やはり人の集まる行事は大事だと思う
さて、谷津遊園では夏休みの間に、様々な催し物を行っている。
まず、昨年冬に続いて開催した、賞金付きゲーム大会。
普段はラジコンやミニ四駆のコースになっている、ヘリやセスナの格納庫が、大会の開催場所なのは変わらない。
そして今回も、前回と同様に行ったジュエルス2勝ち抜きトーナメントに加えて、アーケード用LD版リズムマニアックスとダンスエモーションが、参加可能なゲームに追加され、前回より大幅に参加者が増えたので、40台ずつ筐体を用意しての開催となった。
「さあ、みんなゲームの腕は磨いてきたかー」
「おおーーー!」
「じゃあ早速始めよう。
今回もシンプルなトーナメントバトル。
大会のルールも簡単だ。
戦って! 戦って! 戦い抜いて! 最後まで勝ち残った者が優勝者の”キングオブゲーム”になれるぞ!」
「おおー」
さらに大会の様子は、テレビ房総と提携しているテレビ神奈川、テレビ埼玉、テレビ栃木、テレビ群馬などの関東ローカル放送局に加えて、テレビ京都、テレビ三重・岐阜テレビ、テレビ滋賀、テレビ奈良、テレビ和歌山などの、近畿圏のローカル放送局とも提携して放映し、トウキョウベイFMでも放送した。
そしてそれが好評を博したのもあって、次回は奈良ドリームランドでも、ゲーム大会を開催することになった。
ああ、今回も優勝者とのエキビジョンマッチで、北条先輩が優勝者を瞬殺したので一部ではゲームの
「なんだか恥ずかしいですわね」
ため息をつきながらそういう北条先輩に俺は言った。
「北条先輩はそういっているけど、大したものだと思うよ」
「そういわれれば悪い気はしませんが」
そしてお盆期間には夏コミが開催されていた。
今年昭和61年(1986年)は7月までオホーツク海高気圧の勢力が強く、梅雨前線が活発化していたために梅雨が長引いていたが、8月近くになってようやく梅雨明けしその後は猛暑が続いていた。
今回のコミックマーケット30では、参加サークル数は5000、参加者数は40000人と昨年よりも10000人も増えた。
これでも参加希望サークルのすべてが参加できたわけでは無いらしいけどな。
今年はとくに漫画の“コマンダー翼”の人気がさらに加速し、大フィーバーをおこしていて相変わらずサークルや参加者の参加比率は女性のほうが多い。
もっとも最初期は男女比率が1:9といわれていたようだが、さすがにそこまでの偏りはなくなっているが。
Zガンガンのキャラとともになどとともに、マックロデス2のリンカ・レイやシャルティア・ノーマ、マリス・ホリディといった、ヒロインたちのコスプレをするコスプレイヤーも結構多かったようだ。
ゲーム大会もコミケもどちらも無事成功したのは何よりだ。
それとは別に今年は自衛隊の習志野駐屯地夏まつりにも参加してきた。
お化け屋敷、出店、隊員による相撲観戦に加えて、自衛隊の74式戦車や装甲車輌LAVやジープ、大型タンデムローター輸送ヘリコプターCH-47Jチヌークへの体験搭乗、パラシュートの試着体験などもできる。
「チヌークには一回乗ってみたいな」
俺がそういうと乗ってきたのは、明智さんたち怖いもの知らずな面々。
「自分もぜひのりたいです!」
足利さんも乗り気だね。
「私もぜひ乗ってみたいですね」
というわけで斎藤さんや北条先輩と別れて俺たちは大型ヘリの試乗体験をすることに。
「では、これよりみなさんをご案内させていただきます!」
自衛隊の隊員さんは元気で本当に良い方ばかりだな。
「これってこのあたりだとよく飛んでいますよね。
パラシュートの降下訓練しているのもよく見ますし」
「ええ、いざというとき一番最初に現場に到着できるのは、おそらく我々ですからね」
習志野の陸上自衛隊第1空挺団のレンジャー部隊といえば精鋭中の精鋭なんだよな。
実際に、日本の道路事情では有事が発生したとしても、一般の車が邪魔して現場へ急行できない可能性が高いから、レンジャー頼みになる可能性が高い。
そしてチヌークの実物を目の前にすると、ものすごいエンジン音とローターの回転による騒音とダウンウォッシュによる強風で結構きつい。
チヌークは操縦手2名に機上整備員1名の3名に加えて、55名を搭載できる大型輸送ヘリで巡航速度は270㎞/h。
シートを折りたたむと、全長4・9メートル、幅2・15メートル、高さ2・24メートルの高機動車を1両収容できる。
「ヘリコプターってすごい音なんですね」
浅井さんが驚いているな。
「いやこの機体はかなり特殊だと思うよ」
開発はアメリカのパオーイングだが、日本ではライセンスを受けてKAWASAGIが製造していて、輸送ヘリとしては世界のベストセラー&ロングセラーの機種でもあるが、日本での配備が始まったのは、実は今年からで昨年までは一回り小さいKV-107IIが主力だった。
後部のハッチが開くと、そこから歩いて乗り込めるようになる。
自衛隊の輸送ヘリコプターなので、機内は、薄暗くて窓も少ない。
シートは両脇の壁際にあるので、そこへ座っていく。
「では皆さん、しっかりシートベルトを装着してください」
「はい」
離発着時はシートベルトを装着しないといけないが、離陸は非常にソフトで、巡航に移る加速もそこまで強い加速感もない。
巡航飛行中は意外と自由に行動できて コックピットを眺めてもいいし、窓の外を見たりしてもいい。
コクピットには計器やスイッチがものすごい数あって、これらを見ながら操作するのは大変だと正直思う。
まだコンピュータ制御とかが進んでない時代だからしょうがないけどな。
上空から眺める習志野の街並みというのはまたいいものだとも思う。
30分ほどの試乗が終わればチヌークを降りて、部隊対抗フェスティバルなどを見て回り、それが終われば盆踊りが始まる。
「あ、あの、私と一緒に踊ってくれませんか?」
浅井さんがそういって手を差し伸べてきた。
「うん、一緒に踊ろうか」
本格的な太鼓が打ち鳴らされる中で浅井さんは楽しそうに踊っていた。
そして花火がそこらかしこで打ち上げられ始めた。
「きれいですね」
浅井さんが花火を眺めながら言ったので、俺もうなずいた。
「ああ、こういうのはいいよな」
税金の無駄使いだ、けしからんという奴もいるんだろうけど、地域の人たちとの懇親を図ろうとする姿は決して悪くないと思う。
そしてクリスマスみたいに金を馬鹿みたいにかけないと駄目みたいなイベントよりも、中高生の男女が金をかけないで仲良くなれる機会の夏祭りというのは大事なんじゃないかなとも思う。
実際問題としてまだクリスマスは恋人と過ごそうという記事は女性雑誌があおっているだけで、男性側にはあまりそんな感じはないし、バブル景気で金に踊らされることもなければ、ばかばかしく金がかかる恋人のクリスマスというのもなくなりそうな気もするけどな。
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