ゲーム製作は順調だ、そして芸能会の闇は深い

 さて、文化祭のメイド喫茶用メイド服は俺や斉藤さんの母さんたちに仕立ててもらうことになったので、まあとりあえずは大丈夫だろう。


 そしてゲーム喫茶での展示やお客さんのお試しプレイ用に、今現在俺たちはゲームの仕上げに取り掛かってる。


「なるほど、千葉は谷津遊園で、伊豆は南海館、福島は常磐ハワイアンセンターを購入可能物件としてわかりやすく入れるわけだね」


 島津さんが作っている桃の子太郎討鬼電鉄では俺たちが持っている物件をデカデカと出していく。


「ええ、それで谷津遊園やハワイアンセンターに行こうと言ってくれる人が、今後少しずつでも増えてくれれば御の字ですからね」


 電鉄ゲームを早めに作ったのは海外ではなく国内の家族旅行が増えてほしいからだ。


 そして新幹線変形ロボアニメも作ればもっともっと日本全国各地に興味を持ってくれるかもしれない。


 小さい子供と一緒にテレビを見ているお母さんの影響力は馬鹿にできないからな。


 俺は対戦用のAIやキャラクターを用意していない、純粋な二人対戦のジュエルスをとりあえずプレイできる状態にしあげた。


 こちらで消したジュエルが相手のところへ降りそそいで、相手の邪魔をするというあれだな。


 テト&リスでも2人同時プレイは可能だが、最初はあくまでも対戦ではなく持久モードを各プレイヤーが独立してプレイして、先にゲームオーバーになったほうが負けというものだったから結構斬新なはずだ。


「これは相手の邪魔を出来るというのが、なかなか面白いと思うよ」


「できれば島津さんには、プレーヤーが一人でも遊べるようにコンピュータ対戦用の敵キャラクターとAIの制作もお願いしたいところです」


「わかった、桃鉄が終わったらそっちに取り掛かるよ」


「よろしくおねがいしますね」


 またリズムアクションゲームは著作権に引っかかると困るので、朝倉さんが作曲した音楽を使ったり、この時代にはまだない未来の曲を俺が打ち込んで使ったり、買収したレコード会社所属の歌手の曲を使ったり、谷津遊園で路上パフォーマンスをしてるバンドのオリジナル曲を彼等の許可を得て利用している。


「ふう、ようやくそれなりの形になったです」


 そういう朝倉さんはかなり満足そうだ。


「そうだな、とりあえずはパソコンで動かして、後はSAGAで専用のアーケード筐体を作ってもらうとか、がいいと思う」


 リズムアクションは画面上の落ちてくるターゲットが画面の一番下のラインに触れた瞬間に対応するシンセサイザー・キーボードなりパソコンのキーボードなりを押せば得点となり、ある程度以上ちゃんと拾えなければゲームオーバーというよくある形式だけどそんなに難易度は高くしてない。


「最初は誰でも出来る難易度から入らないとな」


「その通りです」


 毛利さんも九州三国志のブラッシュアップは、ほぼ終わったようだ。


 それぞれ桃の子太郎討鬼電鉄はフェニックスに持ち込んで、週刊少年ホップの袋とじで扱ってもらいつつパソコンとホムコンソフトとして売り出してもらい、ジュエルスの対戦仕様とリズムアクションゲームの”リズムマニアックス”はSAGAに持ち込んでパソコンとSAGAマーク3とアーケードゲームとして発売してもらう。


 さすがにSAGAマーク3への移植はタイミングを合わせて一つのボタンを押すだけに簡略されているがこれはこれで悪くはない。


 九州三国志だけはパソコンソフトとしてライジングの自社ブランドで売ってみることにした。


「これでちゃんと売れれば余計なマージンをとられなくて済むな」


 この分野では栄光がすでに突っ走っていて”川中島の合戦””織田信長の野望””三国志”などの有名ソフトがすでにでているが、九州三国志は武将や足軽隊・騎馬隊・鉄砲隊・大砲など兵種なども扱うという意味ではマニアックだが結構人気は出るんじゃないかと思う。


 そんなところにレッスンから帰ってきた浅井さんが俺に言った。


「あ、あ、あの、私ビキニの水着でグラビアに出たりしないといけないのでしょうか?」


「え、俺は少なくともそんな事は考えてないけど?」


「あ、そ、それなら良かったです」


「ところでなんでそんな話になったの」


「え、ええと、一緒にレッスンを受けている女の子とお話していたら、です」


 このころのデビューしたての美少女アイドルにはミニスカートでのパンチラ、ビキニでのグラビア撮影などが、必須扱いされていたりする。


 要するにアイドルはそういった性的なものを売り物にさせられているわけだ。


 岡畑有希子の自殺の原因は男性関係と一般的には言われているが、実のところアイドルの、そういった裏の面に嫌気が差していたことが大きいようだ。


 ある日彼女は、マネージャーに連れられて、デビュー直後のアイドルの宣伝イベントを見に行ったが、その時の野外のステージの上で微笑をふりまきながら歌うアイドルのミニのスカートが風に吹かれてはためき、パンチラするたびにカメラ小僧がそれを撮るために一斉にシャッター音がするという状況だった。


 このときマネージャーは彼女に「こういうの、どう思う」と尋ねたが、「こういうのが男の子のファンはうれしいんですよね」とサラッと答えたが、マネージャーは「この子は度胸が据わっているし、こうゆうのは大丈夫なんだな」と判断したが、彼女は単にその場の感想を述べただけで、自分もそういったことをさせられると認識していなかった。


 マネージャーはそれを彼女のアイドルデビューのための決意表明として受け取り、デビュー・イベントに用意されたのは、パンチラどころか、パンモロになるような丈の短いスカートであった。


 更にはたびたび音楽関係の有力者の酒の席に同伴させられたりなどして、彼女の”歌手”としてのイメージと現実にやらされている”アイドル”の差や芸能界の裏の汚さに悩んだ末の行動が自殺だったわけだ。


 無論そういう芸能界の汚さなどをマスコミは報道しなかったから、自殺の真相は不明となっているわけだが、レースクイーンやキャンギャル、コンパニオンガールなどに対して群がるカメラ小僧に対する規制などもほとんどない時代ではある。


 だからこそアイドルはなるべく早く結婚をしたがるわけだ。


 結婚することで堂々とアイドルという汚い稼業から引退できるわけで、それが出来ないということが絶望を呼び自殺や自殺未遂に走らせたのであろうと思う。


 思うんだが芸姑や地方芸者やコンパニオン、演歌歌手やアイドルも結局元締めは同じで、やらされてることも同じなんじゃないだろうかそしてそれはもともとは遊郭の流れをくむもののようにも思える。


 そして後々はアイドル志望の女の子がAVデビューさせられたり、デリヘルに左遷させられたりすることもあったりもするし、演歌歌手の地方の営業には地元の協力が欠かせないが、ほとんどはその筋の興行師でもあったりする。


 芸能界とヤクザや性的接待は切っても切れない関係なのは、この頃からでもあるのだが良いことじゃあないよな。

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