去年の噴火で伊豆大島の観光は大打撃みたいだな、房総観光は意外と楽しかったよ
さて、伊東の南海館でのんびり一泊した翌日はフェリーで伊豆大島経由の館山までフェリーで渡る。
かかる時間は特急踊り子で東京まで戻るよりも速い2時間くらいだし、フェリーの広いデッキでのんびりできるのは電車の席に座りっぱなしよりも快適だろう。
伊東から伊豆大島へのフェリーが出るのは実は春限定で普段は熱海からしか船は出ていないのだが春は椿まつりをやっていることからも伊東からも船が出るのだな。
ただ現状では大島行きのフェリーへ乗っている人間は非常に少ないのだが。
「やっぱり去年の噴火もあって今年の春は大島に行こうっていう観光客はほとんどいないみたいだな。
伊東は影響を受けてなかったみたいだけど」
俺がそういうと北条先輩がうなずいていった
「三原山の噴火が起きたのは昨年11月15日から22日と12月18日でしたからね。
島外避難指示はとっくに正式に解除されていますが、TVなどでも避難の様子は流れていますし、一度ついた危ないというイメージはそう簡単に変わりませんわ」
「まあそうだよな」
伊豆大島は、昭和40年代の離島ブームで、来島者が一挙に84万人と急増したが、昭和48年(1973年)をピークに来島者は減少し、昭和53年(1978年)1月の伊豆大島近海地震、昨年昭和61年(1986年)の三原山大噴火もあって、減少傾向に歯止めがきかなくなったはずだ。
春の椿とあんこ衣装に夏の海水浴だけの観光から変えていかないときついだろうな。
せっかく冬でも温暖で過ごしやすいという利点があるのにもったいないし。
「怪獣映画のゴッズイーラをつかって伊豆大島の観光を復活させたいな。
今なら天然温泉ホテルで椿油でのあげたてをいただく名物「椿料理」が自慢の宿でも安く買い取れる施設もあるだろうし」
「たしかにそうですわね。
帰ったら調べておきましょう」
「うん、お願いね」
そして銚子や養老渓谷も伊豆大島同様に今年の12月には大変になるだろうし、ある程度対策はしておきたいところだ。
フェリーは9:20出発で伊豆大島到着は9:55、そして大島発は10:35で館山到着は11:25分。
館山からJR内房線で浜金谷駅まで25分程度だがそこで下車し徒歩約8分で鋸山に到着。
鋸山は内房の有名観光名所の1つだ。
ここは江戸時代から昭和60年まで、城の石垣などに使う房州石を切り出していて、山肌や稜線がギザギザのノコギリのように見えることから鋸山と呼ばれているが正式な名称は
標高は329.4メートルなのでそこまで高いわけではないが浜金谷の海岸から屹立するようにそびえ、天気が良ければ山頂からは、富士山や伊豆天城山、大島などが一望できる。
そして山頂までは41人乗りの大型鋸山ロープウェイで行くことができるのでそこまで大変ではない。
鋸山にある日本寺の鋸山大仏は奈良・鎌倉の大仏を抜いて日本最大の仏像で鎌倉の大仏の倍以上の大きさであったりするが、岩に彫刻されている薬師瑠璃光如来の大仏であるためか知名度は低いのだけど。
元は浅間山の大噴火等による天明の大飢饉に対しての救いを求め、天明3年(1783年)に上総国桜井の名工大野甚五郎が、門弟とともに3カ年を費やして完成させたものであったというが、岩を彫刻した大仏であったこともあって長年の雨風により侵食、江戸時代末期には著しい破損が発生して崩壊状態になっていた。
そのため昭和41年(1966年)から仏師・八柳恭次を中心に修復が行なわれ、昭和44年(1969年)に完成したが、以前の崩壊箇所等がある関係から、像高は原型より約7m低い31.0mとなったがそれでも巨大であることに変わりはない。
「どうかこれからも起こる災害の影響が小さくなりますように」
そして、山頂展望台の通称の地獄のぞきへ向かうと、石切場跡の絶壁の上に下方前傾に突き出した岩盤上から約100メートル下が見えるがめちゃ怖い。
「誰が最初に言い出したか知らないけど、こりゃ確かに地獄のぞきって名前をつけたくもなるな」
斎藤さんが苦笑してうなずいた。
「たしかにそうね」
それからロープウェイで山を降りて、浜金谷駅に戻り佐貫町駅へ向かって下車し、バスでマザーズ牧場へ向かう。
マザーズ牧場は昭和37年(1962年)に開設された観光牧場・農場・遊園地で約150頭のヒツジを始めとしてウシ、ウマ、ヤギ、ブタ、アヒル、ダチョウ、ラマ、アルパカなどが飼育され、そういった動物とのふれあいを売りにする一種のテーマパークだな。
ここでもいちご狩り・フルーツトマト狩りやさつまいも掘りの農園もあるし、オリジナルの乳製品やハム・ソーセージなどを扱ったショップ、ジンギスカン鍋を主としたレストランなど色々楽しめる。
さらに長期滞在も出来る宿泊コテージなどもあるが、今の季節は桜と菜の花がたくさん咲いている。
「桜と菜の花がきれいですね」
浅井さんが嬉しそうに言う。
「だな、ここは花の名所でもあってもう少ししたらあじさいなんかもきれいに咲くらしいよ」
そこで言葉を遮ったのは上杉先生。
「ああ、それは良いが腹も減った昼飯にしようじゃないか」
確かに移動も含めると昼はとっくに過ぎているので腹は減ったな。
「確かに鋸山は結構段差もあったから、お腹もすきましたしまずは昼飯を食べますか」
レストランコーナーではジンギスカン鍋やハンバーグ、ステーキ、ソーセージ、ハム、ベーコン、スペアリブなど肉料理がたくさんだ。
「さすが牧場だけあって肉のメニューが豊富だな……何にするか悩むぜ」
上杉先生は悩むことなく頼み始めた。
「まずは、ジンギスカンの牛肉&ラム肉ダブルセットにビールだな。
誰か一緒に食ってくれ」
先生がそう言うと北条先輩と斎藤さんが手を上げた。
「では私も一緒に食べますわ」
「私も一緒にしますね」
そして俺は苦笑しつつ言う。
「先生は本当花より団子ですよね」
「腹が減っている時は素直に食事を食べたほうが良いのさ。
そして腹がいっぱいになれば花を愛でる余裕もでる」
「まあ確かにそうかも知れませんね。
じゃあ俺はラムバーグにカフェオレを」
みんなも好みのメニューを頼んで暫く待つとできたてハンバーグが来た。
「ん、このラムバーグ、肉質もいいしうまいな」
上杉先生も満足なようだ。
「ジンギスカンの肉もとてもやわらかくてうまいぞ。
そしてビールもうまい」
やっぱ肉は肉質が大事だよな。
その後羊のショーなどを見てから牧場を後にして、君津までバスで移動して五井まで内房線で異動したら小湊鐵道へ乗り換えて養老渓谷へ。
養老渓谷に近づくと車掌さんが
「窓の外に菜の花畑がお楽しみ頂けます」
とアナウンスするが、左右に一面の菜の花畑が広がり、乗客の歓声があがった。
「ああ、こっちの沿線も菜の花や桜が綺麗だな」
俺がそう言うと最上さんがうなずいた。
「そうですね。
ゆっくりスケッチしていきたいくらいです」
一面の菜の花畑と時折咲く桜に青空のコントラストが美しい。
そして昨日の夜は伊豆の海産物、今日の昼は牧畜肉の料理だったが、今日の夕飯は菜の花や蕗などの山菜のお浸しやそれらに加えて湯葉の天ぷら、カワエビやオイカワなどの川魚の素揚げ、筍の刺身に筍ご飯、キョン、鹿、猪などのジビエにカジカの鍋と山や川の幸を十分堪能し、黒湯の温泉で疲れを癒やしたよ。
これでまた仕事に励めるな。
・・・
なお黄泉醜女たちにとっては鋸山の地獄のぞきと言ってもそれほどではなかった模様であるが、ジンギスカンや山の幸づくしは大変喜んだようである。
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