バレンタインSS. チョコよりも甘い物
※学生や社会人の皆さん、お疲れ様です♡ それではどーぞ♡
「うーん、風花さんいったいどうしたのかな。今日の放課後に空き教室に来てだなんて」
僕は首を傾げながら夕日が窺える廊下を歩く。思い出すのは授業の合間に話しかけてきた風花さんの言葉。
『ねぇ来人くん。今日の放課後ぉ、時間って大丈夫ぅ? 二階の空き教室に来て欲しいんだけどぉ……』
『え……? うん、大丈夫だけど……何の用事?』
『それは来てからのお楽しみぃ!』
そう言って彼女はにへらっと笑った。風花さんの用件は気になったけど……うん、きっと風花さんなりになにかシミュレーションを考えたのだろう。
今回はその中身を秘密にしたサプライズというところか。さっすが天使は遊び心があるね!
「えーっと、確か二階の空き教室って季節ごとのイベント資材の物置部屋として使われているって話だっけ?」
ソースは我が家の姉。あんな自宅ではあんなファンキーゴリラでも高校では真面目な清楚系生徒会副会長として通っているからね。
入学前に色々高校のこととか教室のこととか教えて貰ったんだよねぇ。
そんなこんなでその空き教室の前へと到着。
廊下の一番奥側、しかも廊下側に窓がガラスが無いせいで夕日が遮断されているのですこーしだけ不気味な雰囲気が漂っていた。
中には既に風花さんがいるのか扉越しに教室の中は窺えず、黒い布で中の様子は分からない。なんだか手が込んでいるなぁ、と思いつつ教室の扉をコンコンと叩いて声を掛ける。
「風花さーん、僕、来人だよー。中に入っても良い?」
『うーん! 大丈夫だよぉ!』
中からは風花さんの元気の良い声が聞こえた。僕は風花さんのシミュレーションのサプライズに少しだけ緊張とわくわく感を感じながら扉に手を掛け、そしてスライドしていった。
「おじゃましまーす」
「いらっしゃーいぃ♡」
「……その恰好ってどうしたの風花さん?」
扉を閉めて風花さんの近くに行く。
教室の中に差した夕陽をバックに、風花さんのその身体は顔だけ出した状態で大きな白い布に包まれていた。
まぁここは段ボールとか積まれている資材置き場だし、教室の窓に使われるようなカーテンなどが置いていても不思議ではない。
僕は風花さんのてるてる坊主のような姿に疑問を浮かべつつ問い掛けると、彼女はにへらっと笑みを浮かべていた。
しかし、僕の瞳にはその笑みがどこか違うように見えた。いつも通りではない、なにか大人っぽさを感じる色を秘めた笑み。
「あぁこれぇ? これはねぇ―――プレゼント、だよぉ」
「プレゼント……? あぁ! その布の下に隠してあるんだね!」
「そうだよぉ。私なりの精一杯の気持ちを込めたぉ、来人くんだけのプレゼントぉ♡」
「え、それってどういう意………ッ!」
僕が最後まで言葉を言い終える前に風花さんは行動に移した。彼女が浮かべる表情はそのままに、今まで身体に巻いていた布が重力に従い落ちた。
教室の床に擦れた音と共に布が広がるけど、僕はそんなことよりも目の前の風花さんに目を奪われる。
「それはぁ―――わ・た・しぃ♡」
「ふふふ風花さんっ! ちょっ、なんでそんな
そう、なんと風花さんは胸の頂点や局部を細くて赤いリボンで隠した以外、真っ白でシミ一つない綺麗な肌を晒していた。
え、ちょっ……! マジでどういうこと……っ? これって何かのシミュレーション? え? え? いったいなんなのこれ……ッ!?
僕が困惑しながら目を白黒させていると、いつの間にか近づいていた風花さんに押し倒される。
「えへへぇ♡」
「う、うわっ!」
「なんでって当然、来人くんのすべてを私だけのものにする為だよぉ」
「ふ、風花さん! この体勢はいろいろ不味いって! 当たってるから!」
「来人くん可愛いぃ。わ・ざ・と、だよぉ♡」
そう風花さんは微笑んでくるけど、ほんとうにこの体勢は不味いよ! 控えめだけどしっかりとした弾力の胸とか、女の子の大事な部分とか! あっ、擦りつけてきちゃダメだってぇ!!
「すき、すき、だぁいすき♡ 今までずっと来人くんだけを見てきたぁ。それは昔も、今も、そしてこれからもぉ……だからねぇ?」
風花さんの顔が、唇が。僕の耳元に寄せられる。
「―――チョコよりもあまぁい物、受け取って欲しいなぁ?」
「な……っ、ちょっ、風花さん……!?」
天井を背景に向き合った風花さんの表情はとても真剣で、綺麗で、可愛さとは質が違った妖艶さが僕に向けられていて。
ゆっくりと、唇と、唇が、引き寄せ合って―――。
「………………ハッ!」
僕はいきなり目が覚めた。目の前には黒板、辺りを見渡すと、机や椅子があった。どうやらここは高校の空き教室のようだ。
「来人くん? どうしたのぉ?」
「ふ、風花さん!? あれ、空き教室は? 裸は!?」
「え、えぇ……いきなりそんなこと言われてもなぁ……。だって来人くん三十分くらいぐっすり寝てたんだよぉ?」
風花さんは僕ににへらっと優しく微笑む。そうだ、僕は風花さんと二人っきりで別の空き教室で勉強してて……。
どうやら僕はテスト三日前の勉強に疲れていつのまにか寝ていたらしい。
………。オーケーオーケー。理解した。ただ、これだけは心の中で叫ばせてくれ。
夢オチかよクソがッッッッ!!!!!!!!
結局そのまま僕は勉強に集中できず、終始悶々としながら家に帰宅した。
「ふふふっ♡」
今まで彼女と一緒にいる機会が多かったのに、なんで今日に限ってそんな夢を見てしまったのか疑問に思わず―――。
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