なんかえらいことがバラされたけど芸能界の闇が多少ははれたのかな

 さて、マックロデス2の先輩人気アイドル役の歌パートには岡畑有希子さんが無事選ばれた。


「ギャラは高いですがポスト松本聖子と呼ばれるアイドルが歌を吹き込むとなれば高視聴率は間違いないですわね」


 北条先輩がウキウキとそう言うので俺は頷いた。


「ああ、多分な」


 ちなみに浅井さんは歌も声も両方当ててるよ。


 ただ、岡畑有希子さんに関して言えばすでに精神的に危険な兆候も見えている。


 おそらく彼女は名古屋出身であることで、東京や神奈川や兵庫・大坂などの都心出身者ほどには世間の流行や芸能界という世界の空気を感じとれる鋭敏な感覚はなく、だからといって東北や北海道・中国・四国といった地方出身者がそういった地域に対して持つ反骨心もなく、良く言えばおおらか、悪く言えば空気が読めないおっとりとした真面目な優等生で、そういう意味では尾張出身の織田信長が足利義昭を必死に盛り立てようとして、潰れていってしまったことを思い起こさせる。


 昨年の昭和60年(1985年)、高校三年生の岡畑有希子さんは北海道に修学旅行した際には「1人でいると気が狂いそうになるくらい情緒不安定の私にとって癒しになります」と書いたとされる。


 さらに、12月22日(日)放送に出演したスーパージョッキで、歌の途中で急に笑い出した岡畑有希子さんは甜菜たけしさんに「さっき笑ってましたけど、あれ、どうしたんですか?」と聞かれて「なんか声が聞こえたんです」と答え、「なんか声が聞こえた。“オマエは神だ”かなんか聞こえたんですか?」といってから「声が聞こえて、太鼓の音がきたら、包丁もって踊っちゃいますからね、気をつけて」といっていたようなので、すでに統合失調症がかなり重症化している可能性が高い。


 この時歌っていた『Love Fire』がかなり歌詞的にエロ路線であったのもそれに輪をかけていそうなのだが。


 さらに芸能界デビューに関して母親が親戚からの批判を一身に受け、それが理由で離婚も決まっており、ポスト松本聖子と言うにはオリコンチャートがパットしないというのが実情でもあった。


 ただ、だからといって俺がなんとか出来るかというとそれもまた難しいんだよな。


「とりあえずは浅井さんと一緒にいるときは岡畑有希子さんもガードマンにちゃんと見てもらうようにはしておかないとな」


「そのあたりはあちらの事務所がやって入るとは思いますけどね」


「まああっちは、天下のダークサンミュージックだしな」


 秋すぎには顔付きがかなり変っていて正直に言えばだいぶ老け顔になってたし、彼女の奇妙な言動はもうすでに業界では広く知られていた可能性もある。


 まだ、おかしな言動のおバカキャラとか天然キャラというキャラ付けはなかった時代で、精神病などと言えば精神病院に隔離される時代でもあれば、彼女の言動をマネージャーなどは注意しているんだろうけど、おそらく逆効果な気がするのだが。


・・・・


 その頃浅井久子はシャルティア・ノーマ役の岡畑有希子、島津紗栄子などと打ち合わせをしていた。


 なお島津紗栄子はZガンガンのフィフス・ムラサメやデストロイペアのユーリなどの声を当てている人気の声優である。


「人気の皆さんと一緒に仕事をさせていただけるなんて光栄です」


 浅井がそう言うが二人は苦笑する。


「……人気アイドルと言っても実際はそんなに良いものでもないですよ。

 やりたくなくても水着の撮影会のモデルをやらされたりしますし」


 岡畑がそう言うと島津も頷いた。


「そうですね、私も去年はいい役が取れましたけど今年も取れるとは限らなかったですし、このアニメに出れてよかったですよ」


 それを見てイライラしているのは岡畑のマネージャー。


「ちっ、また変なことを言っているんじゃないだろうな。

 ただでさえ今はニャンニャンクラブに人気を持っていかれているって言うのに」


 実際この頃のオリコンはニャンニャンクラブが独占していて、83年頃に大ヒットした正統派路線アイドルは最早古いスタイルト世間では認識されており、そのスタイルを引き継ぐ正統派アイドルは歌がうまくても売れず、女優やモデル業を軸として活動するか、テレビのバラエティ・アイドルとして生き残りを図るかになっていき、髪型も活発さを示すポニーテールやショートカットが多くなっていく。


「一体俺たちがどれだけ金をかけたと思っているんだ。

 水着撮影や肉体接待もさせてようやくドラマに出られたというのに。

 まあ、このアニメも金にはなるからいいが、どうせみるのはビューキな連中だろうに。

 彼奴等も事務所へ連れて行って”はなし”をするか」


 この頃アニメなど見るものは”オタク”ではなく”ビューキ”と呼ばれていたのである。


 そして60年代から80年代前半は肉体接待はごく当たり前に行われており2000年代には芸能事務所の取締役が逮捕される例も何件も出てきていた。


 そして3人のもとへ近づこうとしたときにがっと彼の両足首を何者かが掴んだ。


「な、なんだ?」


 その両手は地面の下から伸びてきてものすごい力で彼等を地面の下へ引きずり込んでいった。


「な、なんなんだ、これは? た、助けてくれ!」


 だがその声は誰にも届くこともなく彼等はそのまま冥界まで引きずり込まれたのだ。


「うむ、女を食い物にする重罪人よ。

 地獄の日帰りツアーへようこそ」


「こ、ここは?」


「正真正銘のあの世の冥界よ」


「め、冥界?」


 そして般若よりも恐ろしい形相になった伊邪那美が言う。


「よくも私の眼をかけたもの計画の邪魔をしてようとしてくれたな。

 24時間、地獄の責め苦を受けてまずは己の所業を悔いるがいいわ!」


 伊邪那美はヒョイッと彼等を地獄へ投げ落とした。


 彼は地獄で男色趣味の亡者に24時間陵辱されつづけた。


 むろん地獄では肛門がさけようと、窒息しようと、死ぬこともできず、意識を失うこともなく、狂うこともできない。


「も、もういっそ、殺してくれ」


「ああ、ダメダメ、本当は宇宙が終わるまでここで己の所業を悔いながら苦しむのよ」


「も、もう二度としません、お願いします、許してください」


「ならば、まあ、ここは司法取引というやつで手を打ちましょう。

 そのためにあなたがたがやってきたことを全て洗いざらい白状しなさい、仲間がいるのならそいつらの名前もすべてだ。

 白状したら地上へ帰らせてやるが、嘘をついたら閻魔がそれを知らせるから無駄なことはするなよ?

 あと、地上へ戻りもう一度同じようなことをしたらお前たちの家族も一緒に地獄に突き落として永遠に同じ責め苦を味わわせてやる。

 言わないやつは一番上の地獄へまわしてやるから1兆6653億1250万年ほど苦しみに悶えるがいい」


「わ、わかりました! 全部話します! 証拠も出します!」


「うむ、素直でよろしい。

 ああ、地上に戻ってもいつでもどこでも我々の目はついて回ると思え。

 たまに足首でもつかめば忘れんだろうがな」


「ひ、ひぃい」


 それにより彼の所属する芸能事務所では経営者がオーディション合格の代わりにわいせつ行為を強要したり、プロデューサーがタレントに対して肉体接待を交換条件に出演契約や配役を交渉したり、テレビ局や映画制作会社、広告代理店の関係者に肉体接待を条件に、音楽番組で賞を取らせていたり、タレントを無理やり水着の撮影会をさせたり、ナイトクラブでのコンパニオンや、社長の友人達が開催するパーティーで下着や裸になり踊らされたりしたことがわかり、それに文句を言うと「おめえみてえなクソ女に仕事を取ってきたのは誰だと思ってんだ、調子に乗んな」と恫喝したり、頭を叩かれたり髪の毛を引っ張られたり、胸ぐらを掴まれたり、しまいには契約の解除をするには莫大な違約金がかかると様々な言葉で脅し、場合によっては麻薬漬けにしていたりしていたこともわかった。


 なおかつ芸能事務所の多くが西では周防組、東では住難組などヤクザのフロント企業であることもわかった。


 テレビ局や広告代理店、ヤクザ等などがその件をもみ消そうと弁護士や警察官、テレビ局、新聞社や雑誌出版者に依頼したが、それらの者たちなども地獄へ落とされ、同じ責め苦を受けた上で、更にかわいいが無力な幼女に肉体を置き換えられて、朝鮮半島の38度線の兵士の前に素っ裸で投げ出されて1ヶ月ほど極めて悲惨な目にあわされことで、姿を戻された彼等もまたも今までやったきたことを全て白状した。


 なお在日朝鮮人は一ヶ月立っても姿を戻されず、死んでも地面に埋められて冥界へ戻されて、また別の幼女に姿を変えられて38度線に送られ続ける生き地獄となる。


 それとともに政治家、官僚、財界のお菓子メーカーのロッチ、お笑いの吉崎興行などにも飛び火し、スイートエンジェルというデートクラブで、子役の小学生からアイドルやモデルの中学生・高校生・大学生までを売春させており、現役政治家や元大臣、元警察官僚などを含む政界、官界、財界などの著名な人間3000名以上の載った顧客リストが実名がさらされて、政治家は辞職に追い込まれ、官僚は懲戒免職、そして彼等は昨年法律が変わっていたことで懲役100年の刑に処せられることになり、ヤクザのフロント企業は公共施設から締出され、高蔵健のような映画俳優や大空ひばりのような有名な演歌歌手などもが、ヤクザとのつながりがあったことをテレビで謝罪することになった。


 そしてそれが致命傷となってダークサンミュージックやシャイニングプロダクションには非難が殺到し、スポンサーからの意向もあって、テレビドラマや映画などのキャンセルが相次ぎ経営危機となっていくのであった。


 また広告業界は外国と同様に「一業種一社制」とされて、1つの広告代理店が同時に2つ以上の同業種他社の広告を担当出来ない制度に変わった。


 これによって雷通や博方堂のテレビ広告などへの影響力は更に大きく削がれたのである。


・・・


「なんか偉いことになったな。

 北条先輩、ダークサンミュージックやシャイニングプロダクションのアイドルやアーティストが失業しそうなら、まともなマネージャーや営業なんかと一緒に俺たちのレコード会社に移籍を進めてもらえないかな?」


「わかりました。

 他所よりも先に集めてしまいましょう」


 まあ、これで最悪は岡畑由紀子さんには休養してもらい、別の人に歌を当ててもらうことになるかもしれないけど、それでいいんじゃないかなとも思う。


 それにしても芸能界は予想以上にひどい場所だったんだな。

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