今年のオリエンテーションは舞浜のアレだ
さて、毎年恒例の校外オリエンテーションだが、今年は舞浜のアレに行くことになった。
俺は北条先輩に聞いてみた。
「やっぱ、あそこは女子高生には人気だし、何だかんだうちの学校は相変わらず女性比率が高いからあそこは外せないってことかな?」
俺の質問に北条先輩はうなずく。
「そうですわね。
谷津遊園でも東京都東部・千葉県西部の小中学校の遠足の行き先としてだいぶ増えていますが、高校では少ないです」
「まあ、どうしてもイメージ的にそうなるよな。
といっても舞浜の昨年の入場者数は800万ちょっとだったっけ?」
「そうですわね。
その前は1000万を超えていましたから大きく減少していますわ」
「まあ800万ちょっとでもものすごい数だけどな」
「そうですわね」
舞浜ではジャイケル・マクソンの人気が絶頂期であることもあって、それを用いたアトラクションのキャプテンEYOが3月に開設された。
本来であれば、昨年の昭和61年(1986年度)には経営の黒字化が進み、累損がなくなるはずだったが現状ではそこまでには至っていないようだ。
その理由は谷津遊園が復活し、千葉県西部の幼稚園・小学校・中学校の遠足の行き先としての割合が減り、さらに谷津遊園だけでなく、三重の長島温泉ランドなどの日本各地の遊園地などの入場者数が伸びた事により、舞浜の入場者数が結果的に減少したことにあるとは思う。
まあ遊園地やテーマパークの多くは入場者数が伸び続けるほうが少ない。
それだけ舞浜の入場者数というのは学校の遠足や修学旅行などの学校団体によるところが大きかったわけだ。
まあ後は、並ぶ時間が長すぎてほとんどアトラクションを楽しめないというのは、やっぱどうかと思う。
舞浜に行くとカップルは別れると言われて久しいが、今ではカップルで行くパターンはだいぶ減ったのではないかと思う。
それでもこれまでは雷通のテレビCMでのクリスマスイベントや春旅行などのゴリ押し、リピート率90%の嘘くさい宣伝などもあったが、結局は入場者数に対してアトラクションの数が足りなすぎる状況で、そんなに高い顧客満足度が得られるわけがない。
実際に”前”では世界で続々開園されているが、パリは赤字続きで入場者数はさっぱり伸びなかったりもしている。
そして今年から入場料を1983年からの3,900円から4,200円へ値上げしたのも響いていると思う。
繁忙期以外の平日は安いわけでもない。
値上げ分は設備投資に回されるだけのようで、混雑解消の対策をせず、値上げ分も従業員の昇給に回されることはなく、キャストのやる気も上がらない状況のようだ。
「まあ、俺も一度は舞浜に行って見ておいたほうが良いとは思っていたから丁度いいか」
現状ではまだ西船橋や南船橋から東京駅方面は開通していないので舞浜へはバスで行くのだがまずそこからして渋滞がひどい。
実際に湾岸道路とそれに隣接する一般道の357号線以外にバイパスになる道路がほとんどないからどうしようもないけどな。
駐車場で統一された制服に身をつつみ、にこやかに声をかける駐車係の青年が、ショーアップされたにこやかな笑顔と動作によってたくみに適当な場所に誘導されるがこれはさすがだと思う。
「なるほど、ここの非日常は駐車場からもう始まっているのか、これは谷津遊園なんかも見習うべきだな」
多くの遊園地における駐車場係にここと同じだけのやる気があることはほぼ無いがこれは見習うべきだろう。
俺の言葉に北条先輩はうなずいた。
「私達が前に来たときは電車とバスでしたからここまで気が付きませんでしたが、たしかにそうですわね」
しかし千葉さんが苦笑していった。
「いやー、せっかくの校外オリエンテーションだし、そういう話はどうかと思うけど」
「あ、悪い、たしかにそうだな」
ちなみに俺たちの班は昨年と同じく俺、里見くん、斉藤さん、千葉さん、北条先輩、浅井さんというメンバー。
みんなで入場門をくぐって中に入ると平日だけあってやはり学生っぽい制服姿が目立つ。
「さて、まずは何に乗ろうか?」
この時点だとまだないアトラクションは結構多い。
そこで手を上げたのは浅井さん。
「私、シンデレラ城に行きたいです」
そして千葉さんもそれにうなずいた。
「あ、それ賛成ー」
二人以外は特に声はあげないが特に反対意見はないみたいだ。
「じゃあ、最初はシンデレラ城にしようか」
というわけで土産物屋やレストランの建物が並ぶアーケードでおおわれた通りを抜けてシンデレラ城へ向かう。
園内どこからでも見えるランドマークでもあるシンデレラ城はここからどこにでも行けるように設計されているらしい。
人気のアトラクションのひとつなので2時間ほど待ったがようやく中へ入れた。
で、ここのアトラクションは徒歩移動型のアトラクションで、シンデレラ城の内部を、ガイド役のキャストと共に数十人のグループが歩いて移動する。
珍しくこのアトラクションは、ここ独自のアトラクションでかなりの人気もあったんだ。
そしてメインイベントに差し掛かる。
「さあ悪霊の王をその”光の剣”で倒してください!」
と光の剣を渡されたのは北条先輩。
「わかりました、消え失せなさい!」
と光の剣をかざして悪霊の王が倒されると出口付近の小部屋が開き、北条先輩が光の勇者と称えられてそこで勇者のメダルを授与され、女性ゲストはレディの称号も授与された。
北条先輩の場合光の勇者というより
それはともかくここのアトラクションへの没入をさせる能力は大したものだと思う。
その後はレストランで昼食を取りカリブーの海賊や宇宙山などのアトラクションにも乗って売店でお土産をかったりもしたが、やっぱりどれも待ち時間が長いのが最大のネックだな。
特にレストランで1時間待ちで高い割に味が微妙なのは正直どうかと思う。
そんなに人気じゃないアトラクションならそこまでは並ばないのではあるが……。
「去年の上野の方が俺は良かったな」
里見くんにはここはだいぶきつかったらしい。
「まあ、それもわかるよ。
正直男にはきつい場所だと思う」
女性陣は待ち時間が長くてもそれをおしゃべりで暇をつぶせるが、男はそう行かないから。
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