



「ギターは上手いンだけどねェ……」 

 後部座席リアシートのヒデが茶化して笑った。



 その時、突然、信号待ちしている若い男性が駆け寄って来た。 



「ちょッ、その音楽…… 何て曲ですか」

「え 😳」

 いきなり路上から呼び掛けられビックリした。

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