淡路島はまだ発展途上かな、そして豊島の産廃不法投棄が表ざたになったらしいな。

 さて、次に目指すのは淡路島唯一の遊園地である淡路世界遊園。


 淡路島は瀬戸内海にある島の中で最大の島で伊邪那美様とともに日本を産んだ伊弉諾様が最初に作り出した場所でもあり、天照大神に神々が住む高天原を治めるように権限を委ねた後隠居した場所でもあるといわれ、その隠居生活の場所が伊弉諾神宮だという。


 淡路世界遊園の営業開始は昨年の昭和60年(1985年)で、淡路島と四国の徳島を繋ぐ現状では東洋一の長さを誇る吊り橋の大鳴門橋の開通を祝うイベントに合わせて作られ、淡路島在住の小学生は、ほとんど全員遠足で訪れるという遠足の定番スポットでもあるらしい。


 ちなみに本州側とつながる明石海峡大橋は平成10年(1998年)開通なのでまだ本州側とはつながっていないため、淡路島から本州にわたるにはフェリーしかない。


 大鳴門橋は上下2層式となっており、上部は片側3車線の道路で、下部は将来的に四国新幹線を通すことが出来る構造となっているんだが、明石海峡大橋が道路単独橋で建設されたので淡路島より本州方面への鉄道整備は今のところ予定されておらず、淡路島 - 鳴門間は高速道路扱いのため徒歩および軽車両・原動機付自転車などで淡路島と四国間を行き来することができないので実は結構不便ではあったりするのだがそういっていてもしょうがないので鳴門から高速バスに乗って淡路島にわたって淡路世界遊園へいく。


 ここはテーマパークで童話を再現した童話の守屋凱旋門などの世界的に有名な建築物のミニチュアなどがありそのほかに大観覧車、メリーゴーランド、ゴーカート、ファンタジートレイン、芝すべり、バッテリーカーなどの小さな子供向けのアトラクションもあるが絶叫マシン系はないな。


 もっとも人工芝の丘をソリに乗って滑り降りるという、芝すべりはものすごく単純なアトラクションだが、小さな子供には大人気だったりする。


「ここも子供連れの家族向けにはいい感じだね。

 ジェットコースターも一つぐらいは欲しい気もするけど」


 俺がそういうと北条会長がうなずいた。


「そうですわね。

 もっともメンテナンス費用がさほど掛からないのでこのままでもいいのかもしれませんが」


「確かにそうかもな」


 その次はバスで移動して日本最古の神社といわれる伊弊諾神宮に向かう。


 伊弊諾神宮自体がかなり強力な夫婦円満のパワースポットだが、中でも神宮の中にある「夫婦大楠めおとおおくす」は樹齢900年といわれ、もともとは2つだった根本が結合して1つになった珍しい大樹で、その由来から伊弉諾伊邪那美の夫婦が宿る神木として信仰され、今でも良縁・安産・子宝・子授けなど夫婦円満の祈願成就の信仰がいきていて、かなり強い力を持っているらしい。


 ああ、ちなみに伊邪那美様がいるという黄泉比良坂は島根県松江市東出雲町に別にあり伊邪那美様が単独でまつられている揖夜神社いやじんじゃもそっちにあるんだけどそっちは心霊写真がとれまくる死神そして怨霊としての伊邪那美様の側面が強いらしい。


 そして伊弉諾神宮を中心にして東西南北に由緒ある社が配置されているのはおそらく計算ずくなんだろう。


 真東には伊勢神宮が西には対馬の海神神社があり、夏至には信濃の諏訪大社から出雲大社へ、冬至には熊野那智大社から高千穂神社に太陽が沈みこむようになっているというのはすごいよな。


 また変わったことに伊弉諾神宮の鳥居は綺麗な白色だったりもする。


 淡路島で新鮮なシラス丼を食べて腹ごしらえをしたら船で西の小豆島しょうどしまへ向かった。


 淡路島は兵庫県だが小豆島は香川県に属し、映画化された小説『二十四の瞳』の作者の故郷としても知られ、小豆島をロケ地として映画が撮影されたこともあり映画ファンの聖地にもなっている。


「こういう風に観光地化するのもありか」


 とはいえ小豆島の人口はどんどん減少しているらしいけど。


 小豆島を軽く観光したら、さらに西の豊島てしまに向かった。


 ここはかつて自然に恵まれたその名前の通り「豊かな島」として知られ、香川県では唯一の乳児院である「豊島神愛館」があるのだが、ここでは現在深刻な環境破壊が行われている。


 豊島総合観光開発という業者が国内最大級の産業廃棄物投棄事件を起こしているのだ。


 この豊島開発の実質的経営者は父親の代より豊島に移住して土地を所有していたが、昭和50年(1975年)12月に豊島開発は香川県に対して有害廃棄物処理場建設の申請を行い、翌年昭和51年(1976年)には産業廃棄物満載で各地で入港拒否された高共丸を豊島沖に停泊させて有害産廃の無許可積降しを図るが、県の行政指導で果たせずにいた。


 これに対して豊島の住民はただちに反対運動を開始し、これら反対運動に激昂した経営者は住民を脅したり、豊島観光経営者は県担当者に暴行傷害事件を起こし逮捕された。


 経営者逮捕によって旗色が悪くなった豊島開発は、廃棄物処理場建設の明目を「ミミズ養殖による土壌改良剤化処分業のための汚泥処理」に変更し、昭和53年(1978年)香川県知事は、先の処分場建設差し止め裁判の結論を待たずに、ミミズ養殖による土壌改良剤化処分業のための汚泥処理に限定し処分場の建設を許可する。


 この時知事は「迷える子羊も救う必要がある。事業者は住民の反対にあい、生活に困っている。要件を整えて事業を行えば安全であり、問題はない。それでも反対するのであれば、住民のエゴであり、事業者いじめである。豊島の海は青く空気はきれいだが、住民の心は灰色だ」と述べて、処分場の計画に反対する住民を非難した。


 だが豊島開発は、許可を得た直後より廃タイヤを敷地内に持ち込み野焼きし、昭和55年(1980年)頃からは、廃プラスチックや廃油を持ち込むようになり、それらの埋設や野焼きをするようになり、刺激性の悪臭、騒音、粉塵、野焼きの黒い煤煙等、公害で島の観光業に打撃がすでに起きていた。


 さらに昭和58年(1983年)頃からは、豊島観光は名目のミミズ養殖業をやめ、シュレッダーダスト等、大量の産業廃棄物の不法投棄や野焼きをはじめ公害に対する苦情が激増、マスクが生活必需品に なり魚が売れなくなるなどで住民に明確な被害が出ているのだが、秘密裏に行われたものですらなかった。


 住民は香川県に対して事業者の違法行為を通告し、廃棄物の持ち込み中止と指導監督要請を繰り返したが、香川県は中止命令を出さず、昭和59年(1984年)4月に住民は香川県に対して公開質問状を提出、また香川県は118回の立ち入り検査を実施するも、廃棄物処理ではなく金属回収事業であり違法性はないという見解を示した。


 この時立ち入り検査に来た県職員は豊島開発に対して違法な廃棄物処理を止めるように指導するどころか、それを知りながら逆に「法の抜け穴」を豊島開発に指南していたことが兵庫県警の刑事公判記録に記載されている。


「鷲羽山高原ランドも淡路島も近いし何とかならんかなこれ」


 もっとも恩賜園に対して千葉県がろくに動かなかったように香川県にもあまり期待できないのではあるが。


 ・・・

 その頃冥界の伊邪那美は前田健司を通してこの国に対して強い悪意を持つものの存在を感知した。


「なるほどのう、あの連中から我々に対する強い害意を感じるな。

 道理でこの国の産屋の数も少なくなるはずだ」


 我々というのはむろん夫である伊邪那岐も含めたものである。


「どうしようもないクズどもめ。

 一度思い知らせてやらねばな。

 奴らこそが地獄がふさわしかろう」


 唐突に香川県知事や県職員、豊島総合観光開発の経営者や産廃を運んでいたフェリーの船長、ダンプの運転手などの足元に漆黒の闇を思わせるどこまでも底が見えない穴が空くと、彼等はその穴へと転落しその穴の存在が消える。


「なななんだ、一体どういうことだ、ここはどこだ?」


 彼らが気がつくと女性らしい姿をしているが全身に蛆がたかり、頭・胸・腹・陰部そして両腕と両足に蒼白い蛇をまとった、とても強力な何らかの存在の目の前であった。


「うぎゃー! ば、ば、化物っだ!」


「うむ、我らの社を汚した重罪人どもよ。

 冥界へようこそ」


「な、何だお前は?! こ、ここはどこだ?」


「うむ、私の名は伊邪那美。

 そしてここは正真正銘の黄泉の国よ」


「よ、黄泉の国?」


 そして般若よりも恐ろしい形相になった伊邪那美が言う。


「よくも私の夫の社を汚してくれたな。

 地獄の責め苦を受けてまずは己の所業を悔いるがいいわ!」


 伊邪那美はヒョイッと彼らを地獄へ投げ落とした。


 彼等は廃タイヤや廃プラスチックに廃油かけてを焼く悪臭を放つ黒煙にまかれつつ、環境基準の数十倍から数百倍の水銀、ヒ素、PCB、鉛、ダイオキシンなどが混入した水を延々と飲まされつずけた。


 むろん地獄では自殺も出来ず、意識を失うこともなく、狂うこともできない。


「お、俺が悪かった、も、もう許してくれ!」


「ああ、ダメダメ。

 私や夫に悪意を向けてそんな簡単に許されるわけがないでしょう?

 お前たちは宇宙が終わるまでここで己の所業を悔いながら苦しむのよ」


「そ、そんな」


「まあ、ここは司法取引というやつで手を打ちましょう。

 そのためにあなたがたがやってきたことを全て公表し、証拠となるものをすべて出し、日本にいる貴方達の組織の人間や協力者の名前や場所を洗いざらい全部隠さず公表しなさい。

 白状したやつは地上へ帰らせてやる。

 ああ、嘘をついたら閻魔がそれを知らせるから無駄なことはするなよ?

 あと、地上へ戻りもう一度同じようなことをしたらお前たちの家族も一緒に地獄に突き落とす。

 言わないやつは一番上の地獄へまわしてやるから1兆6653億1250万年ほど苦しみに悶えるがいい。

 ああ、それから県知事と副知事に経営者。

 お前らはだめだ。

 一度地上へ戻してやるが延々と家族そろって地獄で苦しめ」


「わ、わかりました! 全部話します! 証拠も出します!」


「そ、そんな!」


「うむ、素直でよろしい。

 ああ、地上に戻ってもいつでもどこでも我々の目はついて回ると思え。

 たまに足首でもつかめば忘れんだろうがな」


「ひ、ひぃい」


 それにより読買新聞などのマスコミに彼等は地獄から逃げ込み、持参したその資料や証拠とともに供述をおこない、兵庫県警が廃棄物の処理及び清掃に関する法律違反の容疑で豊島開発を強制捜査を開始し、それに対してバックにいた半島系ヤクザが問題をもみ消そうとしたが、彼らも地獄へ落されることになった上に幼女にされて38度線へと送られた。


 香川県の知事副知事たちなどは行政責任として、廃棄物の認定を誤り原因者に対する適切な指導監督を怠ったことを認め、申請人を含めた豊島住民に対して知事から直接謝罪し、その後健康上の問題を理由に辞任し(その後彼らを見た者はいないが)新たな知事が豊島の産業廃棄物処理に乗り出すことになったが、知事副知事らが袖の下として受け取っていた金は産業廃棄物処理のための費用として寄付された。


 また登記された廃棄物の排出事業者にも今回の事件に責任などがある旨が指摘され、各会社は解決金の支払いに応じて処理費用を負担することにもなった。


 ”前”でこの対処に20年以上かかった上に800億にも登る処理費用は国民の税金から出された住民に対しての保証などもなかったが、今回香川県は能力なしと判断され、財政再建団体指定を受けて特別職・職員給与手当の減額、支払遅延、外郭団体、特別会計の整理・合理化、見直しなどの措置を受けることになったのである。

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