Ⅲ ライバル


「アズじゃないか!お前もここか?」


 入ってきたのは身長はやや低め、淡いグリーンで首の半分ほどの長さのややクセ毛がある髪。

 瞳は深いブルーで、瞳孔の中にも光がある。


「ああ。一発合格だ!リウィルスも合格したんだな。」


「え?あ、うん。」


 ホントはスカウトなんだけどね、とボソッと呟く。


「んじゃ、感動の再会はそのくらいにしといて、これ着ろ。お前らのローブだ。」


 魔法騎士団ナイツには、団ごとに区別するためのローブの着用を義務付けられている。

 黑兎ラビットのローブのデザインは、全体が黒く、左胸あたりには白く縁取った兎の頭がある。その下にはそれぞれ自分の名前が筆記体の刺繍で施されている。

 僕ら入団して間もない新人は、ローブの長さが肩甲骨あたりまでとなる。

 これは階級と関係してきて、上がっていくとともに長くなったり、洒落てきたりする。


「よし、お前らに最初の任務を任せる。この村でひどい干ばつが起こっているらしい。どうにかしてやってくれ。」


「……え?」


「大丈夫!新人はまずそんな仕事だから!」


 ラクセルが途中で口をはさむので、クロは空間あな魔法マジックで作り出し、行先もわからない場所に放り出そうとしている。


「嫌なら、ここナイツを辞めてもいいんだぞ?」


 クロのあまりの剣幕に、カイルとアズは小さくなってしまう。


『なかなかここの団長は厳しそうだな…。って、どこも同じことか。』


 大人しくしなければ、さっきのラクセル先輩の様に何処どこかへ放り出されてしまうかもしれない。

 そう思うと、背筋が震えてどうしようもない。


「この村はここだ。国の南方の外れにあるラシャ村。紛争の現場となったために、食料不足、そんでもって負傷者はわんさかいる。だから、救護隊に来て欲しいとさ。んじゃ、今から行ってきてくれ。」


「了解しました!」


 カイルとアズはクロの恐ろしさを知ったうえで、逆鱗に触れないよう大人しく従った。


「ラシャ村はここから30分ぐらいだ。魔力も結構消費するだろうから、ランスを連れてけ。」


「ランス?」


 クロはアジトを出て、裏に入る。

 そこには小屋があり、なにか物騒な音が聞こえている。


「ランス!ちょっと出て来い!」


 クロが叫ぶと、小屋からは長い髪をポニーテールで結んだ、アズと同じくらいの身長の女性、いや、女の子が出てきた。

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