住居費用の高騰はなんとか防ぎたい所だよな
さて”前”でバブルが発生した結果として生活が厳しくなったのは住居費の高騰というのもある。
昭和30年代のサラリーマン年収が50万で家賃が公営住宅や社宅なら3DK、民間なら1Kで月3000円前後。
昭和40年代のサラリーマン年収が100万で家賃が公営住宅や社宅なら3DK、民間なら1Kで月7000円前後。
昭和50年代のサラリーマン年収が300万で家賃が公営住宅や社宅なら3DK、民間なら1Kで月1万円を超える。
ここまでは年収に比べて家賃の割合はそこまで高くなかった。
しかし、昭和60年から平成のバブル期にサラリーマン年収が400万程度になったが家賃は急激に値上がりして3LDK、民間なら1LDKが最低でも10万円、古い風呂なしトイレ共用とかでも3万とかになった。
そのうえ賃貸住宅を借りるときは敷金、礼金、仲介手数料、前家賃とおよそ半年分の家賃を用意しなければならず住居費用の負担が急激に大きくなったんだ。
しかし給料はさほど上がるわけではないのだから家賃などに掛かる費用の負担が当然でかくなり、ひどい場合には年収の半分が住宅費用とかだったりする。
バブル時にはおしゃれな家に住むことがもてはやされたため、安いが古いアパートなどは人が入らずどんどん潰れ、高いが新しいアパートばかりになったのもあったし、一度上がった建築費用やアパートローンを30年ローンで返すような場合は当然ローンの支払のために家賃を簡単に下げられないから土地の値段が下がっても賃貸住宅の家賃はほぼ下がらなかったりする。
そして日本では公営住宅の割合が諸外国などと比べればとても低く、それを補っていたのは社宅だったが、バブル崩壊後社宅はどんどん売り払われていった。
その結果、安く借りられる家というのがなくなり、住宅費や学費の高騰等もあって、若い人間が親元から離れずにそのまま同居したり、結婚できるような経済的な余裕もなく未婚率が上がるのは当然でもあった。
日本は景気が低迷するとそのカンフル剤の役割を住宅販売で補ってきた。
それを端的に表しているのが昭和40年代の日本列島改造ブームやバブル景気であったが、年少人口減少の一途をたどる日本では当然余剰物件が必ず出るはずだが、それらに対しての対策を政府は全く行わなかったため”前”の日本は空き家だらけになっていったのだ。
これはひとえに日本政府が家を「造る事」「売らせること」ばかりに重点を置いてきたことの弊害で、「安価で安定した住居の確保」「老朽化した場合の処理」を考えずに問題を先送りしてきた結果でもあった。
空き家や空き室はたくさんあるが家賃はちっとも安くならないという不思議な状況はそうやって生まれたわけだが、そんな状況であれば余計に未来に希望など持てるわけがないよな。
もっとも86年現在では土地の馬鹿みたいな値上がりなどもなく家賃の高騰や投資目的の新築物件の急増も起こっていないから状況としてはまだましだし、俺のグループ会社の社員に対しては相場の半分の家賃で社宅や寮を使えるからそこまで生活はきつくはなっていないと思うが。
「北条先輩。
場所が微妙で設備が古い家とかを買って、ある程度設備は新しくして、20代前半の若い夫婦とかを優先してなるべく安く貸し出ししたりするのはどうだろう。
もちろん儲けは出る程度にだけど」
この時代は船橋あたりには、まだトイレがボットン便所の和式、ガスがプロパンガス、台所には給湯器がなく、風呂にはシャワーも鏡もなく、水をためてからガスの風呂釜でお湯を沸かす、エアコンも付いていないような平屋のトタンの屋根や壁の借家や風呂無しで和式のトイレと狭い畳の1DKアパートなどもまだ結構残ってる。
「なるほど、ある程度はそれで儲けも出せるかもしれませんわね」
「まあ、誰も入っていなくてあいている場所ならだけどね」
そういう点ではアパートなどはかなり面倒なので、やはり空きがある古い一軒家の借家を借り上げていくのがいいんだろう。
とりあえず俺の地元を若い人が住みやすい街にしていくべきだろうな。
本当は市営住宅をもっと増やすべきだと思うんだけど。
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