夏休み最後は恩賜園の子供たちに夏まつりを体験させてみたぜ
さて、もう夏休みも終わる時期になった。
今日は浅井さんと一緒に、恩賜園の子供たちを習志野の公園で行われる夏祭りに参加させるんだ。
「今日は園のみんなに浴衣や下駄を用意してくれて、本当にありがとうございます」
浅井さんが嬉しそうに言うが、普通の家庭だったら浴衣は親が買ってくれるし、夏祭りは普通に楽しみなものだからな。
でもこういった施設の子供には、夏祭りに行くことすら難しいことのほうが多いはずだ。
だからぜひ一度は参加させてあげたかったんだよな。
「いやいや、夏休みの夏祭りに参加するくらいならそんなに金はかからないしさ。
俺のポケットマネーで十分何とかなるし。
それに園の子供たちみんなが嬉しそうな表情をしてるのが何よりだよ」
一人一人に浴衣や下駄をそろえて買い物をするための小遣いも加えて、一人に1万5千円かかるとして200人でも300万円ぐらいだからな。
ほとんど使ってない俺の口座にたまってる金から、そのくらい出しても全く問題はない。
高校生の経済感覚としてはおかしいんだろうけど。
去年も今年も日本中をあちこち旅したりなんだりしてるが、慰安旅行として会社の経費として落とせたりする部分も多いので月給が100万、ボーナスが250万あってもほとんどそっちから使ってはいないというのもあるし、そこから出していたとしても全く問題はないくらい口座には金があるはずだ。
しかも、今年の俺たちライジングの役員報酬はどうも1桁か2桁違っているらしい。
北条先輩曰く。
「現状ゲームだけで年1兆円近くの利益が出ていますからね。
さらに証券会社経由での伊邪那美金塊の利回りに加えて株取引や先物取引での利益は別に上がっていますし。
ですのであなたの名目上の年収は50億ほどですわね。
まあ88%は税金などでもっていかれますので手元に残るのは5億ほどですが」
「いやいや、手取りで年5億は十分多いでしょ。
でもそんなに利益が出てるとはね。
パチンコが違法になって、その分の市場の何割かがゲームに流れてきたり、海外でのジュエルズの人気のおかげかな」
「ええ、そうですわね」
3億円あれば一人月に25万円で300万払ったとしてシングルマザー100人を保護するとかできるよな。
そして、子供たちが育ったら世界各地に送り出して、聖戦士にするとかできそうだ……。
シングルマザーに対する経済援助はともかく、子供を聖戦士にするのはやらないけど。
とはいえ売上1兆円じゃなく、利益で1兆円行ってたら、そりゃあ税金対策で役員報酬も上げるよな。
しかし50億稼いでも45億が税金でもっていかれるとかだと、脱税したくなる気持ちもわからんでもない。
「なにしろ昭和59年(1984年)から、法人税率が上がっていますからね。
役員報酬も上げたほうが損金として処理できますし」
「まあそうしても焼け石に水って感じでもあるけどな」
「商社のように海外取引をメインにすれば、法人税はおそらく1割程度でほとんど払わずに済むのではありますが」
「うちもSAGAや陣天堂みたいにアメリカやヨーロッパ支社を設立するべきかな」
「そうですわね。
そうしたほうが良いとは思いますわ」
「というかぶっちゃけ大雑把に利益が1兆円だとして、法人税として5000億円も国に持っていかれるなら、船橋市や習志野市、千葉市、夕張市なんかの地方自治体や東大や京大なんかの国立大学、日本学生支援機構みたいな奨学金を出す団体なんかに寄付して損金にしたほうがいい気がするんだけど」
東大や京大に寄付すればスパコンなどのコンピュータ関係や原子力発電に関する技術研究なども進むだろうし、奨学金を必要とする人も多いしな。
「確かに地方自治体や国立大学、日本学生支援機構などへの寄付は全額損金計上できますが、結局のところ税金で国に納めるのと変わらないのでは?」
「そうでもないと思うぜ。
特に夕張とかは今厳しいはずだし、東大とかの研究費も厳しいはずだし」
「確かに地方自治体や国立大学の研究が厳しいところは多いでしょうね。
ではやってみましょうか」
「可能なら民間企業のサービスとして、無理なら財団法人を設立して、返済不要な給付型奨学金の提供をしたいね」
「児童養護施設にも優秀な人はたくさんいるのはよくわかりましたから、それもよいことだと思いますわ」
「母子家庭とかも大学進学下手すれば高校だって厳しいしね」
「そうですわね」
まあそれはともかくこんな状態でも、日本の国税収入の構成としてはアメリカ・イギリス・ドイツ・フランスなどと比べて法人税の割合が高いのは事実なんだよな。
アメリカなんかは所得税の割合のほうがずっと高い。
ただ、わが国の巨大商社の代表である四菱商事は、昭和60年(1985年)の総売上げが16兆4千億円、経常利益が517億円もありながら、国に法人税をまったく払っていない、法人税ゼロ企業であったりする。
その他の有名な総合大手九商社の年間総売上げは合わせて80兆円を超え、国の予算の約1.5倍にも達する額で、その申告所得額は2400億円もあるんだが、納付した法人税額は二社の115億円のみで残りの7社はゼロである。
これは外国税額控除制度によるもので外国で得た所得には、外国で税金がとられるので、その所得に対してさらに日本で課税されると二重にとられることになるのでその二重課税を防ぐために設けられているのが『外国税額控除』の制度なんだが、外国で払ったとされる税金分を、国内の法人税から控除することによって、結果的に国内で納める法人税は少なくなるわけだ。
そして問題は外国で税金を払っていないのに払ったものとして控除される場合が多く、進出した企業に対して税金を免除したり、税率を軽くしたりする場合が少なくないのだが、その場合でも、進出企業は減免された分も払ったものとみなして外国税額控除をすることができるようになっている。
なので租税減免をおこなうために外国に子会社をつくる企業はふえるわけだ。
実際に日本の法人税の税収額は、過去の約十年間で三倍くらいにしかふえていないが、外国税額控除は、10倍近くになっている。
まあ日本では税金が高すぎるから海外に逃げるというのはあるのだろうが、大商社などの「法人税ゼロ」による法人税収の伸びなやみを解決するために導入されたものが消費税で、本来払うべき税金が海外に落ち、しかも実際には海外にも払っていない分も含めて、国内の法人税を控除されているわけだ。
赤字国債がーとか国民一人あたりに借金がーなどと叫ぶのも結局はそういったことを隠して庶民への増税を容認させるためのものでしかない。
要するに、輸出企業優先、海外進出企業優先の日本の税制や経済のあり方を改める必要があるのは確かだと思う。
ただ現状では所得税や法人税をまともに払うと高すぎるのが問題なんだが、節税の方法次第で税金を払わなくてもいいみたいな制度もやめるべきだろう。
法人税は20%にする代わり節税は完全にできないようにするとかな。
”前”でも柔らか銀行が利益が一兆円あっても法人税を払わないで済んでいたりしたりして、それを指摘された瞬間に大赤字だとか言い出したし。
それはともかく銀行口座の管理は北条先輩に丸投げしているから実際いくらあるんだか知らないけど300万円くらいなら問題はないはずだ。
はたから見れば夏休み中かわいい女の子多数と一緒にフラフラと西は九州から北は北海道まで日本中を泊まり歩いて、遊びまわっていられるなんていい身分だよなと思われてもいそうだが、実際は仕事のための現場視察や節税、社員としての慰安のための行動でもあるんだよな、これ。
実際に取引先、社員と一緒に食事をした場合は会議費として経費にできるし、仕事のために必要な理由のある出張・外出に関する旅費・交通費は、旅費交通費として計上できます。
また、社員と行った慰安旅行の費用は、福利厚生費として計上できる。
まあ金なんて銀行口座にためておいてそのまま死蔵しても意味がないので、使えそうなときに使ったほうがいいと思うが、個人的に買いたい物はそんなにないのもあったりする。
なんだかんだで高校生レベルではバイクにはそれなりに金を使っていると思うが、本当のバイク好きのようにパーツを買って極限までチューンナップしたりするつもりもないし、パソコンとかは必要なら会社の経費で高機能なものを買えるしな。
高校生だから高級クラブで飲んだり高級ソープでの女遊びに金を使うというのはそもそもできないし。
ついでに言えば俺自身は上杉先生みたいな酒好き美味いもの好きというわけでもないので、実のところそこまで食事に金をかけたいわけでもない。
最も美味いものを用意してリピーターを確保するのは温泉旅館でも、遊園地などでも大事だからそういった調査に関してはおろそかにするつもりはないが。
「お兄ちゃんありがとー」
「ありがとー」
学校に上がる前の小さい子が浴衣を着て下駄をはき、嬉しそうにしている様子を見るのはとても微笑ましい。
「ああ、祭りは楽しみだよな」
「たのしみー」
「たのしー」
準備ができたらここに勤めている保育士さんたち20人と一緒に学校へ歩いて向かう。
なんだかんだで祭りの会場はにぎわっていて屋台の出店では定番の焼きそば、焼き鳥、綿あめ、りんご飴、チョコバナナ、クレープ、綿あめなどの食べ物やビールやラムネなどの飲み物、かき氷やアイスキャンディなどが売っていたり、仮面バイカーやアルテママンとともに二人はプリティファイターのお面も売っていたりする。
「僕、あの仮面バイカーのお面がいー」
「私はぷりてぃほわいとのお面ー」
定番のスーパーボールすくいやヨーヨーすくい、輪投げや射的などの出店もあるな。
「一人5千円だからなー、ちゃんと考えて買うんだぞー」
「わかったー」
「はーい」
夏祭りの出店だと500円くらいはかかるから5千円あってもあっという間になくなったりするしなぁ。
駄菓子屋だったら500円でも結構いろいろ買えるけど。
「わたあめおいしー」
「とってもあまーい」
そして浅井さんも綿あめを買って食べていた。
「綿あめを食べると去年を思い出しますね」
「確かに。
あれからもう一年たったんだなぁ」
出会ったときは自信なさげにおどおどしていた浅井さんが今や人気の声優というのも感慨深い。
声優も含めて芸能界はあまり学歴が問題にされないのが良かったのだろう。
来年はどうなっているのかな?
この子たちが来年も笑っていられる状況であればいいのだけど。
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