ホバークラフトは乗り物として面白いと思うんだがな、徳島の遊園地は競合施設がないのがいいな
さて、岡山の鷲羽山高原ランド近くのホテルでベーコン入りスクランブルエッグにロールパン、サラダにオレンジジュースといったよくあるホテルの朝食を食べ終わったら車で宇野駅へ戻り、岡山県玉野市の宇野港と香川県高松市の高松港の間で運航されている宇高航路のホバークラフト船”とびうお号”で四国へ渡る。
ホバークラフトは50年代にイギリスで開発され(変な技術の実用化はイギリスのお家芸だからな)、60年代に実用化された比較的新しい技術で、厳密にいえば超低空飛行する航空機なのだがほとんど船として扱われるものだ。
上から吸い込んだ大量の空気を艇体の下にある海面に直接吹き込み続けることで海面から浮上し、艇体下部はスカートと呼ばれる合成ゴム製のエアクッション用側壁が四方に垂れ下げられており、吹き込まれた空気を運行上十分な高さで保持するようにしているのだが、このスカートが一種の消耗品であるためメンテナンスコストが高い欠点があったりもする。
そしてほぼ全ての機種では飛行機のように空気を押すことで推進力を得るための船体後方にプロペラを備えそれを操作して移動する。
浮上しているため水面や地面の抵抗を受けずに高速に航行でき、平坦な場所であれば海上でも川上でも湿地帯でも陸上でも使用できるが、実際には沼地以外では凹凸が障害となるために、水上で利用されることが多い。
70年代には夢の乗り物として熊本県の天草航路・伊勢湾・瀬戸内海・別府湾・鹿児島・沖縄・八重山諸島など西日本で多く就役したが大きな騒音や振動による乗り心地の悪さ、燃費が悪くメンテナンスに費用がかかる高い運航コスト、悪天候に弱い、他の船舶と桟橋を共用できず、上陸用スロープなど専用の設備が必要となる、などの短所により次々に廃止され、現状でまだ残っているのは宇高航路と別府湾の大分市および別府市と国東市にある大分空港の間の海上を突っ切るものだけになっている。
もっとも宇高航路は瀬戸大橋の開通とともに廃止されることが決定しているからこれに乗れるのは今だけなのだな。
ホバークラフト船に乗り込んでしばらくしてタラップが船から離れると、ブォオオオオオ!! とプロップ音がこだまし、“ふわっ!”という感じで船体が浮き上る。
「おっ! 発進するみたいだな」
俺がそういうと浅井さんがうなずいた。
「なんかワクワクしますね」
そして轟音と共にかなりの速度でスロープを降りていき、そのまま海上を走り始めたが、ホバークラフトは時速48ノット(およそ90km/h)とかなり早い。
「ジェットフォイル」と呼ばれるウォータージェット推進機によって、海水を吸い込んで船尾から勢いよく噴射し、水中翼で船体を海面上に持ち上げて航行する高速船も最高速度が時速45ノット(約83km/h)なのでかなり早いしジェットフォイルではないが水中翼を持つ高速艇も多客期やホーバー艇のドック入り時の臨時便として、昨年就航していたりするけどな。
通常のフェリーの場合は時速20ノット(40km/h弱)程度なのを考えれば相当に速く速度だけで考えれば夢の乗り物扱いされるのもわかるというものだ。
とはいえ鉄道や自動車に比べればものすごい速さというわけでもないのが微妙なとこではあるんだけど。
ホバークラフトはあっという間に瀬戸内海を横断して、対岸の高松港に近付いた。
専用のスロープを駆け上がりやがて停止してタラップが渡されると客がぞろぞろ降りていく。
「宇高航路のホバークラフトが廃止されたらこの船を安く譲ってもらえないかな。
下手な遊園地のアトラクションよりずっと面白い気がするし遊覧船として使えれば面白そうだけど」
俺がそういうと北条先輩が少し考えこんだ。
「今後日本でほぼ唯一となるのであればホバークラフト船を所持する価値はあるかもしれませんわね」
それから高松から徳島の西麻植電車で向かい、徳島家族遊園地に到着。
もともとは江川遊園地と呼ばれていた場所で、戦前の江川遊園地はボート以外のアトラクションはなかったが、江川湧水から水を取り込んだ池と木々や草花が作り出す美しい景観を楽しむ場所であったのだが、昭和44年(1969年)に開催された四国博覧会を機に名称が吉野川遊園地に変更され、大型遊園地としてアトラクション施設が設置されていき、その後徳島家族遊園地に名前が変わった。
大小二つの観覧車のうち大きいほうは現状では四国最大で、ジェットコースター、ゴーカート、サイクルモノレール、メリーゴーランド、急流すべりに釣り堀やボート乗り場などがあって小さな子供のいる家族がのんびり過ごすのにはいい遊園地だろう。
「ここも、もとは古い遊園地だったみたいだけど、地元の人に親しまれているみたいなんだよな」
実際にちびっこを連れた若い家族の姿が結構見え、屋外のヒーローショーが行われている場所では仮面バイカーショーがやっていてちびっ子たちは大はしゃぎしている。
売店ではコイのえさである「ふ」が売っていてえさやりを楽しんでいるちびっこもいる。
「そのようですわね。
こういった施設はなかなか強いと思いますわ」
何より四国はこういった遊園地に関しての競合施設が少ない。
”前”では香川に大型テーマパークができたがろくに集客できずにいったんつぶれているしな。
遊園地をほどほどに見て楽しんだら電車で鳴門駅に向かい下車してシャトルバスで温泉ホテルへ向かう。
ここの名物は世界一の急流とも言われる鳴門海峡の激しい潮流にもまれ、身が引き締まった一級品の真鯛である「鳴門鯛」だ。
朝獲れの新鮮な鯛の姿つくりの刺身に、鯛めしやタイの天ぷら、焼物の二種盛、鳴門鯛の釜飯に吸物と鯛ずくしはいいものだった。
部屋や大浴場からの鳴門海峡や大鳴門橋を見下ろす眺めもとても良いのもよかったな。
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