Ⅴ はじめて

「さあ、回復したことだし、復興作業初めちゃいましょう!」


 ランスの声と同時に、活力が戻った人々が動きはじめる。


「あのぉ、この岩をどけてもらえませんでしょうか?」


「あっ、はい!自然魔法ノーマル 一体化シンクロ。」


 僕が唱えると岩は緑に光り、浮かんだ。そして、住民から程遠く離れた裾野に着地した。

 岩が塞き止めていた清水がどっと流れ出し、みるみるうちに小川となっていた。

 人々が歓声を上げ、驚いている。

 僕が人助けをした。それも、はじめて。

 この瞬間が、幸せだった。


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「本当にありがとうございました‼」


 ラシャ村にきて1週間。僕らはついにこの村を発つことになった。


「いえいえ、とんでもありません。私たちは当然のことをしたまでです。それにこっちがお礼を言いたいほどです。ただでさえ食糧難なうえに、美味しいご飯を御馳走になって……。」


 ランスが僕とアズを代表して言う。


「私ら下民は魔法騎士ナイトに誠実にするのが常ですので。

 御蔭で元の生活に戻れそうです!」


「それはそれは。」


「ねぇ!また来てくれるかな?」


 小さな男の子が僕の前に飛び出してきた。


「ああ、コラ!おやめなさい。」


「いいんですよ。」


 男の子の母親と思われる女性が制するのを僕は止めた。


「うん。また来るよ。きっと。」


「じゃあ、行きましょうか。」


 僕らは別れを告げ、村を発って行った。


「お二人ともお疲れ様でした!よかったらご飯どうぞ~。」


 ランスが何時の間に用意したのかわからないが、僕とアズは受け取り、フォークを

 口の中に入れると、「…魔力が増えていく…。」


「これは食べると魔力が増えていく魔法なのです!入団したばかりだから疲れたでしょう?今日はこれ食べてゆっくりお休みよ~。」


「出た、滅茶苦茶な魔法!しかし、美味い!こんなにうまい料理は食ったことがねぇ!」


「どんどんお食べ~。お代わり沢山ありますよ~。」


 箒の上なのに、次々と料理を差し出してくるランス。

 僕もフォークを進める手が止まらない。

 最終的に僕らは、アジトに入った瞬間、クロ団長に叱られた。

 叱られた理由はこれだ。


「なに1週間も行ってたんだ!2~3日でよかったろ。あと、勝手に飯食ってくんな。俺だって食いたかったんだ。」


 今回の件で分かったことは、クロ団長は食を愛しているも同様ということがわかった。

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