アメリカで販売したジュエルスやリズムマニアックスのおかげで天才プログラマーが来てくれたよ
さて、俺はアーケード版のリズムマニアックスの曲を朝倉さんとともに現在増やしているところだ。
なお俺が打ち込んでる曲は2000年以降の有名アニメで有名アーティストが歌ってる曲や音ゲーをほぼ丸パクリしたものだな、アニソンは平成ガンガンシリーズとか、鋼鉄の錬金術師とかそのあたり。
アーケード版は現在はMIDI音源だが、LDゲームにする予定で、その際にアニメーションや高音質な音源も必要になってきそうでもあるんだけどな。
「曲を追加していくだけでアーケードのリズムマニアックスは当面インカムの維持は期待できそうだな」
”前”でもこういった音ゲーの息は長がったが、基本的なシステムを変えなくても曲を追加するだけでも飽きられずに遊ばせることが出来るというのが強みだったのだろう。
「でも私達だけではそろそろきついです」
朝倉さんがそう言うがそれもわかる。
「確かにな、うちのレコード事務所に来てくれた、ベッキーのフレンド達や
当然ちゃんと版権使用料は払うし、あっちも有名になる機会だと言えば嫌な顔もしないだろうし」
彼等はまだこの時期では売れていなくてまだまだマイナーだったり、そこそこ売れていてもレコード会社との折り合いが悪かったりして、移籍してきたロックバンドだが問題児も多いのは頭が痛いところでもある。
だが、千葉や茨城のアマチュアバンドなどとともに谷津遊園でライブをしたりして人気もでているし、CDも売れてるから彼等の収入もけっこう増えたはずだ。
まあロックなんて言うのは反体制の象徴でもあるから、問題行動が多いのも仕方ないところではあるんだけどな。
「部長はいい仕事してるですよ」
「お、朝倉さんが俺を褒めてくれるとは珍しいけど、そう言ってくれれば嬉しいよ」
ちなみに似顔絵描きだけでなくその他の路上パフォーマンスも許可しているので、路上で踊ったり大道芸をしたりもしている。
「問題はLDゲームにした場合のアニメーションの方だけどな……」
俺がそう言うと最上さんが苦笑した。
「私はアニメーター志望者ではないから、早く沢山描くって言うのは無理ですよー」
「うーん、やっぱりそうだよな。
絵かきと似顔絵描きが違うようにイラストレーターとアニメーターもまた違うもんな。
かといってアニメ制作会社のアニメーターを引き抜いたらアニメ制作に支障が出そうだしなぁ……」
俺たちがそう言っていたら会長が言ってくれた。
「ではそちらに適正がありアニメーター作業を希望しそうな生徒を探して声をかけてみましょう」
「そうしてくれると助かるよ。
TCGを本格的に作るとなればどっちにしろ最上さんだけだと、とても手が足りなくなりそうだし」
「そうですねー」
そこでついでとばかりに会長から聞かれたことがある。
「ところで今回九州三国志では自社ブランドで発売しているにも関わらず、エイサー王伝説や桃の子太郎討鬼電鉄はフェニックスへ、対戦型ジュエルスとリズムマニアックスはSAGAへ持ち込んだのはなぜなのでしょう?
特にフェニックスの方は私達の取り分はホムコンで1割、パソコンで2割ですから自分たちで売ったほうがお金になる気がするのですけど」
「ああ、たしかに単純に売れた後での取り分だけ考えればそう思うだろうね。
でもさ会長、こういったものを売るためにもっともお金がかかるのはなんだい?」
「それは……テレビなどでの宣伝広告費ですわね」
「そういうこと。
まだまだ俺たちだけじゃ週間ホップの袋とじでの紹介をしてもらったりは無理だし、複数のキー局テレビCMで宣伝広告をばんばん流したりするのはまだまだきつい。
それにホムコンソフトの販売と流通は陣天堂の工場や指定の問屋経由と決まっているし、年間に出すソフトの本数にも制限が加えられてるし、カセットを作るために100%の前払金を支払わないといけないし、問屋の中間マージンもぜんぶ決まってる。
これはソフトの供給過剰や粗製濫造を起こさせないための対策だけどゲームソフトの場合は書籍みたいな返品制度はないから売れないと販売店が在庫を抱えて大変らしいけど、これはアメリカのアタラナイショックや日本でも以前は自社工場で作れていたけど不良品が大量にでてそのクレームが陣天堂にいったからカセットの品質管理のためにライセンス生産制度になったってのはあるんだけど。
SAGAの場合は俺たちにはSAGAみたいなアーケードゲーム用特殊筐体を作る工場はないだろ?
パソコンの場合はゲーム雑誌の新作ゲーム情報に載せてもらうくらいしか金がかからないから九州三国志は自社ブランドにしてみたけどね」
ちなみに当初はそういったトラブルの解消やアタラナイショック同様のゲームソフトの粗製乱造防止のために行われたソフトの委託製造から販売まですべてをおさえることにより、陣天堂はホムコンやスーパーホムコンの時代ではビデオゲーム製造販売の頂点に君臨していたが、スーパーホムコンではこれらの理由によってサードパーティが苦しんだ結果、次世代機で陣天堂からサードパーティがどんどん離脱することになったりもして陣天堂は売り上げの大きな低下にしばらく苦しんだ。
また陣天堂以外でも初期ライセンス企業の優遇処置として年間の本数制限なし、自社ラインで生産可能な企業もあるが俺たちはそれには加われないだろう。
ちなみに優遇措置をうけてるのはハデダゾン、ニャムコ、タイト、コナミン、カプコ、ジャレコンの初期の売り上げに大きく貢献した六社でそれ以外は皆、年間に出せるソフトの本数に制限は加えられているし、自社工場ではソフトは作れない。
「確かにそうなると必ずしも自社で販路を広げてパブリッシングをおしすすめるのが有利とは限りませんわね」
「そのあたりが難しい所なんだよな。
でも広告宣伝費用やホムコンのカセット制作金の前納なんかの金額を考えると自社ブランドでの販売にこだわるのもいいとは限らないのも事実だと思うよ」
「なるほどですわね。
それからダンバイからホームトレーナーという足で踏んで操作する周辺機器を発売する際に、こちらでダンスをするゲームを作らないかとの打診がありましたわ」
「ああ、今はディスコブームだし、ダンスゲームもありだね。
ダンバイとは別にSAGAでアーケード筐体を作ってもらって、そっちはそっちでゲーム化したいけどな」
「そうですわね。
アーケードの販路について、ダンバイは持っていないようですし」
ダンバイとつながりができれば、ガンガンなどの版権ゲームを、ダンバイを通じてつくるのも難しくなくなるだろうし、これはいい機会じゃないかな。
そんな事を話していたら一人の外国人が俺たちに会社への入社を希望してきた。
「私はナセル・ジェベッリといいます。
あなたがジュエルスやリズムマニアックスの開発者ですね。
ぜひとも私もここで働かせてほしい」
「あ、ああ、そうだけどわざわざアメリカから?」
「ええ、そうです。
ここなら面白いゲームをどんどん作れそうですから」
「あ、うん、俺は全然構いませんよ」
「この方はそれほどすごい方なのですか?」
「うん。
もとはイランの王族だったけど、イラン革命により渡米して1980年に友人とApple II用のゲームを製作するシリウス・ソフトウェアを立ち上げたけど方針が決裂して退社。
その後にジベリ・ソフトウェアを設立してゲーム製作をしていたけど、アタラナイショックの影響で倒産したはず。
でもApple II時代から「天才プログラマー」と言われていたし、彼の作ったゲーム自体はすごく評価されていたんだよ」
「ええ、そうです、よくご存知で。
アメリカでは1982年のクリスマス以降ビデオゲーム市場はほぼ崩壊しました。
しかし、SAGAにより今市場は復活しようとしています。
私はそれに加わりたいのです」
「では、採用といたしましょう」
というわけでアメリカ出身の天才プログラマーが俺たちの会社に入社してくれた。
「他にも同じような境遇の人がいたらぜひ一緒に働くことを呼びかけてください」
「はい、わかりました。
ただ日本で働くということをすんなり受け入れられる者はいないかもしれないです」
「まあ、そうですよね」
アメリカから日本に来て働くというのを受け入れられる人物はたしかにそう多くはないだろうな。
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