そろそろ市議会や県議会の議員の協力者を求めていこうか

 さて、俺が1年前に想定していたよりもずっとゲーム制作による利益が上がっているのは良いことだ。


 だが、ゲーム制作で利益を得ることはただの手段の一つ。


 そして、俺の目的はあくまでも日本の悲惨な将来をかえることであって、俺個人の人生が変わっても全体としての日本の未来が変化しないのではなんの意味もない。


 もっとも、日本航空123便墜落事故が起きなかったり、プラザ合意が締結されなかったり、トロンの保護に成功したり、やわらか銀行や京都陶器のトップが逮捕されたり、薬害エイズが早々に表面化したりといろいろ大きく変わっている部分もあり、特にプラザ合意の締結がないことで円高不況と工場の国外転移が起きず、土地バブル、株バブルも起きていないのはかなり良いことだとは思う。


 ただ、バブル期は経済が低迷しているわけでもないのに合計特殊出生数も出生数も低下しているのを考えるとそれだけでどうにかなると考えるのも甘いのだろう。


 命のゆりかごを全国展開した場合は最大で年間で2万件程度のマッチング潜在需要があるようだが、それでも全然足らない。


 未成年者でない妊娠中絶の件数は現状で年間40万件ほどあるのでそれを全部やめさせて新生児として乳児院で預かれればまた話は別だが、実際にはそれだけの乳児を預かれるかというとそれもまた厳しいだろう。


 しかし、中絶に至るケースの多くは、妊娠したものの社会的なバックアップを得られず、子供を産み育てる事ができないと中絶に至るケースが多いらしい。


 逆にいえば社会的なバックアップがあり、子供を産み育てる事ができるのであれば中絶ではなく出産を選ぶケースも多いのだろうか。


  実際に菊池昇さんという石巻の産婦人科の医師は70年代に赤ちゃんあっせん事件と呼ばれる事件を起こしている。


 これは中絶手術を求める女性を説得して思いとどまらせる一方、地元紙に養親を求める広告を掲載し、生まれた赤ちゃんを子宝に恵まれない夫婦に無報酬であっせんするなどしたが、当時は現在の特別養子縁組制度に相当する法律が日本には無かったため、その際にはやむを得ず偽の出生証明書を作成して引き取り手の実子とし、実親の戸籍に出生の記載が残らないよう、また養子であるとの記載が戸籍に残らないよう、そして養親が実子のように養子を養育できるように配慮したためだったのだがこれは違法な行為であった。


 ”前”では1982年9月に法務省の法制審議会が制度の見直しを開始、1987年9月に養子を戸籍に実子と同様に記載するよう配慮した特別養子縁組制度の法案が可決して、そういったことは問題なくなったのだが。


 そろそろフランスにおける事実婚の際の民事連帯契約のような結婚より締結も解消も容易で、遺産相続に関しては結婚ではないので相手の両親が死んだときなどには当然遺産はもらえないが、納税や手当の受給などは、結婚したカップルと同様の「世帯」として扱われる条例を取り入れられる市を作っていってもいいと思うし、こういったフランスのやり方を見習い、まずは同調してもらえる人間に市議会の議席をとってもらい政治的な発言権をとったり、市長となって市の条例などで、事実婚でも結婚と同じ扱いのフランスを見習ったやり方をしていくようにするべきだろう。


 まあ”夕ぐれ族”前のような愛人バンクで子供のいるシングルマザーを集めて職と保育施設と住居を提供して行くという方法もあることはあるけどな……。


 そもそも将来の少子化状況では信じがたいが、昔は若者が増えすぎる問題をどう解決するかが政治上の難関課題だったしそれは日本も例外ではなく、日本の人口が昭和初期には幕末の3倍にまで膨れ上がり、人口過剰は重大な社会問題となっており、そのペースで人口増加が続いたままでは20世紀末に人口は2億5000万になると考えられていたが、日本政府は多産を奨励し産児制限運動を弾圧して、人口過剰の解決を名目に日本国外への移民政策や対外拡張政策を推進した。だが、太平洋戦争の敗北で、若年男性人口が激減し海外への領土膨張もできなくなったことで、一転して人口抑制政策を採り優生保護法による人工妊娠中絶の普及もあって、出生率は急激に低下したわけだ。


 そして、そこそこのところで出生率低下が落ち着けばよかったわけだが、実際にはそんな簡単な問題でもなかった。


 まあ、あれだな、”前”の日本政府は少子化対策のいかんもあって、内需喚起のため金曜日を早上がりさせたり、祝日休みを月曜日にして連休を増やしていたが、早上がり日や休日が増えたところで金がなければ消費が増えるわけがないということを役人がわかっていなかったようだし。


 とはいえ小説版”インデペンデンスダーイ”では東京の直上に超巨大円盤型UFOが出現しても会社が出勤を強制したのでサラリーマンはみんな普通に出勤して光線攻撃をまともに受けたので被害が世界で一番大きかったなんてネタが有ったが、大雪や台風で被害が出ても普通に出勤させようとして実際それに応えようとする社会だったりするので実際あんまり笑えない。


 そんな事を考えていたら北条先輩から声をかけられた。


「船橋市議会議員の方がお話したいそうです」


「市議会議員?」


「ええ、テレビ房総を見てぜひ会いたいと思っていたとのことですわね」


「なるほど、じゃあ一回あってみようか」


 で、実際にあってみたのだが議員としても結構若い人だった、というかたまに駅前でトラメガを使ってビラ配りや演説をしている人だった。


「はじめまして。

 私は乃木実のぎみのるといいます。

 無所属で船橋市議会議員をやっています」


「はじめまして、ライジングの代表取締役の前田健二です」


「この度は機会を下さりありがとうございます」


「いえ、ところでお話というのは具体的にはどのような話でしょうか」


「はい、私は生まれも育ちも船橋ですが、住みやすい街作りをしていきたいと思っています。

 どうかそれにご協力いただけないかと」


「協力ですか?

 無論それ自体はやぶさかではないですが具体的なはどのようなことを?」


「そうですね。

 例えば京葉道路や木下街道周辺の騒音振動や大気汚染問題の解決のために過積載やディーゼルの排ガスに対しての規制を行うとか、国鉄施設の駅のバリアフリー推進とか、野良犬や野良猫に対しての推進とか、公的な保育園や住宅を増やしたりとかですね」


「なるほど、たしかに現状ではダンプカーの過積載が横行してますからね。

 30トン近い過積載をしていることも珍しくないとか」


「ええ、それでは当然道路やその周辺への影響も大きく出るわけですし、そういったことは改めていくべきだと思います」


「僕も小さい頃は喘息で大変でしたからね。

 そういった意見にはとても賛成できます。

 しかし、僕個人が賛成しても他の社員も賛成できなければ協力は難しい。

 協力する事でお互いに明確なメリットがなくては」


「そうですね。

 具体的に言えば住みやすい街にすることで若者を増やしていかなくては、遊園地やゲーム会社の経営は苦しくなっていくのではないかと思います。

 実際に出生数は昭和50年(1975年)以降は200万人台を割り込んで減少しており昭和59年(1984年)年には149万人とを割り込んでいます。

 日本全国だけでなく首都圏でも同様ですが当然学校へ入学する学生の人数も減っているということです」


「このままだと100万人を割り込むのもそう遠くはないでしょうね」


「はい、とは言え日本全体をなんとかしようというのは現実的ではありません。

 しかし船橋という街を良くすれば若い世代で住みたいという人も増えるのではないでしょうか」


「なるほど、それももっともですね。

 そうすれば谷津遊園なその来園者が大きく減る可能性は少なくなると」


「はい、そのとおりです」


 実際、もともと戦前には習志野や鎌ヶ谷には陸軍の基地がありその近郊都市として、兵隊・軍属相手の産業が発達したが、太平洋戦争でも空襲などの戦災を免れた上に物資の集散地だったことから、闇市が隆盛を極め、「日本の上海」という異名をつけられたこともあるくらいで、駅前にはバラックが結構残っていたりもする。


 しかし”前”でも船橋市は東京のベッドタウンとして人口が増加し面積はさほど広いわけではないが人口は多く、15歳未満の年少人口も減っていないはずだ。


 これは新婚や子育て世代が移住してきていた事が大きいといわれていた。


 通勤にもショッピングにも便利で、国鉄(後のNR)や私鉄が東西南北の方向に走っていて、駅前の商店街以外にもスーパーやデパート、ララパオートなどがあるし、遊べる場所としては谷津遊園に舞浜のアレにも最短で約20分という近さ。


 市立の医療センターや総合病院があることで、医療設備も充実しているし、市立船橋というスポーツで全国的に有名な学校もある。


 そして公団の団地や市営住宅が多いということもあるだろう。


 とは言え子育て世代と子供にとって住みやすい街づくりのモデルをきっちり作り上げるのは大事だと思う。


「学校経営をする上でも子供が減るのは困りますわね。

 それも50万人以上減るようではとても困りますわ」


 北条先輩的にも自分が理事長になる頃には学校経営がやばい状況になりかねないというのがわかったみたいだな。


「わかりました。

 僕たちで協力できることはしていきましょう。

 とりあえずは活動資金で2千万ほどあればいいでしょうか?」


「それだけあれば駅前などでの広報活動もはかどりますね」


「では、お互いにこれからも良い関係で行けるようにしていきましょう」


「ええ、よろしくおねがいします」


 まあ、これをテストケースとして将来的には習志野市や千葉市、夕張市などや千葉県や北海道などの地方自治体から改革を進められればいいのだけどな。

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