工場を中国台湾韓国に建設して下請けとして働かせるなどしないほうがいい
さて、甲子園やコミケなどのイベントも終わって、お盆が終われば海水浴シーズンも終わり。夏休みも後少しで終わりだな。
そしてライジングのオリジナルハードの本体発売と同時に発売する、ローンチタイトルの制作も今が佳境だ。
特にスペシャルロボット大戦はCDの大容量を生かしての、戦闘時のアニメの声優さんによる声入りが売りなのだが、機動戦士ガンガンの主役級ともなれば声優でも大御所だから、それなりにギャラも高くなるが、やはりあのセリフがゲームで聞けるというのはかなり大きい。
そんなことをやっているところで、北条会長がパソコンや携帯電話の工場建設に関しての報告をしてくれた。
「工場に関してですが、福島県の郡山中央工業団地では台風10号による8月5日の豪雨で阿武隈川が氾濫し、1メートル強の冠水により多くの企業の工場が水没して大きな被害が出ているようです、
被害額は郡山中央工業団地だけで300億円、その他も合わせると全体で1,085億円あまりと推算されています」
「ああ、8.5水害の被害はあっちはそんなに大きく出ていたんだね」
ちなみにこの地域は平成10年(1998年)の8月末豪雨や令和元年(2019年)の台風19号による豪雨でも、洪水被害が出ていたりもする。
「郡山中央工業団地は、阿武隈川とその支流の谷田川に挟まれ、なおかつ標高が低い地域にありますので、洪水被害には弱いようです」
「立地は良いんだけどね。
全国的には工場用地は不足気味だけど、東北新幹線の駅や郡山市の中心部にも近くて通勤に便利だし、どっちかというと常磐ハワイアンセンターに近い、小名浜臨海工業団地に土地があいていればそっちのほうが工場の福祉施設として役に立ちそうだけど」
「なるほど、たしかにそちらのほうが良いかもしれませんわね。
北海道の苫小牧及び福岡県の北九州工業団地については特に問題はないと思います。
ところで安く生産するのであれば韓国や台湾、中国などに工場を作ったほうが良いような気がしますが?」
「ああ、それはやらないよ」
「なぜですか?」
「例えば社員の福祉として俺たちが持っている施設に遊びに行かせたり、宿泊させたりしないで舞浜のアレにばかり行かせたら儲かるのは舞浜ばっかりになるだろ?」
「はあ、まあそのとおりですわね」
「それと同じように工場を日本国内で建てて日本人に働いてもらうことによって、日本でお金が回るようになるのさ。
例えば韓国や中国に工場を立てたとして、そこで働いてる人たちに俺達の作ったゲームを買って遊んでもらえると思うかな?」
「たしかにそれはないでしょうね」
「まあ、あくまでも今のところは……だけどね。
それに外国に工場を作って、そこで下請けとして働かせている間に技術を吸収されて、独立されたら最終的には全部ダメージは自分たちに戻ってくるし」
「それもそうかも知れませんわね」
もともと 昭和47年(1972年)9月の日中国交正常化の日中共同声明を発表したが、1976年まで続いた文化大革命もあって、経済的にはあまり繋がりはできていなかったのだが、昭和53年(1978年)10月に国会の衆参両院で共に圧倒的多数で批准され、日中平和友好条約が締結され同年10月22日に鄧小平が来日した後では、製造業の中国などへの進出もそれなりに進んでいたりする。
この頃の日本製品は安いけど性能はそこそこという立ち位置だったが、中国などはもっともっと遅れていたからテレビや冷蔵庫はかなり売れていた。
それが2010年代には日本製品は高くていらない機能ばかりついているゴミと認識されて、海外では全く売れなくなって、韓国や台湾の製品の方が日本製品よりも性能も良くて安いという状態になったりする。
まあ、韓国等の企業の製品が外国で売れるのはそもそも、安定した電力のもとでなくても主機能が不具合なく動くかに重点を置いているからと言うのもあるらしいが。
電圧低下や停電がほとんど起きない日本は、アジア的に見ればかなり例外であったりするんだな。
それはともかく1970年代にはすでに機械産業は貿易摩擦回避策としても東アジアへ組立工場を展開し始めていた。
”前”ではプラザ合意による急激な円高でそれが加速するわけではあるが、昭和48年(1973年)に、先進国は相次いで変動相場制に切り替えたこともあって、その時点で輸出が中心の多くの中小企業は大手メーカーの下請けとして系列に組み込まれることとなっている。
さらにその後の海外への直接投資の政策の変更、ようするに資本の自由化措置政策が誘因となって海外への直接投資が増加したが、コスト優位性だけを求めて海外に工場を設置し、下請けに対して技術を開示し、工場生産のMC旋盤やロボットの導入などで自動化しいったことで、技術を渡してしまい、海外の下請け扱いの工場は収益を上げていった、その結果安くて技術は日本製品と同程度の韓国台湾中国企業に家電や半導体市場を奪われていったわけだ。
金をかけて育ててやって恩も忘れやがってと言っていても日本もアメリカから見ればそういう立場であることを忘れちゃいけない。
平成の30年間で日本の総合電機メーカーは壊滅的な状態になったが、製造現場での作業に人間の技術習熟度が必要なくなれば品質や性能の良さが失われるのも当然だっただろう。
そうなれば後の競争力は技術開発力の問題だが”前”の日本はバブル崩壊でそれどころではなかったからどんどん差をつけられていくのも当然だった。
結局令和の日本の総合電機メーカーの苦境は、もとはと言えば日本企業が安易に海外へ工場を進出させたことで起こったわけだ。
少なくともNAND型フラッシュメモリーの技術を海外で生産させるつもりはないし、それが組み込まれるようなパソコンや携帯、タブレットやスマホの生産も海外でさせるつもりはない。
だいたい日本企業は何でもかんでも下請けに投げすぎだと思う。
トロンが潰されていない現状ではハードウエア以上に同時に組み込みソフトウエアが大事になってくるわけで、半導体事業ではそれらを理解した優秀な人を確保し、ソフトウエアへの投資を十分に行う必要がある。
現状ではハードディスクやCDーROMですらバカ高い状態でとても大容量なUSBメモリやSSDが実用化できるなどと考えている人間はいないだろうけど、ハードディスクでは対応できない製品のマーケット、つまりガラケーに始まり、更にタブレットやスマートフォンが登場することでさらに技術的にメモリの技術は進化して実用化されていくわけだ。
むろん発明から実用化には最低で10年から15年くらいはかかるだろうけど。
「では予定通り国内での工場建設ですすめることにいたしましょう」
「うん、お願い」
もはや企業は大きさよりも意思決定のスピードで生き残るかどうかの時代に入りつつある。
何かが少し売れ出すともっと売れると大規模な設備投資をして成功できるのはごく僅かな期間だけだったのにも関わらず、それを認識しないでいると工場が稼働するころには製品は売れず過剰投資や過剰な在庫に悩むという失敗をしがちだ。
これからは先手を打って商品を開発投入し、過剰生産にならない上限を見極めていくのが重要になっていくだろう。
もっとも工業製品と違い純粋な設計能力や技術力がもろに出る楽器では、令和でもメード・イン・ジャパンの評価は高かった。
そういった日本人好みの”職人芸”が活かせる機械で大量生産すればよいというわけではない産業をもっと伸ばして輸出につなげていくのもいいのではないかと思う。
無論これはゲームハードやゲームソフトでもある程度は言えることだけどな。
何れにせよ働いている従業員には子供が2人どころか3、4人いてもびくともしないぐらい安心して長く働けて、子供に仕事を誇れると同時に子供が親を誇りに思うような環境を作っていくのが大事なのだが、”前”ではそれと正反対の方向に走っていったのだから日本が没落するのも当然だったと思う。
組織の目的達成においては働く者の安定やモチベーションが大きな成功因子であり、70年代までは大きい魚が小さい魚を食べる時代であったかもしれないが、技術の変化で素早い魚がのろまな魚を食べる時代に変化している。
要は働く人間とその家族を大事にしなければ組織は壊れていくということだ。
現状でもその流れは変わらないだろうが、日本の多くの大企業経営者はそれにいつになったら気がつけるだろうか?
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