閑話:その頃の日本の状況や主人公の見方など
この頃の日本は総合商社が行き過ぎた節税、事実上の脱税が指摘されて総合商社は莫大な金額の追徴課税を受けたりなどをした。
なお税の不公平についての是正については本来野党が追求するべきであるが、日本社会主義化党は大企業の労使が票田であったためそのあたりを指摘しなかったことがばれて支持率を落とし、いつもどおり日本共産主義化党はそのあたりを指摘してはいたが、ああいつものやつだろう? で済まされてしまったため政党の影響力は上昇していない。
なお日本の経済は引き続き全体的に好調と見られていた。
それを引っ張ったのは全国の商業高校や工業高校の商業科や情報処理科、それに小学校で導入されることになった教育用パソコンによるプログラム教育を義務教育過程に取り入れることになり、小学校へそれを納入することになった電器メーカーがパソコン本体やモニター、キーボードやフロッピーディスク、ハードディスク、日本語変換ソフトなどの生産に追われて嬉しい悲鳴を上げていたからである。
「いやはや神様・仏様・教育パソコン様だよ」
「こうなるとむしろ円高は嬉しいことだな」
「ああ、輸入するものは安くなるし助かるよ」
アメリカとの貿易摩擦で、アメリカ向けのD-RAMなどの半導体の売上に陰りが出ていたところに1年間で50円の円高による打撃は電機メーカーも含めた輸出企業を直撃するかと思われたが、トロン搭載パソコンを小学校などへ納入することとなり、先行して学校教育で用いられたイギリスの教育用パソコンであるBBC Microを参考としての制作されたパソコンのケースやキーボードは非常に頑丈であり、小学校の児童が乱暴に扱っても壊れないようにされていた。
壊れたら困るとパソコンが触られずにしまい込まれないようにとの配慮であるがこれはおそらくは正しい。
その分当然高価にはなるのだがそれも含めての教育用パソコンとみなされ、現在の日本のパソコン市場を寡占している電電ファミリーのMECや富士Ⅱなどに対抗意識を燃やす松本電器や四洋電機、ソンニー、西芝などは積極的に参画して、通商産業省と文部省が設立したCEC(財団法人コンピュータ教育開発センター)によって、日本の教育市場で使用されるパソコン「CECマシン」市場は参加企業の事実上の談合で分け合うことになったが、それでも各会社にとって巨大な市場であることに変わりはなかった。
さらにパソコンの性能は5年もすれば大きく変わることもあって、ある程度の期間をおいたらパソコンなどの資材は新しい機種に置き換えられることもほぼ決まり、将来的には中学校や高校でのパソコン教育も導入される予定であるため、この教育用パソコン市場は将来的にも電機メーカーにとって安泰な事業であると考えられていた。
こういった公共投資というと、「無駄なことに税金を使い、しかも景気には関係しない」と考えている人間が少なくないが、税金でパソコン教育を進めるのは無駄ではないし、電機メーカーは内需に切り替えることで円高にはかえってメリットが出る。
これ自体は民業を圧迫するというわけでもないし、都市部でも田舎でもパソコン教育を同等のレベルで受けられるというのはとても重要で、おそらくホビーパソコンの売上も結果的には増えるからいい事ずくめであると考えられていた。
ケインズ理論では製造者の供給能力の余剰による不況には、政府が公共事業を執り行うことによって、その不況から脱出できると論じているが、白物や黒物家電が行き渡ってしまい買い替え以外に需要を見込めないのであれば、需要を作り出せばよいということだろう。
ただし利用者のいない高速道路や、地方空港、テーマパークを作ったり、3本もある四国との連絡橋のようなその施設の利用で後ほど資金を回収しようとする場合は見積もりが大甘である場合が多いから注意が必要ではあるのだが。
そして電器メーカーが社員にボーナスを出せば社員がそれを使って買い物をして金が回るようになるわけである。
そして世間一般の前田健二に対しての印象について彼が制作したゲームについて知っているものはゲーム制作で一山当てたとても運のいい高校生という感じであった。
また経済新聞などを深く読み込んでいれば彼がとてつもない大グループを形成しつつあることに気がついた者もいる。
ただし、政界や官界、財界やマスコミなど日本の暗部に所属する人間たちには前田健二はすでにかなり恐れられる存在となっていた。
そのきっかけはテレビto-kyo系列での対談の後の商社の脱税と大蔵省の癒着による腐敗の露顕であるが、それ以前にも様々なことが起こっていたことに気がついたからである。
特に政治家というのは意外と宗教やオカルトと縁が深く政界での恐れられ方は尋常でなかった。
「”あれ”は間違いなく神の御先だろう」
「あ、ああ、北朝鮮や韓国、最近ではアメリカのCIAやソ連のKGBなどの日本国内のネットワークがずだずたに切断されているのも”あれ”のせいだという」
「おそらくそうだな、もしかすると黄泉帰りかもしれぬ」
「無名で脅迫の手紙を出しただけでも恐ろしい目にあったものもいるらしい」
「触らぬ神に祟りなし、しかないのか?」
「”あれ”が今度出すゲームでは伊邪那美を救い出しルシファーが倒されるとなっているが、これは我々へのメッセージかも知れぬぞ」
「”あれ”は日本の中にいる”ルシファー”の使徒を滅ぼすつもりか」
「こうなったら”ルシファー”とは早めに手を切ったほうが良いかもしれないな」
もはや彼らにとっては”名前を呼んではいけないあの人”扱いであるが、下手に名前を呼んで文字通りの地獄を見たことで外見から性格まで激変した人物を直接見たものもいる。
そして前田健二はそこまでのメッセージ性をもたせて”デジタルディーヴァストーリー女神召喚”を製作発表したわけではないのだが、この作品の存在によって伊邪那美の名が知られ、彼女の力は強まったのも事実であったし、日本を害する存在を取り除こうと伊邪那美がしているのもまた事実であった。
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