食品添加や調理でのトランス脂肪酸の規制を訴えたが業界の反発が強くてすぐには無理だった
5月28日 - 西ドイツの19歳の青年マチアス・ルストがセスナでソ連の防空網を突破してモスクワの赤の広場に着陸した。
この事件は世界を驚かせ、ソ連の軍当局は面目丸つぶれの形となった。
とはいえ、ソ連軍当局はセスナが領空侵犯をしている事自体はキャッチし、戦闘機がスクランブル発進したが、大韓航空機撃墜事件後の1984年から、民間機の撃墜が禁止されていたため撃墜は許可されなかった事による。
6月6日 - 東村山市老人ホーム松寿園で火災、寝たきり老人ら男3名女14名の計17人が焼死、男7名女18名の計25名が負傷、死傷者の多くは女性であった。
出火場所は2階リネン室で火元となるものがないことから放火と思われるが詳細は不明である。
この火災を契機にして、消防関係法令の改正、病院や社会福祉施設で面積の小さな施設にもスプリンクラーの設置、夜間の夜勤者以外に管理当直者の人員配置などが義務づけられる。
「老人ホームの火災で死傷者が多数……か。
しかし夜間なのに二階のリネン室が火元なのはどうにも腑に落ちないな」
俺がそう言うと北条先輩がうなずいた。
「確かにそうですわね。
普通に考えて2階にあるリネン室が失火によって火元になる可能性は少ないでしょうし」
「とは言えそっちの方は警察の範囲だけど、逃げられなかった根本的な原因の寝たきりの原因の多くは脳卒中と痴呆症だから食生活や運動を勧める必要はありそうだね。
あとマーガリンやファットスプレッドやショートニングはなるべく食べないようにして揚げ物油に使わないようにさせたほうが良いと思うよ」
「マーガリンを使わないほうが良いのですか?」
「うん、マーガリンなどに含まれているトランス脂肪酸がLDL(悪玉)コレステロールを増やして、HDL(善玉)コレステロールを減らすことで動脈硬化や血栓症を増やし、それが脳卒中や痴呆症の原因の可能性が高いみたいだからね。
単純に考えて常温だと固体の脂をいっぱい摂れば血管でも固体化する可能性は高いよね。
あとは高温で長期間加熱された植物油にもトランス脂肪酸類が増えるし、マイクロ波加熱は植物油中のトランス脂肪酸を増加させるみたいだから、たとえば牛乳を電子レンジで温めるとかはやめたほうが良いみたい」
俺がそう言うとやはり北条先輩はうなずいた。
「たしかにそうですわね」
実際に寿命が伸びたところで寝たきりや痴呆のものが増えては意味がない。
「脳卒中と痴呆症は、糖尿病や高血圧などの成人病……と言っても子供も糖尿病になるので生活習慣病とでも言うべきですが、それから引き起こされることが多いし、米や麺ばかり食事の時に食べるのは良くないから、おかずなんかの種類や量を増やすのは大事だよな。
運動不足なのも問題だけど」
日本では主食とおかずというものが明確に分けられているが、外国ではそういう考え方自体がなかったりもする。
そして日本ではかけそばやもりそばのようにほぼ麺だけしか食べない麺料理も多く、ご飯と漬物と味噌汁だけという人間も少なくないが摂取する食物の大部分が穀物というのはあまり良くない。
不飽和脂肪酸を多く含む青魚から飽和脂肪酸やトランス脂肪酸を含む牛肉などにおかずが移り変わっているのもあまり良いことではないのだろう。
「現状だとトランス脂肪酸が使われている食品はパン、マーガリン、スナック菓子、マヨネーズ、カレールーなど多岐にわたるけどそういったものを多く食べると心臓発作が起きやすくなり、痴呆症にもなりやすくなると報じていくしかないかな。
アメリカでは1957年には人工のトランス脂肪酸が動脈硬化の原因となる危険性を指摘する研究結果を発表されていても食品業界と癒着した科学者が飽和脂肪酸を多く含むラードやバターよりも、マーガリンやショートニングのような半硬化油の方が安全と発表していたけど、トランス脂肪酸が心臓疾患の発症率を増加させる原因物質であることを示す多数の研究が発表され始めているんだよね」
”前”では1994年に公益科学センターに対してトランス脂肪酸を栄養ラベルに表示するよう求め、2006年から食品に含まれるトランス脂肪酸の表示が義務化されているし、2002年にはアメリカ医学研究所 が「トランス脂肪酸の安全な摂取量の基準は存在しない。できるだけ食べないようにするべき」と発表したこともあり、アメリカ、カナダ、台湾、タイなどでは使用を禁止され、EU加盟国やシンガポールではトランス脂肪酸濃度の上限値を設定したうえ表示を義務付け、韓国、中国、香港では食品中のトランス脂肪酸濃度の表示が義務付けられた。
そういった世界の潮流にも関わらず日本では全く規制されることがなかったことが痴呆老人を増やした原因のひとつだろう。
結局バターとマーガリンだとどちらが安全なのかと言えばバターの方になるし、卵の食べ過ぎはコレステロールを増やすので良くないというのも、卵に含まれるコレステロールは血液中のコレステロールにほとんど影響がないという研究結果が出て、極端に食べ過ぎなければ、豊富な栄養を含む卵を制限する必要はないことなどもわかっている。
そもそもコレステロールそのものは良い悪いというものはなく、トランス脂肪酸の過剰な摂取により増加するいわゆる悪玉コレステロールもある程度は必要なのだ。
俺は新聞及びテレビでパン、ケーキ、ドーナツ、アメリカンドッグといったベーカリー、クッキ-やビスケット、ポテトチップなどのスナック菓子、植物性クリーム、ショートニングを加えてあげたフライドポテト、ナゲット、ポップコーン、油を含む物の電子レンジでの調理などは悪玉コレステロールを増やし、動脈硬化や血栓を増やして、その結果、心臓発作や脳卒中、痴呆症などを増やすことで寝たきり老人や徘徊老人を増やしていることを報じ、これらの規制を行なうべきであることを報じたが、製パンメーカーやファーストフード業界はバターなどより安価で、かつ加工に使うことで食品の消費期限を延長させ、食感も抜群に良くなる安価なトランス脂肪酸の含有や使用制限には強く反発してきた。
「経済性を優先して、安全を軽視すればその結果、将来今回規制に反発した食品メーカーなどは将来多額の賠償金を払うことになるだろう」
と俺は言っておき、どのメーカーが反発してきたかなどの資料をきっちり残した。
しかし、俺が痴呆や寝たきりを増やしている原因を報じたことでパンやドーナッツ、マーガリンなどの売上げはかなり落ちたようだ。
そして1950年代からトランス脂肪酸の危険性を訴えてきたイリノイ大学のフレッド・カマー教授と提携してアメリカ食品医薬品局や日本の農水省や厚生省を提訴することも検討している。
メーカーのためにと経済性を優先して安全性を犠牲にすることでその結果、国民の健康を阻害するのは許してはいけないのだ。
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