ブルートレインのアピールや女性の旅行者の取り込みが成功したので北海道の鉄道の廃線を一部食い止められたよ

 1月27日、515ヘクタールの人工島を造成して旅客ターミナルビル1棟や滑走路1本などを建設する関西国際空港第一期工事が着工された。


 成田空港の失敗を繰り返さぬためにと空港島の建設予定地が大水深度かつ、軟弱な地盤であることもあって関西国際空港の建設費は当初の想定を大幅に上回るものとなって、それがのちまで頭を悩ませることになる。


 さて、色々あった1月が終わって2月1日になった。


 本来この日限りで北海道の国鉄広尾線は廃止される予定であったが、テレビto-kyo系列でブルートレインの旅企画を行いブルートレインが見直されたことなどから、国鉄は豪華寝台列車の”北斗星”を上野から青森まで走らせたり、愛国~幸福の幸運の切符効果をテレビで放映したり、俺たちが提案して走らせることになった観光特急列車「美と愛と幸福」号が網走~北見~池田~帯広~広尾を走り、主に若年女性の一人旅やグループ旅行、新婚カップルに人気となっていることで廃止を免れた。


「北条先輩が色々動いてくれたおかげで北海道はだいぶ活気が出てきたみたいだね」


「ええ、北海道はなかなか魅力的な場所ですし、PRの仕方次第ではこうなると思っていましたわ」


「温泉旅館も伊東や福島なんかと同じように若い女性や子供連れのお母さんにも使いやすくなっているし当然だとも言えるけど」


「それに冬はスノーモービルで雪上を走るのを楽しみにしている人も多いようですわ」


「バイクと違ってスノーモービルは普通自動車扱いだから俺はまだ乗れないし、普通免許も春休みには取りに行かないと」


 それを聞いた上杉先生が嬉しそうに言った。


「お前さんが車を運転できるようになれば私も酒をもっと飲めるようになるな」


 俺は苦笑することしかできないが。


「そりゃ飲酒運転は駄目ですからね」


 そこへ北条先輩が言う。


「まあ、先生のお酒や様々な料理に対する舌の判断力は大事ですしね」


 確かに酒などの味の良し悪しについて、上杉先生はかなりうるさく、その評価はメーカーの浮沈すら左右するため、酒造メーカーや旅館やホテル・オーベルジュの板前、シェフなどなどからは船場ベイサイドリゾートの味王と恐れられているそうだ。


「ああ、若い女性に受ける料理はリピーター獲得に大事なのは事実だしな」


 普通免許取得は、取得できるのは18歳になってからだが、17歳の高校3年生でも教習場に行くことはできる。


 それはともかく、「美と愛と幸福」号の止まる駅の名前は女満別めまんべつ美幌びほろ愛し野いとしの愛冠あいかっぷ仙美里せんびり愛国あいこく幸福こうふく新生しんせい大樹たいじゅと、難読地名が多い北海道ならではの駅名や提携する温泉旅館などでの美肌効果もあって早目の春休みに突入する高校3年や大学生や新婚カップルらに特に人気なようである。


 おかげで北見の温泉旅館や遊園地なども客入りは好調で、夕張総合リゾートも大変賑わっている。


 スキー好き・流氷好き・温泉好き・鉄道好き・映画ドラマ好きな男女の電車内縁結び企画もやっているからこれでカップルが成立して結婚・出産まで進んでくれれば万々歳なのだが。


 一年のときの研修旅行や昨年の夏にツーリングしてよくわかったが、北海道は海鮮料理や野菜・果物などの名産で美味しいものが多く、雪質が良好なスキー場や冬の流氷、各自様々な泉質の温泉、都心部で走らせるのは難しい蒸気機関車の運行、映画やドラマの舞台になっている場所なども多く、女性へのアピール力はかなり高いところが多いからな。


 まあこれはドイツ政府の観光PR作戦のロマンチック街道方式を真似たものだ。


 1960年代後半から1970年代には順調な日本人の海外旅行者数の増加にあわせ、外国の政府観光局が日本に事務所を開設していたが、ドイツは当初ヨーロッパ各国の中でも日本への進出に遅れて市場開拓に各国の後塵を拝したうえ、第二次世界大戦の悪いイメージに加えて、民族的にも硬いイメージで敬遠され、セールスに行ってもなかなか相手にしてもらえなかった。


 そこで、欧米の旅行者に人気の高いロマンチック街道に焦点を当て、日本の女性雑誌での反響を得ることでロマンチック街道は日本からドイツへ行く際の定番になった。


 同じように女性向けにそういった事を大々的にテレビで放映し、徳田系列の雑誌で特集すれば北海道の観光客も増えるということだ。


 また”前”ではプラザ合意をきっかけに大幅に進んだ円高も現状では進んでおらず、バブルで浮かれているわけでもない。


 政府としても円安ドル高に誘導するためにと国民にドルなど海外の国の通貨を買わせるために、海外旅行を声高に叫び、アメリカの土地や物品を買うことを声高に推奨することもなかった。


 それでも成田空港が開港され、以前に比べれば多少は円高となってもいることもあって、海外旅行客も増えているのではあるけど、昭和54年(1979年)には403万8298人だった海外旅行客が昭和62年(1987年)は869万人、昭和63年(1988年)には1082万人にまで急拡大するということはないだろうし半分が国内旅行に変わればそれだけでもかなり大きい。


 ツアーも細かく行き先を決めず、フリータイム型のツアーも組んで特定の駅で降りた後そこで何をするかは自由としたりもした。


 さらに俺たちは地元の中小の旅館や地元の飲食店と提携して個人旅行・家族旅行・グループ旅行などの少人数での旅行客を積極的に取り込んでいくことに徹した。


 このあたりは”前”では海外旅行に持って行かれたところだからな。


 また新婚旅行のカップルさんだけでなく、フルムーン夫婦グリーンパスは2人の年齢の合計が88歳以上の夫婦であればつかえるが、これの利用者も結構多く、子供が全員学校を卒業して就職し、育児が終わった夫婦や定年退職した老夫婦が夫婦水いらず、ゆっくり過ごすなどということも行われている。


 北海道で成功したこれを中国・四国・九州等にもどんどん広げていきたいものだ。


 特に山陰は縁結びなどでアピールしていって過疎化を防ぎたいよな。

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