カプコの子会社化に成功したよ
さて、新学期も始まり俺達は3年生になった。
高校生活も後一年で終わりだ。
まあ、北条先輩はこれで4年目だけど。
学校の新学期が欧米では9月なのに日本では4月なのは、欧米においては一年の農業の予定にあわせて開校時期が決められていて、小麦など7月や8月に収穫を迎える農作物が多かったため、農業を行っている家庭ではその時期に子どもの手も借りたいほどの忙しさとなり学校どころではなかったので、学校が始まるベストなタイミングは、農閑期の9月とされた。
いっぽうの日本では9月は稲刈りなどで忙しい時期だからそもそも合わないというのもあるが、寺子屋の入学は、旧歴2月最初の「午の日」である「初午」で春先の入学だった。
しかし、明治維新で西洋の教育が導入されると、9月入学が基本となったが、国の会計年度が4月から翌年3月になると、学校も4月入学の3月卒業になった。
オーストラリアやニュージーランドは2月入学が多いがこれは南半球で夏冬が反対だからで、夏休み明けが入学式である国が多く春休み明けの4月という中途半端な時期に入学というのは日本と韓国くらいで世界的には珍しかったりする。
それが理由で日本の大学で海外留学をする時は、一学期は日本に行き二学期から海外に渡ることになったりするわけだが、海外から日本に来る場合はもっとややこしくなったりもする。
それはともかく今年のゲーム市場だがホムコンは年明け早々に”ゼルドの伝説 リングの冒険”と”ドラゴンクレストⅡ”が発売され特にドラゴンクレストⅡの売上本数は240万本と大ヒットしているが、バランス調整が十分でなく結構悲鳴が上がっていたりもする。
まあ、ドラクレⅡは開発時間がなさすぎたのだろう。
サンシャインでもホムコンディスクシステムで発売された「プロレス」を基にしたメンシュの版権プロレスゲームのバーニングプロレスリングと版権プロ野球ゲームのライジングスーパースタジアムが発売されてけっこうな人気になっている。
野球ゲームというのはホムコンだと普通に売上100万本を超え200万本をも超えたりする人気ジャンルだからな。
ヘックスの
サンシャインではプリンセスプロデューサーの女性用の”プリンスプロデューサー”とともに”問題児たちを無事卒業させよう”や”ドキドキメモリアル”といった育成系ギャルゲーに歴史ゲームとしては”伊達政宗の野望”、ジュエルス3やリズムマニアックスのサンシャインへの移植は夏休み前には完了させる予定。
そんな状態で有るのだが北条先輩から嬉しい報告があった。
「なんとか救世主とフロンソフトウェア、ふぇありぃてぃるとカプコをライジングの子会社化にすること成功しましたわ」
「お、それはいいね。
さっそく救世主にはサンシャインへシミュレーションゲームの移植をしてもらおう。
フロンソフトウェアにはアーケードと32ビットパソコン用3Dゲームを作ってもらいたいし、ふぇありぃてぃるにはパソコン用に18禁とサンシャイン用の全年齢美少女ゲームを、カプコにはストリートバトラーや岩男のサンシャインへの移植をしてもらわないと。
それにしても金と時間が足りないな」
俺がそう言うと北条先輩はうなずいた。
「全くですわね」
俺達の言葉に噛み付いついたのは朝倉さん。
「お前らはどんだけ銭ゲバですか」
俺はそれに対して苦笑して答える。
「とは言っても今年のライジングの売上はどう考えても去年より落ちる可能性が高いからね。
ジュエルスもリズムマニアックスもダンスダンスエモーションも類似ゲームは出てきているし、一時期よりはインカムも落ちているから飽きたユーザーも居ると思うよ」
俺がそう言うと朝倉さんは言った。
「なら日三自動車なんか買収しないで、その金を新しいゲームの開発に回せば良かったんじゃないです?」
俺はそれに対してやはり苦笑して答える。
「確かに予想以上に日三自動車の経常収支が悪かったこともあって、予定では9000億円の買収額が6000億円になってだいぶ安くなっているとは言え、かかっている金額が莫大なのは事実なのだけど、そもそもゲームの開発って一番大事なのはなんだと思う?」
俺がそう聞くと朝倉さんは答えた。
「ゲームを作るために必要な人を集めることじゃないですか?」
俺はうなずいて答えた。
「うん、それは確かに合っているね。
ゲームを作るために必要な人を集めることは大事。
だけど一番大事なのは面白いと思われるゲームのアイデアを出せる人、そしてそれを形にできる人の存在だね。
そのために必要なことはやっているし実際に色んな会社の子会社化もしている。
無論グラフィックやサウンドも重要なのだけど」
「た、たしかにそうかも知れないですけど」
「それに現状の少子化傾向を食い止めないと、ゲーム業界だけじゃないけど将来はどう考えても大変だからね」
俺がそう言うと朝倉さんは首を傾げていった。
「だからといってそれを自分たちだけでやろうとしなくても良いんじゃないです?」
「朝倉さん。
残念なことに俺達が動かなければ他に積極的に動こうとする人間は居ないよ。
この国は問題があっても先送りしかしないから、どうしょうもなくなってようやく動くばかりだし、今まではそれでも何とかなったのだけどこれからはそうはいかなくなるからね。
結局は自分たちのために自分でできることをやっていかないと駄目だ」
そう言うと朝倉さんはふうとため息をついた後言った
「わかったですよ」
斉藤さんや最上さんなども朝倉さんと同じように思っていた部分が強いのだろうけど、北条先輩には資料も見せてこの国の近い将来が既にやばいと官僚が予測していることは示してみせたけど、朝倉さんとかには実感はなかっただろうな。
そういう俺だって”前”はたかだか40年後に日本があそこまでひどくなるなんて予想もしなかったから北条先輩以外には理解できなくても仕方ないとは思うけど、偉い人が悪い状況をなんとかしてくれるなんて考えていても無駄だ。
イギリスのサッチャンリズムやアメリカのローガノミクスが成功と見られて
国鉄や日三自動車のように労働組合の力が大きくなりすぎるのも問題だが、労働組合の力が弱くなりすぎて株主優先が行き過ぎてもだめ、そして余剰人員が多すぎても少なすぎても駄目ということだ。
余剰な人員なんて人件費も無駄だしいないほうが良いと思うかもしれないが、有給、病気や葬式、育休などで人が一時的に離脱しても大丈夫な程度の余裕はやはり必要だ。
そしてこういっては身も蓋もないが、政策へ直接関わるには政治家への献金や自治体への寄付の金額は重要だ。
”前”の日本の経済の停滞は経団連が諸悪の根源であるといえるが、結局は経団連からの献金目当てに政治家はその言うことを聞くしか無いという状態だったわけだが、それはどうやっても壊さなければいけない。
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