俺が政治家としての畑中角栄を尊敬している事をテレビで放映したよ

 さて、朝倉さんの誕生日は3月なので誕生パーティをやって、最新のシンセサイザーをプレゼントしたが、その前のバレンタインデーにはみんなからチョコレートもらったし、ホワイトデーではみんなへお返しもしたので最近の俺は最低限のことはできるようになってきたんじゃないか? という気がしてきている。


 しかしみんなの反応がいま一歩なのはなぜだろう?


 それはともかく俺が尊敬する政治家である畑中角栄は昭和60年(1985年)2月27日に脳梗塞で倒れ入院し、それによって言語症や行動障害が残り、以降政治活動は不可能になってしまったがこの人は江戸時代の田沼意次にかなり似ていると思う。


 そういうことで俺はテレビで彼らのイメージ回復を行うことにした。


 大河ドラマの時代考証を数多く担当した、歴史研究家の小石慎三郎先生と対談しながら話をすすめることにする。


「テレビの前の皆さんこんばんは。

 さて皆さんは、元首相の畑中角栄氏についてはどういったイメージをお持ちでしょうか?

 金権腐敗政治の元凶?

 では江戸時代の田沼意次についてはどうでしょうか?

 同じく賄賂政治を行った悪人。

 そう思う人も多いでしょう。

 しかしそれはまちがった認識です。

 ですよね、小石先生」


「ええ、戦前においては松平定信を肯定的に評価する観点から、田沼意次の賄賂政治による悪徳政治家ぶりを表す意見が多く、現在でもそれが一般的にはイメージされやすいですね。

 しかしそれは彼の失脚後に政敵の松平定信などが作り出した話で、松平定信のほうにこそ贈収賄があった史料が残っているのに対し、田沼意次の方にはそれが皆無だったのです」


「それは意外ですね」


「ああ、もちろんそれは田沼意次が賄賂を一切受け取らない清廉潔白な政治家だったと言うわけではないですが。

 そもそも徳川幕府時代の武士は役職に対しての報酬が部署に与えられておらず運用資金などが少なすぎたので、それを付け届けで補っていました」


「それも困ったことですよね」


「とはいえ、実際に田沼意次がことさら悪人呼ばわりされたのは、明治政府が江戸時代の政治の暗黒性を殊更に強調する必要があったからですね。

 そして、彼は当時でも確かに批判されていますが、それは徳川や松平などの親藩を始めとした譜代門閥層の反発によるところが大きいわけです。

 田沼意次は平賀源内などの下級身分や町人を能力次第で重用したことも、そういった血筋だけは良い無能なものから身分秩序の破壊として憎悪されました。

 そしてロシアとの交易を始めようとしたことも前例主義に囚われた幕閣には非難されています」


「なるほど銀河英雄神話でもそんな感じでしたね」


「当時は度重なる天災は、為政者の悪政に対する天罰であると見なされたこともあります。

 しかし彼らは悪化する幕府の財政赤字を食い止めるべく、重商主義政策を採り、株仲間の結成、銅座などの専売制の実施、俵物などの専売による外国との貿易の拡大などを行い一定の成果を上げました。

 ただ下総国印旛沼や手賀沼の干拓に着手したものの、それは失敗に終わったりもしています」


「ああ、それが農民の反感を買ったりもしたわけですよね」


「そして、通説では松平定信は田沼意次の政策をことごとく覆したとされるのですが、実際には寛政の改革は田沼政権から引き継いだものが多いのです。

 もっとも根本的には緊縮財政と厳しい風紀の取締りによって経済や文化は停滞し、改革は失敗したと言ってもいいでしょう」


「なるほど。

 一方の畑中角栄元首相も腐敗金権政治かと言われますがその政策はかなり理に適っていたと俺は思います。

 日本列島改造論をもとに日本列島を高速道路・新幹線・本州四国連絡橋などの高速交通網で結び、地方の工業化を促進し、地方の過疎と都市圏の過密の問題と公害の問題を解決しようとしていました。

 しかし、投機家によって土地の買い占めが行われて、地価が急激に上昇し、オイルショックによるさらなる物価上昇によって、列島改造論を批判する均衡財政論者でもある福畑赳夫を起用せざるを得なくなったことで、中途半端になってしまうわけですが」


「ええ、こうしてみると二人は似ていますね」


「ええ、父が足軽であった田沼意次と貧乏農家であった畑中角栄元首相も貧乏人についてわかっていたのだと思います。

 畑中角栄元首相の”政治とは自分たちがメシが食えない、子供を大学にやれない状態から抜け出すことを先決に考えねばならん。

 理想よりも現実だ。

 政治とは何か、生活である。”

 という言葉は真理だと思いますよ。

 とは言え日中国交正常化をし、厚生年金を使ってグリーンピアの設置をしたことは駄目だったとは思いますが、日米繊維交渉や 第四次中東戦争もあったので仕方ない部分もあると思います。

 いずれにせよ俺は畑中角栄元首相を尊敬していますよ。

 そして日本全体の均衡ある発展を実現させるべきだと思いますし、そのために俺は福島や北海道、九州の観光産業などに力を入れています」


「北海道の国鉄路線が一部廃止にならないですんだのはそのおかげだったようですね」


「ええ、そうですね。

 もともと都心部の利益を奪い過ぎて都市インフラの整備に必要な金まで地方の道路建設やトンネル工事に使ったのはたしかに問題でした。

 道路などを整備するなら需要をも作らねばならなかったのです。

 そういう点では今の東京湾アクアラインは需要に沿った建設計画だと言っていいかと俺は思います」


 ”前”では実際の利用料は想定より少なくなるがこれは計画が70年代にあったのに着工が遅れ、バブル崩壊をしてしまった影響も大きいからそのあたりは変わってくれると思いたい。


「日中国交正常化といえば一枚の色紙を渡され喜んでいる畑中角栄元首相の写真が新聞に掲載されました。

 色紙には”言必信行必果、硜硜然小人哉”と書かれていましたが”その言葉は必ず真実であり、やるべきことは必ずやりとげる。それは士として持つべき資質だ。しかしながら、もしそれだけの人だとしたら、人間として小さい”と言う意味で喜んで受け取るようなものではないのですよね」


「ええ、まあそれについてはやはり中国への接近が早急すぎたということでしょう。

 ともかく中東政策をイスラエル支持からアラブ諸国支持に転換するとともに中東地域以外からのエネルギーの直接確保に努めたことでアメリカの怒りを買ったことがロッキー事件につながったわけですが 当時の国務長官だったキッシテンジャーは『ロッキー事件は間違いだった』といったと言われています」


「ほう、そうなのですか?」


「ええ、ロッキー事件では右翼の大物である児玉誉士が介在して多額の金銭が政治家に分配されたと言われますが、検察やマスコミは畑中に流れた5億円ばかりに集中し、児玉が受け取ったカネについてはまったく解明が進まず、実のところロッキーは戦闘機F−104を自衛隊機に選定させて購入させ、P3C対潜哨戒機導入を行うために、有力な自民党議員のほとんどすべてが賄賂を贈っていたとされているのに、やり玉に挙がったのは、畑中元首相だけです」


「それは明らかにおかしいですね」


「なので今年行われるロッキー事件の控訴審判決で東京高等裁判所が一審判決を覆すことを俺は期待しますよ。

 そうでないなら自民党の他の政治家たちもきちんと調べるべきでしょう」


「そういうことになりますね」


「そして個人的にはタカ派の政治家として外川昭一さんや麻生一郎さんをまずはおしたいですね。

 そして畑中角栄元首相の友人で既に亡くなっています、石場太郎さんの息子さんにもお父さんの意思を継いでもらいたいと思いますが……」


「ますが?」


「在日大韓キリスト教総会と協約を結んでいる日本基督教団で洗礼を受けているのは個人的には良くないと思うのです。

 本来であれば宗教の信仰は個人の自由ですが、政治家が在日韓国・朝鮮人をことさらかばうようなことをする教団に関わっているのはどうかと俺は思います」


 俺がそう言うと彼は焦ったように言った。


「そ、それはともかく、それで日本列島改造論が復活できて地方の衰退が食い止められれば良いですね」


「ええ、そしてそれはやらなければいけないことでもあります」


 ・・・

 そのころの冥界では伊邪那美が珍しく上機嫌であった。


「なるほど、この国をよくしよう。

 そういう者もまだまだ残っているのだな。

 あの者が死んだ後は転生させてあやつと一緒に日本を立て直させるか」


 黄泉醜女たちも今回は使いっぱしりをしなくてよかったのでホッとしていた。


「それは良いことかと思います」


「まあ何かあればそいつらの対処はいつもどおりにするように」


「はい、わかっております」


 ・・・


 これにより世間一般における畑中角栄基首相に対する心情や印象は大きく変わったようだ。


 自民党の大物議員も今更下手に藪をつついて蛇を出すようなことはしたくないようで、事件を大きくするつもりはないようだし、当時特に率先して動いていた新聞は読買、アカヒ、毎朝だがアカヒの方は既に潰れており、読買も主筆の本性が暴かれて動けず、毎朝も創造学会との関わりを追及されたから大きく動けなかったのだろう。

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