トロンプロジェクトは好調のようだな
さて、”前”であれば今年の1月に13000円台だった平均株価が7月には18000円台まで上がるのだが、実際はそこまで上がらず現在14000円代前半を行ったり来たりしている状態だ。
その代わり為替が急激な円高に振れることもなくて1ドルは200円前後を行ったり来たりしているけど。
まあ、円高になろうが円安になろうが、日本国内でモノを売り買いする分にはまったく関係がないのだが、”前”では輸出が急激に落ち込んだことを無理やり内需でカバーしようとして公定歩合を引き下げ、株価などを無理やり釣り上げた結果バブルが発生し、それが弾けたときから日本の経済成長は止まった。
急激な円高を招いたプラザ合意こそが、日本経済崩壊の引き金になったのは間違いないと思う。
そしてプラザ合意での受益者は韓国と中国で、日本が半導体のシェアを大幅に落としてもアメリカのシェアが増えるわけではなく、代わりに韓国と中国が台頭するだけで、アメリカがまだコントロール可能な日本と違って、70年代末から経済改革が始まった中国は、六四天安門事件後に日本が人件費の安さに目をつけたとこともあり中国を手助けして工場などを建設したこともあって、90年代にはアメリカなども中国へ進出し積極的な投資を行った。
そして2010年代にはアメリカを超える経済大国と言っていい状況になった。
まあそもそもの人口が違いすぎるから最終的にはそうなるのも当然ではあるんだが。
それを考えるとそもそもプラザ合意がなければ、円高による生産拠点の韓国や中国への移転と技術提供の必要もなかっただろう。
結局アメリカは日本を叩けば自分たちが世界一に戻れると思ったが、結局の所は日本を叩いたところで新たなライバルが出てくるだけであることを理解していなかったわけだ。
まあその日本はアメリカ経済のだめなところを取り入れていって、その後失われた40年から立ち直ることもできなかったわけだが、その理由の一つにはトロンプロジェクトの挫折によるプログラマ育成の大きな遅れがあったと思う。
アメリカは製造業で復権することはなかったが、IT産業で覇権を一時握ったからな。
しかし、日本は一部の電気科や情報処理科に進んだ者や個人的なパソコンマニア以外のパソコンの操作そのものの学習の機会がなく、その結果IT関連で10年以上遅れたこともあってアメリカや韓国の後塵を拝することになった。
日本国内で製造業が復活することもなかったうえにIT産業も対して振るわず、バブル期に社員を大量採用したことでその後に就職氷河期世代を大量に生み出し、派遣法改正で非正規が大幅に増えた結果として結婚できない男女を大量に生み出した。
その結果、令和10年(2029年)には社会保障は切り捨てられていたからな。
「そう言えば北条先輩、トロンとその搭載パソコンを学校の教育用パソコンにする計画の方はどうなっているのかな?」
俺がそうきくと北条先輩が答えてくれた。
「32ビットパソコンに搭載するTRONチップとOSであるBTRON2及びメインフレーム用のCTRONでのNacintoshのNacOSのようなGUIOSを搭載した製品化は終了したようですわね」
「ああ、GUIOSはマックロソフトも発売はしていたからね。
まあ現状のパソコンの性能だとまともに動かなくてほとんど話題になってないけど。
後は協賛メーカーパソコンへチップやOSを載せて学校へ納入する段階なのかな?」
「そうですわね、まずは来年度にテストケースとして全国の情報処理科や電気科などパソコンのプログラムを組む授業のある学校へと納入して、その後日本の小学校中学校高校への教育用パソコンを導入することになりますわね」
「ん、これでプログラマの育成がはかどれば言うことなしだね」
俺がそう言うと北条先輩は小首をかしげながら言った。
「パソコンが会社でも家庭でも普通に使われるようになるということに本当に成るのでしょうか?
私にはとてもそうは思えませんが」
「まあ今はそうだろうけど10年もしたら世界的にパソコンも携帯電話もドンドン一般に普及していくはずだよ。
だからこそ今のうちに主要なところは押さえておきたいんだよね」
「まあ、そうなのかもしれませんわね」
まあこの頃は書類も手書き、製図も手書き、帳簿付けも手書きが普通だけど、書類はワープロソフト、製図はCADソフト、帳簿等は表計算ソフトを使うのが当たり前になっていくんだよな。
テレビゲームに慣れ親しんでいる世代はパソコンの操作もそんなに苦とはしないと思うけど、やはり教育で触れられる機会があると無いでは大違いだろう。
それでも上の人間が変わるわけではないので、当面は”履歴書は手書きでないとならない”とかは変わらないかもしれないけどな。
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