NR貨物の買収に成功したか

 さて、夏休みももうすぐ終わるが、ここで北条先輩から報告があった。


「NR貨物の買収が終了しましたわ。

 しかし本当に買収して良かったのでしょうか?

 あちらは 国鉄の分割民営化でも2社の旅客の方はともかく、貨物は経営基盤がとりわけ脆弱で、もはや余命幾ばくもないと囁かれているようで、流石に今回は再建は不可能と見られているようですが」


「まあ、傍目にはそう見えるだろうね。

 でもさ、そもそも俺たちは新聞や教育用パソコンも含めた電化製品なんかの全国へ発送する品物を生産する傘下企業を持っているし、日三や山田、富士山なんかの部品工場から製造工場への部品輸送や新車の輸送はなるべくNR貨物を使うようにしていって、家電や自動車なんかのリサイクルのためのリサイクル廃材を全国から運んでくるのにも貨物は役に立つはずだよ」


「なるほど、壊れた家電や廃車となった自動車やバイクの運送は多少時間がかかっても良いですし、運搬量や重量があるため貨物に向いていますわね。

 基本的には貨物列車専用の僅かな支線や駅を除いて、自社で線路は殆ど所有していないのでメンテンナンスなどの費用もかかりませんし」


「高速道路整備が早く進んでトラックでの輸送が主流になりつつあるとはいっても、そのせいで高速道路の渋滞も半端じゃないし、今後はトラックの排ガス規制や過積載に対するペナルティも重くなっていくし、運送会社の過当競争で厳しくなっていくからね。

 それに鉄道輸送の利点は、長距離での大量輸送が可能で、個別のドライバーが不要なことだから。

 無論末端への配送にはトラックが必要だから、トラックでの荷物の積み下ろしがしやすいコンテナも作っていかないといけないけどね。

 それに前にも言ったけど鉄道貨物は500km以上の遠距離大量輸送は本来トラックより得意だ。

 1本の貨物列車で大型の10トントラック65台分を一度に運べるし、CO2排出量もトラックの10分の1程度で環境にもやさしい。

 しかも鉄道輸送は運行頻度も多いし、海運や空運と違って天気にも左右されにくいから、定時運行率も94%と非常に高いしね」


「鉄道貨物のメリットがそれほどたくさんあるなら、もっと使われてもよいのではないでしょうか?」


「そのあたりは国鉄の経営者や社員の怠慢だよね。

  営業努力をしなくても好き勝手ストライキをして荷物を運ばなくても、客は貨物を使ってくれると強気でいたらそっぽを向かれたわけさ。

 それはともかく東海道新幹線は無理だけど上越、東北、北陸新幹線はダイヤに余裕があるし、貨物専用新幹線の開発・導入も進めていきたい。

 ともかく全国ネットワークを有する国内唯一の貨物鉄道会社を傘下に持つのは強みにはなっても弱みにはならないはずだよ」


「だとよいのですが」


 まあ、現状のNR貨物の赤字を見ると、とても黒字になりそうには見えないだろうな。


 数字が読める北条先輩には余計そう見えるんだろう。


 ただ鉄道による旅客輸送が圧倒的な規模を誇る日本ではあまり想像できないが、世界的に見れば旅客より貨物の方が輸送量が大きい国も多い。


 アメリカなどは人間は飛行機で移動するが荷物は貨物列車で運ぶことのほうが多いし、鉄道による貨物輸送量が20%から30%と高い割合を欧州では占めたりもする。


 最も日本の場合は基本、線路が狭軌であるため大きな物を載せづらい上にカーブや傾斜が多いため速度を出しづらい、大陸国などにおいて貨物列車が果たす大量輸送の役割を、日本では内航海運やフェリーによる輸送が担っているなどの理由もあるから単純に貨物烈車は有望だとも言えないので輸送速度の高速化はやはり必要だと思う。


 船より早いのは当然だが、トラックよりも早い時速200キロとか300キロで荷物を運べるということになれば鉄道貨物もだいぶ見直されると思うんだ。

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