修学旅行三日目は天草経由での鹿児島観光だがかなり濃ゆい内容だった

 さて、雲仙温泉ホテルに止まってのんびりした翌日は、フェリーで天草に移動し、近辺でイルカウォッチングをした後、鹿児島に渡ることになっている。


 この時代にはまだ九州新幹線は走っておらず、長崎から鉄道で鳥栖駅とすえきを経由して鹿児島に向かったり、バスで鹿児島に向かったりするよりおそらく楽しく移動できるだろう。


 長崎の雲仙から南下して島原半島南端にある口之津港より、フェリーにて天草の鬼池港へ30分ほどで移動し、その近くにあるイルカウォッチングをできるクルーズ船にまずは乗り換える。


 船に乗って岸を離れて10分くらいでイルカとご対面だ。


 このあたりにいるイルカは世界的に見ても珍しい定住型のイルカであり、300頭前後のイルカがいるから野生のバンドウイルカに1年を通して出会うことが出来、98%くらいの確率でイルカと遭遇できるらしいからすごいよな。


「うわぁ、可愛いですね」


 浅井さんは野生のイルカがクリーザーと並走している様子を見てとても喜んでいるが、その他の女生徒も大体みな喜んでいるようだ。


 バンドウイルカは大変人懐っこく、目の前でジャンプしてくれたり、魚をくわえて出てきたりと様々なパフォーマンスを見せてくれるのだな。


 うんやっぱり銚子でも野生のイルカウォッチングはやるべきだな。


 その後バスで南岸の牛深港に移動し、アワビの踊り焼きと海鮮丼を食べてからまたフェリーに乗り込み30分ほどで鹿児島県長島町にある蔵之元港ヘと到着。


 そこからバスに乗って知覧武家屋敷にまずは行く。


 知覧は「薩摩の小京都」とも呼ばれている場所で武家屋敷群が残っている。


 ここは行政と地域住民による、官民一体の歴史的建造物や景観の保全に配慮した街づくりが行われており、武家屋敷通り線に建っていた電柱の移設や、排水施設の地下埋設が行われ、路面舗装についても、周辺の石垣や生け垣に調和させるために色を考慮しているのはすごいと思う。


「やっぱ景観って大事だよな。

 江戸時代にタイムスリップした気分になれそうだ」


 俺がそう言うと北条先輩はうなずいた。


「ええ、私もそう思いますわ。

 舞浜のあれもそう言う点では徹底していますし」


「京都とか浅草なんかももうちょっと景観に配慮すれば評価が上がる気がするのだけどな」


 銘茶「知覧茶」と郷土のお菓子「灰汁巻き」で一息入れたら知覧特攻平和会館へ向かう。


 ここは大日本帝国陸軍航空隊の特攻に関する資料を展示する施設で、もともと特攻基地担った陸軍航空隊知覧飛行場のあった場所に特攻隊員の精神の顕彰と世界平和の祈念を目的に昭和30年(1955年)に「特攻平和観音堂」が建立され、昭和51年(1976年)には知覧町により、隣接する運動公園の休憩所に「知覧特攻遺品館」が造立された。


 そして「知覧特攻遺品館」が手狭となったため、昨年の昭和60年(1985年)に知覧町が5億円の予算を投じて「知覧特攻平和会館」が建設された。


 展示内容は写真、遺書などの遺品約4,500点や特攻隊員の遺影1,036柱などで、零式艦上戦闘機五二型丙、四式戦闘機「疾風」I型甲、三式戦闘機「飛燕」II型改なども展示されている。


 やはりこういった大戦時の記憶を残す施設がスターライナーを失ってしまった、谷津遊園にもあったほうがいい気がする。


「こんなことは繰り返しちゃだめだよな」


 俺がそう言うと斉藤さんがうなずいた。


「ええ、私もそう思うわ」


 海軍航空隊はフィリピン戦で特攻機333機を投入し、420名の搭乗員を失い、陸軍航空隊は210機を特攻に投入し、251名の搭乗員を失ったが、アメリカ軍はレイテ島、ミンダナオ島、ルソン島と進撃を続け、特攻はアメリカの侵攻をわずかに遅滞させたに過ぎなかった。


 アメリカ軍は特攻兵器である桜花に自殺する愚かものが乗る兵器という意味で「BAKA」というニックネームを付けたが、特攻に対する恐怖が蔓延し、アメリカ海軍は沖縄戦において第二次世界大戦上で最悪の損害を受けた。


 一方、沖縄戦での特攻は有効率がフィリピン戦26.8%から沖縄戦14.7%で12%減に対し、攻撃機数は約3倍であり、アメリカ海軍の損害は沖縄戦の方が遥かに大きかったのも事実だ。


 もっともこれにより広島・長崎に原爆投下が行われた可能性も高いのではあるが。


 何れにせよ末端の兵士に死を強いるようなやり方は許されるべきではないだろう。


 2010年代頃の日本の会社が特攻隊員よろしく若い社員を使い潰していった結果が2040年の経済破綻であるというのも馬鹿げた話である思うのだ。


 その後は指宿の砂蒸し風呂を体験してから霧島に向かいそこのホテルで一泊した。


 明日からは九州を離れて沖縄だな。

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