無事浅井さんがアニメの声優になれそうで良かったぜ
さてアニメの声優のオーディションは放送の2~3ヶ月前には行われる。
そしてアニメの場合、番組改変期がだいたい4月、7月、10月、1月頃にあるのでオーディションもその時期に行われることが多い。
とは言え、人気声優の予定を押さえる場合には1年以上前にオーディションをして決めて、スケジュールを押さえてしまう場合もあるが、普通は放送の2~3ヶ月前にオーディションが集中し、放送の3ヶ月から1ヶ月前には声の収録をしないといけない。
で、オーディションは製作者が指名する場合もあるが、それ以外だと制作スタジオの音響監督がギャラの提示をしつつ声優事務所へオーディション開催の通知をする。
そして事務所が「このギャラでこういう役ならこの子を出してみようか」と所属している声優に声をかけるので、1つの役で少ないと1人多くても3人くらいしか事務所の中からオーディションは受けられない。
なので大手の事務所に入ればたくさんの仕事が事務所には入ってくるが、一人あたりに回される仕事の量というのは平均したらあまり多くはなくて中堅事務所と変わらないことが多く、一部の売れっ子だけが過密スケジュールで他の声優はオーディションに落ちてスケジュールはガラガラな場合も多い。
またオーディションに受かった場合、製作者からの仕事のオファーがいくが、あくまでも【キープスケジュール】として事務所から声優に予定は入る形になることが多い。
キープスケジュールとは「この日に仕事が入るかもしれないから空けといてね」という意味で、何日間かキープをもらったうちの1日が本当に仕事の日になる、みたいなことが多いのであまり過密なスケジュールは組めない場合も多い。
無論これが主役で毎週レギュラーのキャラの仕事の場合は1クールが3ヶ月なので3ヶ月間毎週○曜日をキープの曜日が入ることになる事が多いけど。
で、キープが入った日程のうちから収録の日時が決定するのが前日だったりするので「明日のキープスケジュールが実際は仕事ができるかどうなるかよくわからない」という状態もよくあったりする。
なので声優は、アルバイトをするにも急にハズレたり入ったり出来たりする融通の効くアルバイトじゃないとできなかったりする。
で製作者から直接声優に指名でオファーをする場合も基本的に声優は事務所に相談し、仕事内容や、拘束される時間や期間、ギャラや声優のイメージとあうかどうかなどを考慮してOKを出したり、NGを出したりする。
声優というのはかなり不安定な職業なんだな。
それはまあともかく浅井さんにはこの春4月から放送予定のマックロデス2のメインヒロインであるリンカ・レイの役に指名したのだが、実際には他の声優事務所の声優さんとオーディションが行われて他の事務所に持っていかれる可能性もある。
まあ、声優の技量は大事だしな。
リンカ・レイは前作マックロデスのメインヒロインのリンリン・メイと同じく中国系で中華料理屋で働くアイドルに憧れる普通の娘だが、実は戦災孤児で当時の記憶を全て失っている。
だがその歌の魅力でトップアイドルへ上り詰めるというキャラだ。
彼女のあこがれの歌手は二人いて今現在トップアイドルのシャルティア・ノーマと今売り出し中の女性ロックバンドボーカルのマリス・ホリディ。
シャルティア・ノーマの歌には岡畑有希子さんを指名しているが、ほかは音響監督に任せてる。
ああ、ちなみにアニメの中のキャラクターの声優と歌を歌う人は別というのはよくあることだ。
「浅井さんが無事オーデションを勝ち抜いてくれるといいんだけど」
俺がそう言うと北条会長が頷いていった。
「そうですわね。
そろそろちゃんと自力で仕事が取れないようでは、彼女に社員としての価値はありませんし」
「ああ、北条先輩。
その何でもかんでもカネになるかどうかでぜんぶ決めるのもどうかと思うんだけど」
「ですが、仕事がないのに無駄にお金を払い続けては単なる損失の積み重ねにしかなりませんわ」
「いや、だけどさ」
俺がそう言いかけたところで斉藤さんが言った。
「その銭ゲバ冷血女そんな事をいっても無駄よ」
「ああ、いや斉藤さんもそんな感情的に答えなくても。
でもさ、北条先輩。
時間的な効率と生産性の追求をとことんするとかえって金にならないんだよ。
ゲームとか小説とかアニメとかは特にね」
「そういうものでしょうか」
「まあ無論人によるところはあるけどさ。
その結果を数字だけで測ろうとすると良くないことも多いんだよね。
たとえば健康的に良いプロポーションを得ようとダイエットし始めて、「何キロ痩せた」とかばかりにとらわれてしまって、ろくにたべなくなって、ガリガリで不健康になったり、体調を壊したりすることもよくあるらしいけど、健康的にダイエットをするはずが数字を追いかけるのが目的になったら意味ないよね。
で、声優とか俳優とか役者なんて成功に至るまですごく時間がかかるのが普通なんだよ」
俺がそう言うと北条先輩はため息をついてから言った。
「まあ、なんとなく言いたいことはわかりましたわ。
あまり結果を早く求めすぎるのも良くないのかもしれませんわね」
「そうそう、芽が出たばかりの植物を小さいからいらないって引きぬいたらいつまでも大きくならないでしょ?。
休みを取らないで仕事してても却って効率悪くなるだけだし」
俺がそういうと朝倉さんと明智さんからツッコミが入った。
「部長はその言葉を言う資格はないです」
「そうっすよね。
もうちょっと休むことをしないと周りに迷惑っすよ」
「あれ? なんで俺二人に怒られてんの?」
まあそれはともかく貧すれば鈍するで、”前”は企業が採用したらすぐ金を稼げる即戦力ばかり求めて育成や開発をおろそかにしていって結局はどんどんだめになっていったんだけどな。
やがて浅井さんが部室に戻ってきて満面の笑みで言った。
「な、なんとかオーディションに合格しました」
「お、そりゃ良かった」
色々心配はあったけどまずはめでたしかな。
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