伊豆熱川でのいちご狩りはかなり楽しんだみたいだな

 さて、ポケットサンシャイン発売も順調に行ったことだしと、ゲーム制作部のみんなで春休みに慰安旅行で伊東と養老渓谷へ向かうことになった。


 今日の宿泊先は俺達が一昨年に買い取った伊東の南海館だが、昼は伊豆熱川に行ってレジャーを楽しむ。


 前と同じように船橋駅に朝7時集合で、そこから総武快速線で東京まで行って後は東京駅から伊豆熱川駅まで直通の特急「踊り子」を使えば約2時間15分で到着なので3時間弱だな。


「春に旅行をするのは初めてだけど春の旅行もいいな。

 季節的に暑くも寒くもないし」


 俺がそう言うと斎藤さんがうなずいていった。


「確かに真夏の暑いときの旅行よりはだいぶ楽よね。

 日差しも厳しくはないし、この季節は色々花もきれいだし」


 そして北条先輩もうなずいた。


「日差しが厳しくないのは本当に良いですわね」


 そして浅井さんが嬉しそうに言う。


「伊豆半島でのいちご狩りのベストシーズンは、1月から3月で、今が一番甘くて美味しい季節だそうですよ。

 いちご狩りが楽しみですね。

 カフェではイチゴのショートケーキも食べられるそうですし」


 俺は本当に嬉しそうな浅井さんにウンウンうなずく。


「ああ、そうだよな。

 この季節のイチゴはやっぱうまいし楽しみだよ」


 そして芦名さんもワクワクした表情で言う。


「オレンジやポンカンにバナナも、もぎ放題食べ放題だって言うし、僕、本当に楽しみだよ」


 佐竹さんもウンウンうなずきながら言った。


「俺達はイチゴだのオレンジだのは高くて食べられなかったからな。

 それが食い放題なんて夢みたいだぜ」


 そうか恩賜園の子どもたちはろくにイチゴも食べられなかったのか。


 でもイチゴって安くて500円くらいだし高級なやつだと2000円位する高級品種もあるし実際高いよな。


「あ、ああ、たしかにイチゴってスーパーとかで買うと結構高いよな」


 浅井さんがあれほど嬉しそうにしているのも納得だ。


 まあ浅井さんは特に甘いもの大好きというのもありそうだけど。


 その他に春先はたけのこ狩りや夏はメロン狩りもできるので一年中何らかのフルーツ狩りができるようだ。


 そして明智さんは別の物に興味があるらしい。


「この中でイワナやニジマス釣りもできるみたいっすし、釣ったものはその場で調理して食べられるみたいっすね。

 バーベキューもできるみたいっすし、いいっすよねこの施設」


「天然イワナの塩焼きはかなりうまいらしいよな」


 そして最上さんも言った。


「私も魚釣りやってみようかな」


「それも良いんじゃないかな?」


 そして北条先輩も別のものに興味があるようだ。


「陶芸体験ができるというのも面白いですわね」


「確かに色々やっているみたいだね。

 フルーツ狩りだけだとどうしてもシーズンとか雨降りの時にできることが減るから、オフシーズンや雨の時でも大丈夫なようにと言うことみたいだけど」


 俺がそう言うと北条先輩もなるほどとうなずいた。


「たしかにイチゴ狩りだけでは冬から春しか収入がなくなってしまいますものね。

 バナナやみかん、オレンジ、メロンなどのフルーツに加えて釣りや陶芸なども行えば一年中営業できるというわけですわね」


「ああ、やっぱりそういうことなんだろうな」


 というわけで伊豆熱川駅まで行く迎えに来てもらって送迎のマイクロバスで現地に向かう。


 今日は天気もよく伊豆七島の伊豆大島も眺められる緑豊かな自然がいっぱいの場所だ。


 いちご狩り、オレンジ狩り、バナナ狩り、イワナ釣り、陶芸と皆バラバラに自分のやりたいもののところへ行く。


 園内には家族連れや女性グループなども多くなかなか人気の施設のようだ。


 女の子の多くはやはりフルーツ狩りにいったが、三好くんと桃井くんは北条先輩と一緒に陶芸に挑戦するらしい。


「自分で湯呑を作ったりできるって機会はなかなか無いですからね」


「何かの形あるものを自分で作り出せるって良いですよね。

 ゲームもそうですけど」


「了解、俺は色々見て回るよ」


 というわけでまずはいちご狩り。


 予想通り浅井さん、横山さん、芦名さん、佐竹さんはいちご狩りを楽しんでいて、欠食児童のようにイチゴをもいで食べているようだ。


「ああ、甘酸っぱくて美味しい」


「本当、色々食べ比べできていいけど、どれも美味しいね」


「僕こんなにいっぱいいちごを食べたのは初めてだよ」


「ああ、本当に昔なら俺達がこんなことをできるのは考えられなかったよな」


 斎藤さんや南部さん、伊達さんに足利さん、細川さんなどはそこまでの勢いはないけど楽しそうにいちご狩りやオレンジ狩りをしているのは間違いない。


「オレンジってそんなにたくさん食べられるものでもないわね」


「まあ、もぎたてのものを食べられるということに意味がありますから」


「もいだオレンジはしぼりたてジュースにもしてもらえるみたいですよ」


「ああ、それは良いですね」


 園内はかなり広々としており複数のイチゴやバナナのハウスで思う存分フルーツを堪能できたようで何よりだ。


 辺りではほーほけきょというウグイスの声がしたりしていて、のどかな自然いっぱいの春を十分楽しめていそうだ。


 そして朝倉さんと最上さんの方でもイワナやニジマス釣りを楽しんでいるようだ。


「あ、また逃げられたです」


「ここの貸竿の針は返しがないから逃げられやすいんだよね」


 そう言いながらも借りている魚籠にはちゃんと釣りあげられた魚が入っているあたりはさすがだ。


 そして陶芸教室の方だが小屋の中に設置されたストーブの周囲に可愛い猫が10匹くらい集まって暖まっているのを北条先輩がチラチラ見ながらマグカップを作っている。


「北条先輩。

 もうちょっと作業に集中しないと」


「ですが、あの猫たちが可愛らしくて……」


 三好くんや桃井は真剣に作業に取り込んでいるけどな。


 その後みんなで集まって採ったイチゴやオレンジをジュースにしてもらったり、イワナやニジマスを塩焼きやからあげにしてもらったりして昼飯とふんだんにフルーツが使われたデザートを食べた後で園から駅まで送ってもらい、次に駅の近くの熱川バナナワニ園へ向かった。


 熱川バナナワニ園は、名前の通りワニやバナナをはじめ、レッサーパンダ、アマゾンマナティー、ゾウガメ、熱帯植物、スイレンなど動物・植物を展示しているレジャー施設。


 豊富な温泉水を利用してワニの飼育に適切な環境を維持している。


 ワニのエサやりの様子を見学できるがいわゆる丸焼きに使う大きな鶏肉のかたまりをパクリと一口に食べる姿はなかなかに迫力満点。


「うわわ、あんなに大きな鶏肉一口でパクリですね」


「まあ自然だとまるごと食べるのが普通だしね」


 ワニと言うとなんでも食べてしまう獰猛な動物というイメージがあるが、飼育下でも1週間に1度程度しかエサを食べない意外と少食な動物だったりする。


 同じ爬虫類でも亀なんかはかなり餌を食べるが、野生のワニでは1ヶ月~2ヶ月間エサを食べられないこともあるので、それでも生きていけるように適応したらしい。


 逆にレッサーパンダは一日2回餌の時間があり、食事前の時間にお腹が空いてうろうろしているところに、エサのリンゴを持ってきたスタッフに向かってひょいっと飛んで来くる姿は、とっても愛らしい。


「やはり谷津遊園でもそうですが餌やりの光景というのは人気になりますわね」


「まあ、見ていると面白いよな」


 食事が終わったら木の上でぐでっとしていたりもするがまあそういった姿もかわいい。


 それはアマゾンマナティーも同様だがこちらはめちゃめちゃゆっくり食事をしていたりする。


 大好物の人参をもそもそ食べている光景はなかなかおもしろい。


 そしてバナナソフトクリームは絶品。


「このソフトクリームなかなかうまいな」


 俺がそう言うと浅井さんもバナナソフトを頼んで食べはじめた。


「本当ですね」


 浅井さんはお腹いっぱいいちごを食べていたはずなんだけどお腹は一体どういう構造になっているのだろう?


「甘いものは別腹ですから」


 レッサーパンダやワニの可愛らしいぬいぐるみやお土産のお菓子なども結構種類がある。


「あ、おみやげを買っていかなくちゃ」


 浅井さんがそう言うと横山さんもお土産を手にとって言った。


「そうだね、やっぱりおみやげは大事だからね」


「声優はよその会社と一緒の仕事が普通だから大変だよな」


 俺がそう言うと浅井さんはうなずいた。


「そうなんですよ」


 バナナワニ園を見て回ったら良い時間になったので伊豆急で伊東へ向かい、宿泊する南海館へ向かった。


 施設内は色々改装されたが外観はちゃんと維持されて高級和風旅館としての趣は損なっていない。


 温泉でのんびりと疲れを癒やし、伊豆の新鮮な地魚やサザエ、アワビなどの貝、海老などをふんだんに使った料理はやっぱりうまかった。


 明日は伊東から伊豆大島経由で館山までフェリーで渡ってそこからは電車でマザーズ牧場や鋸山の観光をしてその後、五井から小湊鐵道で養老渓谷へ向かう予定だ。


 ・・・

 なお黄泉醜女たちも彼らの警護をしつつたっぷりイチゴなどを食べ、のんびり温泉に入ってすっかりリフレッシュしたという。

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