現状の家庭用据え置きハードで途中セーブが出来るようにバッテリーバックアップのカセットを試作してもらおうか
さて、現状のホムコンやSAGAマーク3用ソフトにはパソコンゲームのようなRPGが殆どないのはユーザーの対象年齢などの違いもあるものの、セーブロードの機能がないというのも大きい。
パソコンゲームの場合はテープなりFDなりにセーブできるのが普通なので途中セーブも簡単に出来るから途中で中断も出来るけど、ホムコンなどはもともとアーケードゲームを家庭でも遊べるというのが基本的趣旨なので長い間遊ぶことは考慮していない。
なので桃の子太郎討鬼伝説やエイサー王伝説も1時間もあれば終わるような内容にしてある。
なおはじめてバッテリーバックアップを採用したゲームソフトは実はパソコンRPGのMSXのカセットへの移植版で、この際にはパスワードが長くなりすぎて記録ミスが頻発する可能性が高いということで、パソコンでは時計の内容などを保持するために行われているSRAMとリチウム電池でのデータバックアップをゲームのROMカートリッジの内部に内蔵してみたわけだ。
理論的にはもうホムコンやSAGAマーク3のカセットでも同じことはできるはずなのだ。
ちなみにMSXではその後はFDDが標準装備され、ゲームソフトもFDで提供されるようになったのでバッテリーバックアップはあまり必要なくなったのだが、ホムコンやスーパーホムコンではディスクシステムがあまりうまく行かなかったこともあって基本的にカセットでの販売形態が続いたことで、バッテリーバックアップが採用されてRPGを中心に、多くのゲームソフトにバッテリーバックアップが採用されていった。
やはりホムコンやSAGAマーク3でRPGが普通に遊べるようにならないと広まらないだろうけど、桃の子太郎討鬼伝説でもパスワードはそれなりに長くなりそうだしな。
「アルティマみたいなゲームをパソコンじゃなくてホムコンで作ることは出来ると思います?」
俺はナセルさんに聞いてみた。
「もちろん出来ると思うさ。
最初のアルティマの時に使われたパソコンと今のホムコンの性能に差はないからね」
「後はデータの保存の問題ですよね」
「確かにパソコンだとテープやフロッピーで保存できるけど、ホムコンはそれがないからね」
「パソコンのデータを保持するSRAMとリチウム電池でのデータバックアップというのをゲームカセットでやらせたらどうでしょうか?」
「ふむ、なるほど、発想の転換というやつだね。
データを保存できないのであれば保存できるようにしてしまえばいいということか」
「ええ、パスワードを書き出す方式もあるかとは思いますけど、長くなればそれで嫌になるプレイヤーも多いでしょうし、何より長い時間がかかるゲームも作りやすくなると思うんです」
まあ問題はフェニックスなんかに企画を持ち込んだとしても陣天堂がそういうカセットを作らせてくれるかどうかってことではあるんだけど。
「そういう点では融通もききそうだし、まずはSAGAの方でやるか」
SAGAの看板RPGになるファンタジースターをバッテリーバックアップ付きで作ってしまうというのも一つの手だよな。
「会長、企画書をSAGAに持ち込んで折衝してみてくれないかな」
「わかりましたわ。
やってみましょう」
SAGAはRPG関係のノウハウは殆どないし、落ちものパズルのジュエルスやリズムアクションのリズムマニアックスという今までないゲームの成功もあるからきっと飲んでくれると思うんだけど。
「ああ、やわらか銀行系出版も今なら安く買い叩けそうだし、あそこはパソコン雑誌を発行しているはずだから買収できるかな?」
「ええ、それは可能でしょうね。
そちらもやっておきますわ」
「あと、去年の冬からの石油ファンヒーターの一酸化中毒事故で経営危機っぽい電器製造メーカーの四洋電機も買収出来ないかな」
実際にこの事故以降は四洋電機の製品は危ないというイメージが消費者にまとわりついたこともあって、業績はどんどん悪化していくんだよな。
これも一族経営の弊害だったと思うんだよな。
「わかりました。
DDTの買収の結果次第ではありますけど、そちらも考えておきましょう」
技術力自体は決して低くない会社なんだから、どんどん沈んでいくのも、正直もったいないと思うんだ。
70年代ではラジカセの評判も良かった会社だし、”前”ではガラケーの製造もしていたし、MP3等の圧縮音声や圧縮動画の研究をこっちで進めて、MP3プレイヤーやスマートフォンをなるべく早く作っておきたいしな、ゲームハードもできれば自社で作りたい。
スーパーホムコンのあとソミーはホビーステーションでコンシューマーゲームの覇権を一時握ったが、ソミーはトロンの教育用パソコンを推進した松本電気とビデオデッキ競争で対立して、惨敗していたせいか、トロンつぶしに加担していたという話もあるし”前”は韓国に技術提供をした企業でもあるし、あまり良いイメージではないんだよな。
「あ、そう言えばダンスゲームを作るとして、今どきのディスコダンスに詳しい人っているかな?」
俺がそう言うと千葉さんが手を上げた。
「はいはーい、そういうことなら私にまーかーせーてー」
「ああ、千葉さんならディスコの流行曲もダンスも詳しそうだもんな。
そういう人がいて助かるぜ」
俺がそう言うと会長も頷いた。
「では、ダンスゲームの制作に参加するようになれば正式に給料を払いますわね」
「それは嬉しいな、頑張るよー」
「後、谷津遊園のプールは9月末までで営業終了なので現在は鮒や鯉の釣り堀や船のラジコンを動かせる場所としているけど、今のうちに最新式のウォータースライダーも設置しておきたいな」
「たしかにそうですわね。
そちらも超大型コースターの設置と一緒にすすめておきましょう」
常磐ハワイアンセンターの方は温水プールなどがメインだから、そういう点ではあんまり問題ないけど、プールって夏以外の扱いに結構困るもんだな。
まあプールは冬に水が凍ったらアイススケートリンクには出来るし、流れるプールはラジコンとかのサーキットやローラースケート場なんかにしてもいいけどな。
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