養老渓谷のオーベルジュが改装終了したのでみんなで養老渓谷へ行ってみたが結構良かったよ

 さて、夏休みもそろそろ終わりだが北条先輩から報告が上がってきた。


「閉店したパチンコ屋の跡地を、総合アミューズメントビルか、ランドにするというお話ですが、まずは学校近くの西千葉の駅前の地上2階建て、地下1階のパチンコ店の店舗を改装して総合アミューズメントビルをオープンしました。

 1階が食堂で2階がビリヤード場、ダーツ場にゲームセンター、地下1階がカラオケルームですね」


「うん、それはすごくいいんじゃないかな。

 近くにあれば直接どれくらい人が入るかもわかりやすいと思うし」


「また伊東と養老渓谷の小型旅館を買い取って、オーベルジュへの改装もできましたわ」


「お、それはいいね」


「できればもう少し早く改装や人の手配ができれば、夏休みに間に合ったのですが」


「どちらにしても宣伝が間に合わないとは思うけどね」


「そうなのですわ。

 とは言え秋の方が旬の食材も豊富ですし、むしろ良いかもしれないとも思いますが」


「確かに夏が旬の魚とかって少ないからな」


「私達事務グループを銚子に連れて行ったように、ゲーム制作部の他の方々を慰労のために養老渓谷へ連れて行ってあげてはどうですか?

 結構皆さん疲れていると思いますわ」


「あー、確かにそれがいいかもな。

 斉藤さん、最上さん、朝倉さん、明智さん、伊達さん、南部さん。

 問題なければ養老渓谷のオーベルジュへ気分転換に一緒に行かないか?」


 大雑把な脚本制作は俺がしているのだが、シナリオの細かい所は斉藤さんと北畠さんに任せているため、スペシャルロボット大戦のクロスオーバーシナリオ制作のためにガンガンとマジンダーとゲットダゼロボなどのアニメのビデオを見ながらメモ書きしていた斉藤さんと北畠さんがまずはうなずいた。


「そうね、正直に言えば、今は気分転換させてもらいたい気分だわ」


 斉藤さんがそう言うと北畠さんも言う。


「こういってはなんだけど、ロボット好きな男子をアドバイザーとしてつけてもらえないかと思うのだけど……私達だけだと正直厳しいです」


 二人のうんざりとした表情を見ると、たしかにそうした方が良さそうではあるな


「ああ、たしかにスペシャルロボット大戦のシナリオ作るにはロボ好きの協力は必要かもなぁ……。

 バイトの方から拾い上げてみようか」


 俺がそう言うと斉藤さんがうなずいた。


「ええ、できるだけ早くそうしてくれると助かるわ」


 そして最上さんもコクコクうなずいた。


「ロボットとか背景とか作るのは思っていた以上に大変だし私も気分転換したいな」


 最上さんだけでなく伊達さんや南部さんも同意見のようだ。


「おらも休みたいっちゃね」


「本当戦闘のアニメーション制作はしんどいよ」


「う、了解」


 疲れているのは朝倉さんも同じようだ。


「出てくるロボットの種類ごとに音楽を切り替えるのはめちゃめちゃ大変です」


「う、でもそれが売りの一つでもあるんだよ」


「それはわかってるですよ」


 明智さんは比較的元気だけどな。


「自分は兄貴が西ドイツから帰ってきたら忙しくなりそうっすけど、今はそこまで忙しくはないっすからね」


 尚、浅井さんは北海道のツーリングで仕事を開けたぶん、今はめちゃめちゃ忙しいのでここにはいない。


 ちなみにゲームシナリオ的には”前”のホムコンの第二次スペシャルロボット大戦に近く、DCがメインの敵なのだが、発売が5年近く早いため、ガンガン系列のZガンガン、ZZガンガン、逆襲のジャアが入っていないかわりに、重戦闘器械エルガイラムが入っていて、無敵鋼人ダイターンダ3、超電磁ロボコン・バトラー5、勇者ライダーンにJ10シリーズのブライダーがいて、オリジナル主人公の機体はゴーストだったり、パイロットに格闘射撃の能力の区別や機体に運動性の概念があったりなどで色々入り混じっていたりする。


 そんなわけで、みなでうまい飯を食べてのんびりするために養老渓谷へ向かう。


 いつもどおり引率は上杉先生に頼むけどな。


「先生も引率のために来てもらえますか?」


「ああ、構わんぞ」


 で俺は皆に向き直って聞く。


「というわけで明日千葉駅へ朝10時に集合でどうかな?」


「ええ、それでいいと思うわ」


「ハイキングもするから動きやすい格好の方がいいかな。

 オーベルジュって言ってもドレスコードは厳しくしない方針だし」


 斉藤さんがうなずくとみんなも同じようにうなずいたのでそれで決定。


 内房線快速君津行に乗り20分ほどで五井に到着するので、ここで降りて、小湊鉄道へ乗り換え、養老渓谷行へ乗って1時間ほどで到着する予定。


 小湊鐵道の歴史は古くて、大正14年(1925年)に小湊鉄道線の五井から里見間が開業しており戦時中の当局の勧奨により株式の大半が京成電鉄に買収され、京成電鉄の系列会社となった。


 しかし、1970年代に京成電鉄が経営危機に陥り、資産整理のため持株が放出された結果、九十九里鉄道が小湊鉄道株を、また小湊鉄道が社長名義で九十九里鉄道株を持つ形態になり、京成電鉄の出資割合は大幅に下がっていて事実上別会社と言っていい状態だ。


 そして非電化単線の路線なのでディーゼル気動車を使っている。


 東京近郊で四季折々の風景を楽しめる路線であり、”前”でもローカル鉄道では珍しい「黒字経営」を続けているが、女性の雇用も積極的に行っていたりもする。


 まだ冷房化されていないので、天井で扇風機が回っているが、窓を開ければ結構涼しい風が入ってくるのでそんなに暑さは感じない。


 そして車窓からは緑が沢山見られるんだよな。


「このあたりは本当に田園地帯って感じだよな」


 俺がそう言うと斉藤さんがうなずいた。


「こういう風景を見るのは落ち着けていい感じね」


 そして最上さんも言った。


「桜や菜の花の咲いている春だったらもっと素敵な風景になりそうですね」


「ああ、11月くらいだと紅葉もきれいだと思うぜ」


 そして朝倉さんも言った。


「福島から鬼怒川に電車で行ったのを思い出すですね」


「ああ、確かにそれに近い気がするし、銚子電鉄のユ100形ユ101「澪つくし号」みたいな貨車を改造したオープン型列車があったらもっと良さげだよな」


 国鉄では昭和59年(1984)が四国の予土線で、銚子電鉄では昨年の昭和60年(1985年)に、貨物車両を改造したいわゆるトロッコ列車が走りはじめている。


 もっとも黒部川水系の発電所建設のための資材運搬用鉄道として敷設された黒部峡谷鉄道は昔からトロッコ列車のようなものが走っていたが、大正15年(1926年)の開業当初から地元の人達の利便をはかるため、「無料便乗」という形ですでに乗車はされていて、昭和4年(1929年)からは便乗料金を徴収した上で一般の利用客にも解放することが認められ、昭和26年(1951年)10月に禁止されるまで続けられたが「便乘ノ安全ニ付テハ一切保證致シマセン」と書かれていたというから恐ろしい。


「ここに観光列車を走らせたらもっと集客も良くなりそうな気はするな」


 実際に平成27年(2015年)から上総牛久駅から養老渓谷駅間でトロッコ列車が運行され、かなりの人気を博しているし、60年代に歌声喫茶を楽しんだシニア世代が、車内で生演奏に合わせて歌う「歌声列車」はもかなりの人気だったりする。


 そんな話をしている間に養老渓谷駅へ到着。


「さて、軽く昼飯を食ってからハイキングと行こうか」


 駅の近くの定食屋に入ってみる。


「おすすめの定食は何かな?」


「今日は下の川で鮎が取れたんでそれがおすすめですよ」


「じゃあ、それで」


「じゃあ私も」


「私もそうしましょう」


「私もです」


「自分もっす」


 とみんなは鮎の塩焼き定食にしてるが先生だけちょっと違うものを頼んでる。


「わたしはゆば天丼膳に清酒をくれ」


「わかりました。

 20分程度かかりますのでお待ち下さい」


 というわけで20分程度待つと運ばれてきた。


 メインの鮎が2匹塩焼きにされていて、ポテトサラダ、ひじき、きんぴら大根、冷奴が小鉢に入っていて、大根と胡瓜のお新香、味噌汁にご飯とボリューム満点で1000円なら安いよな。


「いただきます」


 まずは鮎塩焼きをがぶりと食べるが焼き方も塩のふりかたも丁度良く、川魚特有の臭みも全くなくて美味い!


「この鮎めちゃうまいな」


 そして豆腐もめちゃうまい。


 先生のゆば天丼膳にはゆば天丼に刺身ゆば、ざるうどん、味噌汁にお新香だ。


「うむ、ゆばの天ぷらがふわふわで美味いな」


「へえ、湯葉もうまいんだ」


「ああ、大多喜は美味しい湯波が食べられので有名だぞ」


「やっぱりこのあたりだと水がいいからなんでしょうね」


「おそらくそうだな」


 ここの豆腐や湯葉を食ったらスーパーの豆腐はまずくて食えないよな。


 ここは他に鯉こくやカジカ鍋など川魚料理に加え、春は山菜やタケノコの天ぷら、夏は勝浦や銚子で取れた鰹や鰻、秋は大多喜産地自然薯とろろやむかごにかき揚げやきのこ、冬は猪の肉を使ったしし鍋定食など四季折々に旬の食べ物がたのしめるようだ。


「意外と量が多かったです……」


 お腹を抑えながら朝倉さんがちょっと苦しげに言った。


「ありゃ、朝倉さんには多すぎた?」


 そうしたら斎藤さんも苦笑していった。


「女の子にはちょっと多い量よね」


「じゃあちょっと休憩してからハイキングとしようか」


 というわけで少し休んでからハイキングコースへ。


「新緑がきれいね」


 なんて軽い気持ちでいざ、ハイキングコースへ向かうが、どこの秘境だというほど大自然がいっぱい過ぎたりする。


 林の中の整備されたこぎれいな遊歩道を、のんびり歩いていくような情景とはほど遠く、途中途中に案内板が出ているわけでもなく、ロープなどが張られていたりするわけでもなく、渓流から離れないようしながら、ぬかるむ足場の山の中の獣道を行けども行けども木、木、木、川川川の風景を見せつけられる大自然。


「まあたまにはこういう場所をのんびり歩くのもいいかもな」


「確かにたまにはいいかもしれないわね。

 度々はどうかと思うけど」


 4㎞ほどのハイキングコースを歩くと16時位になっていたのでオーベルジュへ向かう。


「いらっしゃいませ、ようこそ」


「今日は世話になります」


 ここは客室が全5室の小さな宿泊施設。


 夕食は、フレンチのシェフが房総半島やその近海の海でとれた極上の旬食材を厳選し、素材の持ち味や季節の野菜の旨みを活かしたカジュアルなフレンチのコース料理が楽しめる。


 フランス料理は特に見た目を重視しているが、それぞれの素材を引き出す調理技術も素晴らしい。


 アミューズ(突き出し)、オードブル(前菜)、パン、スープ、ポワソン(魚料理)、ソルベ(氷菓子) 、ヴィヤンド(肉料理)、レギューム(サラダ)、フロマージュ(チーズ)、デセール(デザート)の順で少しずつ料理は運ばれてくる。


「うん、料理もうまいし景色もいいしフランスの片田舎の雰囲気を味わえるな」


 明智さんがウンウンうなずいている。


「歩き疲れたけどそのせいで余計美味しいっすね」


 そして上杉先生も満足なような。


「うむここのワインセレクトは実にいいな」


 特にオマール海老はうまかったな。


 食後には俺は女性陣と別れて黒湯の温泉に入り、ツインルームに一人で寝る。


 部屋にはTVが無いので子供がいるとちょっときついかもしれないがゆっくり寝たいという客にはむしろいいと思うな。


 翌朝の朝食も新鮮な野菜とフルーツのサラダとヨーグルトにオムレット、スープ、焼き立て自家製パンにコーヒーや紅茶と十分な美味しさだった。


 それなりに余裕がある女性やカップルをメインターゲットにしているのだが、リピーターになってくれそうな人は結構いそうだと思うよ。

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