結果はともかく畑中角栄の政治的思想は間違っていなかったと思う

 さて、畑中角栄といえば日本の金権腐敗政治の元凶で、ロッキー事件で逮捕されたことからも、日本を悪くした人物のように思う人間は多い。


 しかしそれはアメリカ万歳な偏向報道をおこなうマスコミのせいであり、彼ほど日本という国を真剣に考えてきた人物はいなかったと思う。


 彼はまず日本国民の成果一を大事に考えていた。


「政治とは自分(親)たちがメシが食えない、子供を大学にやれない状態から抜け出すことを先決に考えねばならん。

 理想よりも現実だ。

 政治とは何か。

 生活である」


「俺の目標は、年寄りも孫も一緒に、楽しく暮らせる世の中をつくることなんだ」


「政治家を志す人間は、人を愛さなきゃダメだ」


「政治というものは、国家の威信というよりも、国民の威信を守りつつ、列国に伍していかなければならんのだから。

 ほかの国がみんな飢饉で困っておっても、まず、わが国だけは餓死者を出さない。

 みんなにメシを食わせる。

 これが政治にとって最大の課題になるわけだな」


「国民のための政治がやりたいだけだ。

 蟷螂の斧と笑わば笑え」


「生命と財産が守れないで、どこに一体政治があるのでしょうか」


「後代の日本人の為により良い日本が造れる政策があるなら、いくらでも採用致します。

 そうでなくてどうして政治の責任を果たせるのでありますか」


「後代の日本人から褒められるような新しい政治と取り組もうではありませんか」


「子供が十人おるから羊かんを均等に切る、そんな杜会主義者や共産主義者みたいなバカなこと言わん。

 キミ、自由主義は別なんだよ。

 羊かんをちょんちょんと切って、いちばん小さい子に、いちばんでっかい羊羮をあげる。

 そこが違う。

 分配のやり方が違うんだ。

 大きい奴には 『少しぐらい我慢しろ』 と言えるけどね、生まれて三、四歳のは納まらないよ。

 そうでしょう。

 それが自由経済というものだ」


「高度成長政策と福祉の充実を天秤にかけて『成長か福祉か』、『産業か国民生活か』という二者択一式の考え方は誤りである。

 福祉は天から降ってくるものではなく、日本人自身が自らのバイタリティーをもって経済を発展させ、その経済力によって築き上げるほかに必要な資金の出所は無いのである」


 と政治は生活にそしてそれは国力そのものに直結していることをよく知ってる人物だった。


 それは彼が貧しい地域に生まれ育ったからでもあったろうが、ぶっちゃけその後の新自由主義を推進して貧しいものはますます貧しくなるように仕向けた日本の総理たちには、彼の爪の垢を煎じて飲んでほしいと思うぜ。


 そして彼は官僚の扱い方もよくわかっていた。


「官僚には、もとより優秀な人材が多い。こちら(政治家)がうまく理解させられれば、相当の仕事をしてくれる。

 理解してもらうには、三つの要素がある。

 まず、こちらのほうに相手(官僚)を説得させるだけの能力があるか否か。

 次に、仕事の話にこちらの野心、私心というものがないか否か。

 もう一つは、彼ら(官僚)が納得するまで、徹底的な議論をやる勇気と努力、能力があるか否かだ。これが出来る政治家なら、官僚たちは理解し、ついてきてくれる」


「東大を出た頭のいい奴はみんな、(自分の中の理想としての)あるべき姿を愛そうとするから、現実の人間を軽蔑してしまう。

 それが大衆軽視につながる。

 それではダメなんだ」


「大蔵省の役人というのは優秀です。

 正しいデータさえ入れればちゃんとした結論を出してくる」


「時間の守れん人間は何をやってもダメだ」


「官僚でも局長、部長以上になると、既に天下り先を見ている。

 遮二無二、働こうという気は薄い。

 ときとして理屈、不満が先になる事が多い。

 そこへいくと、課長、課長補佐クラスは理屈、不満を言わず仕事熱心だ。

 だから俺はいつもそちらの方に目を向けている」


 そして彼は政治に速度が大事であることもよくわかっていた。


「内閣はできたときに最も力がある。

 会社の社長も同じ。

 力のあるうちに、できるだけ早く、大きな仕事をやるべきだ。

 熟慮断行もヘチマもあるものか」


 そして彼は教育の重要性もよく理解していた。


「大学の教授より、むしろ小学生の先生を大事にしなければいけない。

 小学校の先生が白紙の子供を教えるのだから」


「教員は一般公務員に比べて待遇をよくすべきだと思っている。

 子供というのは、本質的には小さな猛獣なんだ。

 小さいときからアメとムチでしっかりと訓練して、しつけなければだめだ。

 先生たちはそういう子供を、親の手の届かない学校で、親に代わって仕込んでくれるんだから、待遇をよくして当然なんだ」


「世界の国々の中で、わが国だけが教育の目標、基本、基準をはっきりとさせていない。

 最大の問題だ。

 特に、教育に政治を持ち込み、混同させた」


 1970年代初頭の高度経済成長によって民間給与が上昇し、相対的に小学校と中学校の教員給与が低くなったことで公務員は不人気となり、教員不足が懸念された。


 だが畑中角栄内閣が誕生したときに教師の給与引き上げをおこない、昭和49年(1974年)に成立した学校教育の水準の維持向上のための義務教育諸学校の教育職員の人材確保に関する特別措置法(人材確保法)によって、25%ほどの給与改善が達成され、教員の給与は世間的に見てもかなり高いものとなった。


 最も高い時には、高校の校長の給料が、文部省の局長の給料よりも高かったくらいでもあったのだ。


 その結果、優秀な人材がこぞって教育界を目指すようになっていった。


 しかし、その後は特に給料が上がるわけでもなく、バブル崩壊後は毎年引き下げられていき、しかもテストの採点などでの残業代などが出るわけではなく 朝や放課後に部活動で指導を行った場合4時間程度の業務に対して1,200円程度、休日にクラブ活動で1日出勤しても「教員特殊勤務手当」が3400円程度つくだけ。


 丸1日出勤してその給料が3400円ではやってられないと思う教師が多くても仕方ないだろう。


 このように教師の待遇は悪化するばかりとなったからその質も下がるし不祥事が絶えるどころ増えるわけだ。


 北方領土問題に関しても彼は現実的に見ていた。


「北方領土は、いっぺん向こうが取ったものだから、簡単に返せというだけじゃ返すものか。

 買えばいい。

 お金だよ。

 シベリア開発にこっちが注ぎ込んで、その見返りで取り返せばいい」


 俺も基本的な考え方は同じだ。


 ただ投資先はシベリアではなくて南樺太ではあるが。


 そんな畑中が失脚したのはおそらくアメリカ政府とアメリカのオイルメジャーを怒らせたからだ。


 アメリカという国が怒ったのは日中国交正常化をを勝手に取りまとめたこと。


 オイルメジャーを怒らせたのは彼がオイル・ショック対策として仏、英、西独、ソ連を次々と訪問し、石油やウラン鉱石、天然ガス等の共同開発について議論し、イギリスの北海油田からも原油を日本に入れるとか、ソ連のムルマンスクの天然ガスをパイプラインを引いて日本入れるとかをまじめにやったことだな。


 そのほかにもインドネシアとの間で液化天然ガスプラント、石油基地建設の建設協力で合意したり、メキシコ原油の開発と輸入、ニュージーランドのマウイ天然ガス開発やウラン資源の確保について合意しているが、これらはオイルメジャーがかかわらないということだ。


 のちにフォード政権当時の国務長官だったキッシテンジャーは『ロッキー事件は間違いだった』といったともいう。


 ロッキー事件では右翼の大物である児玉誉士が介在して政治家に分配されたが、捜査やマスコミの関心は畑中に流れた5億円ばかりに集中し、児玉が受け取ったカネについてはまったく解明が進まず防衛庁長官の大曽根康弘や官房副長官の前藤田正晴も金を受け取ったはずだがそちらに検察の手は伸びていない。


 実のところロッキーは戦闘機F−104を自衛隊機に選定させて購入させたり、P3C対潜哨戒機導入を行うために、有力な自民党議員のほとんどすべてが賄賂を贈っていたとされる。


 だが、畑中はそれを良しとしなかったともいわれた。


 だから、この機に乗じて畑中だけを潰そうと、マスコミを動かしたのではないかといわれている。


 畑中はこういう言葉も残している。


「日本のマスコミは、司法、立法、行政の三権と並ぶ第四権力だ」


 とも。


 ロッキー事件に大きくかかわった児玉は昭和40年(1965年)の日韓国交回復にも積極的な役割を果たし、国交回復が実現し、5億ドルの対日賠償資金が供与されると、韓国には日本企業が進出し、児玉もこの頃からしばしば訪韓して朴政権の要人と会い、日本企業やヤクザのフィクサーとして利益を得た。


 そして自らCIAアージェントだと言った児玉が圧力をかける時は傘下のメディアを駆使したが、その一つが博方堂だ。


 博方堂の取引先を系列に組み込み、その系列化された企業に持ち込まれるクレームを利用してマスコミを操作し、なびかないメディアには広告依頼を回さないという方法で対応したのだな。


 彼は畑中に接近しすぎたことか、アメリカへ要求する金が多くなりすぎたかでアメリカに切られたのだろう。


 ”前”を考えると畑中角栄のような貧乏な家からのたたき上げで日本のことを本当に考えられる、保守本流の首相になるような天才的な政治家が現れることは考えづらいのは悲しいことだが。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る