そろそろ社会問題になるセクハラを解決するにはどうすればいいだろうか

 さて、セクシュアルハラスメントいわゆるセクハラという概念が日本で知られるのが、男女同権が声高に叫ばれるようになった1980年代のことで、平成元年(1989年)に日本で初めて職場でのセクハラを問う裁判が起こされ、世間に知られるようになり流行語大賞を受賞してもいる。


 すれ違いざま、OLのヒップやバストをサッとタッチし、それがあいさつ代わりになっているスケベ社員の1人や2人、どこのオフィスにもいるはずだ。


 しかし、これがアメリカだと、セクシャル・ハラスメントとして訴えられてしまう。


 などと言われていたりする。


 セクハラの定義は雇用上の利益を条件に性的関係、もしくは性的行為を強要することか、性的な行動、言葉により、劣悪な職場環境をつくり出すこととされている。


 性的な行動、言葉というのは非常に曖昧な定義で、恋人がいるのかとか聞くだけでもセクハラになってしまうと、若手社員の縁談を会社で進めるというのも難しくなってしまうのが痛痒しではあるが。


 とはいえ、事務所で契約したかったら今夜付き合えとかのような事例が芸能界などで蔓延していたことなども今ではだいぶ減りそういった雇用上の利益を条件に性的関係を求める対価型セクハラは減少したのではないかと思う。


 いっぽうで社員旅行や研修旅行で女性に浴衣を着るように求めたり、お酒をつがせたりする事やミニスカートやタンクトップなど肌の露出が多い服を着る事を求めること、スリーサイズを聞くことなどもそれを女性側が不愉快に感じれば環境型セクハラになる。


 このあたりはもはや空気を読めというレベルな訳だがここで問題なのは俺が普段着和服を来てほしいと頼むことを、男性も含めてみんなが苦痛と感じればセクハラに値するということであったりするのだが、女子高生はみんなで膝上のミニスカートを履いたりもするのでそのあたりよくわからないのだよな。


 現状では俺はなるべく普段着和服を着るようにしているし、ライジングのメンバーなどにもなるべくアピールのために着てもらうようにしているのだが。


「みんなも普段着和服を着てもらうようにしているけど、実際に着てみた感想はどう?

 上手く広まる感じはする?」


 俺の問にはまず北条先輩が答えてくれた。


「私としてはそう悪くないと思いますわ。

 意外と動きも妨げませんし、家で洗濯やお手入れが出来ますからね。

 物珍しいのか電車の中などでじっと見てくる人もおりますが」


 しかし最上さんが苦笑して言う。


「正直に言えば絵を書く時はこの格好だとちょっと書きづらいかなって気はしますね」


「羽織の袖が長いと作業の邪魔ってことか」


「そうですね。

 確かにちょっと邪魔な感じはします」


「なるほど……着るのが嫌とかはない?」


「それは別に問題ないですよ。

 デザインも可愛いですし」


「なら良かったよ。

 セクハラだっていわれても困るしね」


 デザインは最上さんを中心にやっているから最上さんが服のデザインを嫌っていうこともないか。


 実際に所でセクハラとして訴えられるのは酒を泥酔するまで飲ませてホテルに連れ込んで合意なしの強制わいせつや強姦に値するものとかもあるが、これは私立大学のヤリサー出身の男とかがやりがちな気がする。


 ただ、執拗な個人的誘いや意図的に流布などにも関してはおそらく男性の認識と女性の認識がだいぶずれているだろうし、年が近い独身の異性ならば許されても年上の妻子持ちが言うとアウトな場合もあったりするだろう。


 セクハラとは、単純明快な性的強要や、あからさまなわいせつ行為ではなく、もっと微妙なものであったりすることが多い。


 女性側が嫌だなと思っていても、明確に嫌と断ることで職場での環境が悪くなって、仕事をしにくくなるので、上司や顧客に悪感情をもたれないように曖昧にしておくこともあるからだな。


 そしてここで問題なのは東大を出た優秀な幹部というのは、私立大学のヤリサー出身の男とは逆に中高一貫男子校で勉強ばかりやり、東大に入学しても女性との接点が殆どないままに社会に出ることが多いので、エリート意識が強く女子との接し方がわからない男性が多いということだろう。


 もともと会社組織というのは男が圧倒的に多い男の集団であったわけで、その男しかいないというのが普通の空気の人間の中に女が入りこむと、どうしても女性が嫌がっておるかどうかという空気が読めないためにトラブルが起きるわけだ。


 いや俺も偉そうには言えない気がするが。


「男が女のノーに鈍感なのは仕様だと思うけど、学校生活である程度は改善できないものかな……」


 俺がそう言うと明智さんが言った。


「部長の場合はノーよりイエスに鈍感なのが問題だと思うっすけどね」


 浅井さんがそれにうなずいた。


「本当そう思います」


 そして浅井さんの肩をポンポン叩いて横山さんが言った。


「ひーちゃんも大変だよねぇ。

 憧れの王子様がこうだと」


 そして北条先輩や斎藤さんもこくこくとうなずいている。


「ありゃ、これ地雷発言だったかな。

 でも自分に好意を持っていると思うのが、実際は会社なんかの役職の上下の問題だったりしても困るしね」


 実際に男性の上司が女性の側の好意と思っていたものは、組織内での関係や雰囲気維持のためだけのものであったりする場合も多いらしいし。


「そんなことを真顔で言う部長は馬鹿じゃないですか?」


 朝倉さんがそう言うと千葉さんもうなずく。


「まあ頭はいいけど馬鹿だからしょうがないよね」


 うーん、自分の持っている地位とか金のおかげで、周囲が迎合しているだけかもしれないというのを軽く見るのも良くないと思うけどな。

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