プロスポーツ科の生徒が全国大会などで実績を残しているようで何よりだ

  さて、俺は理事長室に呼び出されてその報告を受けているところ。


「昨年度の夏の甲子園で野球部が優勝したのはご存知でしょうけども、サッカー部は1月の高校サッカー選手権で優勝し、12月の花園のラグビー、秋の国民体育大会テニス、バレーボール、バスケットボール、陸上競技、水泳、ソフトボールなどでも好成績を残しておりますわ。

 こちらもヨーロッパやアメリカなどからコーチなどを呼びましたので」


「ああ、それは何よりです。

 野球とその他のスポーツでは勝つために必要な要素は違いますが、無駄に精神論だけ唱えても勝てないのは同じですからね。

 何ならソ連や東欧からもスポーツコーチを招聘してみても良いかもしれません」


「ええ、まさしくそのとおりでしたわ。

 ソ連や東欧からですか。

 体操競技などではそれもありですわね」


「ただ、そこに名前が入っていないということは柔道や空手、剣道といった格闘系のスポーツはやはり厳しいですか」


「流石にこういったスポーツはもともと身体が大きい人が行うことが多いですし、センスも大事ですからね」


「ああ、それはたしかにそういうのはあるでしょう。

 後は可愛い女の子の応援が有るのか無いのかなんかもありそうですけど」


「どうしても野球やサッカーと言った花形競技に応援は集中してしまいますね」


 日本のサッカーは1970年代から1980年代は国際的な大会で目立った活躍を残せなかったが、これは海外の情報や選手を全くと言っていいほど取り入れていないのが大きく、サッカーでの攻撃は取り敢えず縦パスでつなぐという戦術ばかりだったりする。


 そういった通り一辺倒のものでなくドリブル突破など海外の戦術を取り入れたり、パスワークもサイドへ流したりすればそれだけでも相手は対処しづらくなる。


 無論それにはフィジカルの強さやスタミナなども大事なので、ダラダラとランニングするのではなくインターバル走を取り入れたり、ハムストリングなどをレッグカールの低負荷で回数を多くマシントレーニングを行うことで効率的にスタミナを付けさせたりもした。


 怪我や脱水症状などを防ぐために練習前には動的ストレッチ、練習後には静的ストレッチやアイシングをきちんとやり、スポーツドリンクやはちみつレモンなどで水分に加えてビタミンやミネラル、クエン酸などをきちんと摂取し、マッサージや反復浴などで疲労物質の排出を促し、筋トレの後にはちゃんとプロテインと糖分を取ることによって短期間で筋肉を太くし、アメリカ的な科学的トレーニングを加えればそれだけでかなり優位になる。


 これは現在プロ野球のライジングマリナーズでも同様にしているはずだ。


 もう限界と思ってからが本番という言葉もあるが、これは脳にリミッターを解除させるためにも、たしかに筋トレでは大事ではあるが、疲れ果てている所で練習をそれ以上続けてもメリットはない。


 また日本では部活動に限らず年功序列が重んじられすぎる嫌いがあるが、うちの学校では3年だろうが1年だろうが活躍した人間がレギュラーになるので、その分実力の高いものが戦力として動いているのも大きいだろう。


 スポーツ選手にとっては肩や膝は消耗品なのだからその消耗はなるべく抑えさせるべきだ。


 そしてこれは選手本人のためというわけでもなく、アイドルや声優もそうだがスポーツ選手がブランド商品であるのだから長く現役でいられるようにするほうが経営的にも意味のあることだ。


 一人のスターがあっという間に潰れてそれに匹敵するスターを育てるのにどれだけコストがかかるかを考えれば使い潰すなんて言うのは論外だからな。


 後は地味に芸能科のタレントの卵の女の子の応援が有るというのは大きい。


 可愛い女の子の応援、声援があれば選手はかなりやる気が出たりするもんだからな。


「問題は関西の野球の強豪私学も同様なトレーニングを取り入れたと聞くことですが」


「そちらはアメリカから直接コーチなどを招聘しているのですか?」


「そうでもないようです。

 新興宗教が母体になっている学校が多いので、海外から人を呼ぶのは難しいようですね。」


 ああ、関西における野球強豪のPLとか天理とかはもとは新興宗教が母体だからな。


「では、すぐには心配はいらないかもしれません」


 見た目だけ真似をするだけではそう簡単にはうまく行かないだろうとは思うからな。


 とは言えスポーツの強豪校で無駄な練習がなくなっていくのは非常に良いことだと思う。


 学校そのものにはびこる体育科出身の校長や教頭、管理職、学年主任による、無茶な根性論や怒鳴り声で生徒や若手の教師を追い詰めておいて、それさえも気合いがないから、という軍隊みたいな理論がまかり通っている状況もだんだん変わっていくと思う。


「これを機会にアメリカのようにプロムナードを取り入れてみようかと思うのですが。

 今年はもう遅いですから来年度からでも」


「プロムをうちの学校で、ですか?

  まあ、これからはそういったものも重要になっていきそうですけど、文化祭にフォークダンスすらないのに随分思い切りますね」


「それは貴方と出会って時代は変わるものだとしみじみ思いましたので」


「そ、そうでしたか」


 プロムは、プロムナードいわゆる舞踏会の略称で、アメリカやカナダの高校で学年の最後に開かれるフォーマルなダンスパーティーのこと。


 これに関しての参加は原則として男女一組のペアであり、相手は同級生でなくても良く、上級生や下級生はもちろん卒業生や学校外の者でも構わないし、参加は強制ではない。


 一般的なプロムの内容はダンスや食事、おしゃべりなどで、基本的に夜に行われ、会場は大抵飾り付けをした学校の体育館であるが、ホテルや大型客船を会場として借りたりもする。


 アメリカの学校が関係する青春映画やテレビドラマの中ではよく重要なイベントとして登場しているが、ジョックとクイーン・ビーと呼ばれるアメフトなどのアスリートとそのチアが脚光を浴びることが多いのだが、ITによってギークと呼ばれるコンピュータ系おたくがその後は億万長者になっていくことでアメリカでは体育会系がもてはやされるばかりでもなくなっていったりする。


 日本人が社会に出ても異性を誘う能力はたしかに大事かもしれない。


 それはともかくサッカー部やテニス部などは特に黄色い声が盛んに上がるが、柔道とか空手はそうでないのも盛り上がらない理由の一因かもしれないな。

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