昭和61年(1986年)

今年はめちゃくちゃ忙しかったが大晦日や正月くらいはゆっくりしようか

1月1日 - スペインとポルトガルがECに加盟。


 さて、平均株価も1万3千2百円まで上がったので一度売り利益を確定させた。


 ”デジタル・ディーヴァ・ストーリー女神召喚”も無事発売されて書店の店頭に並び、そこそこ売れているので、アニメ化とゲーム化を進める予定だ。


 プラザ合意がなかったことやパオーイングのずさんな体制が明らかになったこともあって、海外渡航者が急激に増えることもなく、海外ブランド品の爆買も起きていないし、大蔵省による株価維持工作も起きていない。


 しかし、原油価格が下がり製造コストを抑えられることが出来るようになったため、製造業は元気なようで株価も上がったり下がったりだが徐々に上向いている。


 もっとも土地の異常な値上がりは起きていないので見かけだけの、企業資産増大も起きていないがむしろこれは健全でいいことだと思う。


 それにより銀行の無理な貸付も起きていないので、土地バブルも発生していないしな。


 まあ銀行の経営者は”前”よりは大変ではあるんだろうし、父さんも金を借りてもらうための接待で大変そうだけどな。


 そして今年はゲーム大会とコミケの準備にかかりきりで、クリスマスどころではなかったがコミケも終わればひと息つけるようになった。


 去年は俺と斉藤さんで一緒に勉強しながら学校の面接の練習を行っていたのが懐かしいな。


 テレビでは日の本テレビの”大晦日ウルトラスペシャル! 全国高等学校クイズグランプリ”の最後の冬大会がやっていた。


「夏にこれで優勝したのが懐かしいな」


 俺がそういうと母さんが笑っていった。


「冬も出るのかと思っていたのに、それどころじゃなかったのね」


「まあね、色々忙しくて」


 で、年末恒例の”輝く日本テープ大賞”では外森明菜の「ミーアーモーレ」が大賞を獲って、外山美穂が「D」で新人賞を獲得。


 ただしこれは彼女がTBSドラマの出身だからで、昨年の岡畑有希子同様に出来レースだと言われているが。


 もともと70年代から“特定のレコード会社や芸能事務所が審査委員に対して何らかの働きかけを行っている”と言われていたものの、審査委員の大半を新聞社とテレビ局の社員が占めるため、「報じない、報じられない」といった状態が続いてきたが、賞レースに左右されない音楽活動をしたいことなどを理由に、受賞そのものを辞退する有力アーティストが増えたこともあってテープ大賞の権威はどんどん低下し、テレビの視聴率も30%を割り込む事態となっている。


 で、もう一方の”紅白歌大戦争”では「フレッシュ紅白」をスローガンに掲げ、原則として同年に発売された新曲を披露させる構成を採り、出演者に演歌歌手が減りアイドルの出場が増えた。


大泉今日子の「なんといってもアイドル」 危険地帯の「悲しみにこんにちわ」、原田知予「青春早春物語」良川晃司「にくまれそうな新人」などだな。


 しかし今までは平均視聴率が70%を超えていて、昨年は78.1%という驚愕の視聴率を叩き出したが、今回の平均視聴率は、66.0%で、前回よりも12.1ポイント低下し、この後は関東地区での平均視聴率60%台超は達成されておらず、年末の恒例番組としての地位低下とテレビ離れ、そして歌謡曲の終焉が決定的となった年でもあった。


 レコード会社が売りたい歌手に箔付けのために賞をとらせるという構図が、歌手にこういった番組への出演を拒ませ、ユーザーにそれらの事情が透けて見えてきてしまったのだから、音楽業界の衰退はすでにここから始まっていたんだな。


 そんな感じでテレビをこたつに入ってみかんを食べながら、ぼんやり眺め、今年は日の本テレビが放映し、今年で北両国国技館から中継された ”いけ年こい年”などを見終わったら、昭和61年(1986年)になったわけで、例年通り近くの氏神神社へ毎年恒例の初詣に行く。


「今年も行ってくるか」


 神社で毎年恒例のみかんと甘酒と新しいお守りをもらって、古いお守りをお焚きあげしてもらい、賽銭を投げ入れる。


「今年はもっと俺たちが飛躍できますように」


 この時代は年末年始の大晦日から三が日は神社や寺、コンビニ以外のたとえばデパートとか動物園、遊園地などはどこも正月は休みでゲーム会社もお休みだからゆっくり出来る。


 もっとも舞浜のアレは営業してるし、ゲイラカイトを上げることが出来るようにということもあって谷津遊園は営業してるけどな、


 で、まあ正月三が日は去年同様親戚が訪ねてきて、例年通りポチ袋にはいったお年玉をくれた。


 まあ、今年も全部お母さん預金だけど俺が社長になっても周りは俺をまだまだ子供としか見てないんだよな。

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