前のエピソード――せっかくだし慰安旅行の移動手段としてブルートレインにのってみようか

　さて、今回の慰安旅行ではまず広島まで寝台特急のブルートレインを使用して移動しようという話を出して概ねみんなの同意を得たところで最上さんが手を上げた。

「部長、どうせ寝台特急をつかうなら九州まで足を延ばして、別府や熊本の遊園地や温泉も見ておいたほうがいいんじゃないでしょうか？」

　最上さんの提案に俺は首を傾げた。

「え、九州は学校の修学旅行で11月に行くけど？」

　俺がそういうと最上さんが首を振って言った。

「でも遊園地に修学旅行で行くわけではないですよね？」

「え、あ、なるほど、それもそうか。

　北条先輩、実際に去年の修学旅行ではどうだったんだろう？」

　最上さんがそう言うので俺は北条先輩に聞いてみた。

「確かに熊本でも大分の別府でも遊園地には立ち寄りませんでしたわね。

　修学旅行では城や寺社仏閣を見て回るのが主なスケジュールですし」

「なるほど、確かに修学旅行で奈良に行っても遊園地にはいかないもんな」

　とはいえ長崎の家テンボスや福岡の宇宙ワールドなどのテーマパークは就学旅行の立ち寄り先として定番だったような気もするけど、首都圏の修学旅行で舞浜のあれに行っても遊園地には行かないのと同じようなものか。

「だとしたら確かにブルートレインで最寄り駅の大牟田駅まで行って、遊園地の状況とかを見ておくほうがいいかもしれないな」

　そして最上さんが苦笑しながら言った。

「それに朝６時に広島駅に降りるっていうのは女の子には正直きついですよ」

「まあ、確かにそれもそうか」

　確かに目が覚めた後、外へ出る準備には男よりは女の子のほうがいろいろ大変だろうしな。

「そしたら寝台特急のはやぶさのA寝台1人用個室寝台「シングルデラックス」のある車両二つを借り切ったほうがいいか」

　最悪俺はＢ寝台でもいいかと思ったんだが、Ωを非難するようなテレビ放送をしたことを考えると知らない人間と同じ寝台に寝るのはちと怖いし、ボディガードの人たちも大変だろうしな。

「となると東京出発は16時45分かな。

　最初の予定よりは早いけど熊本到着は10時半ごろのはずだから、起きてからみんなゆっくりシャワーを浴びて食堂車で朝ご飯を食べてくつろいでから大牟田駅前でお昼ご飯を食べてから遊園地に行く感じかな」

　俺がそういうと斎藤さんがうなずいた。

「確かにそのほうがずっといいわね」

　寝台特急「はやぶさ」は15両編成で西鹿児島までいくが、電源車寄りが基本編成で付属編成は熊本駅で切り離される。

　そして、1人用個室A寝台「シングルデラックス」や食堂車やロビーカーは付属編成に連結されていたからその先はＢ寝台だけになるんだが、付属編成の車両は北斗星にやや近くなっていて個室寝台が増えているようだ。

　これは客数の減少を単価の上昇で補う形として行われていると思うのだけど、プラザ合意がなかったために海外旅行が安くなっていないので海外旅行が伸び悩んでいて本来よりは列車の利用者は増えているはずなんだけど新幹線の利用者のほうが多いんだろうな。

「んじゃ、北条先輩。

そういう感じで寝台特急の予約の手配をお願いできるかな」

　俺がそういうと北条先輩がうなずいた。

「わかりましたわ」

　そして昨年と同様に旅行に行く時に必要なものを、安いものはＥＢＳで、高いものは船橋ららぽーとで買いそろえて当日までは宿題を消化していった。

「夏休みの宿題を早めに終わらせれば安心して旅行に出かけられるしな」

　でまあ、去年と同様今年もららぽーとで水着を買うわけだが、今年の人気はワンピースタイプのハイレグで露出度が高いモノキニやビキニで箔プリントなどの光る素材を使用したメタリックな水着や、アニマルプリントが今年の流行らしいが去年よりさらに増えた女子たちがワイワイいいながら長い時間をかけて水着を選ぶのに付き合わされた俺がめちゃくちゃ疲れたのは言うまでもない。