朝市で食材買ってそれを料理して食べたら、帰りは富士山サファリパークへ寄っていこう

 さて、花火も終わって火の始末もしたら、しばらくは星を眺めたりもしたが、8月の末とは言え、少し冷え込んできたこともあってそれぞれコテージやテントへ移動して寝ることにした。


 虫の声が響くので必ずしも静かとも言えないが、ほぼ星あかり月明かりだけの状態では自然とまぶたも重くなりそのうち俺は眠りについていた。


 そして翌日だ。


「じゃあ先生、スーパーに食材を買いに行きましょうか」


 俺がそう言うと先生は怪訝な表情をした。


「ん? まだこの時間はスーパーなんてどこも空いてないぞ」


「え?」


「えってお前、スーパーが開くのはどこでも10時くらいだぞ」


「え、あ、そうか、しまった」


 この時代のスーパーは朝10時から夕方19時で閉店が普通で24時間営業は愚か、早朝から深夜までやっているスーパーすらなかった。


 コンビニエンスストアはこの頃にはだいぶ24時間営業をやっているけどこのあたりにあるかどうかだな。


「でも、朝市で色々売っているはずだから買いに行くか」


「あ、ああ、そういうことですか」


 俺がそう言うと会長が怪訝な顔をした。


「わたしが河口湖あたりに買いに行きましょうと言った時にスーパーが開いてると思っていたのですか?」


「実はそうだったんだよ」


 俺がそう言うと朝倉さんが苦笑しながら言った。


「相変わらず部長は変なところは抜けてるです」


「あう、それは否定できん」


 この時代は行商のおばちゃんが、駅前とか朝市で、野菜とか果物・貝・卵とか、手作り惣菜、餅・団子など和菓子を毎日のように普通に売ってたんだっけ。


 漁協の朝市などあるならもっと良かったんだけどな。


 でもこういうのはスーパーやコンビニ、道の駅などが増えると買う人が減っていって、観光目的の日曜だけ開催とかになっていくんだよな。


 で先生に運転してもらって河口湖駅前の朝市へ向かった。


「よし、ついたぞ。

 わたしの分も適当に買ってきてくれ」


「わかりました」


 というわけでみんなでマイクロバスから降りる。


 朝市ではもんぺみたいな服を着て頭に手ぬぐいをかぶったおばちゃんたちが、野菜や果物、卵、手作りの漬け物や惣菜、味噌や和菓子などを売ってる。


「へえ、結構色々売ってるな」


 会長が頷いていった。


「野菜はいんげん、枝豆、かぼちゃにピーマン、トマト、オクラ、きゅうり、ナス、さといも、トウモロコシ、レタスといったところですか」


「果物は桃に梨、ぶどうにスイカね」


「魚はアユとドジョウ、カジカが売ってるです」


「産みたて卵もあるっすね」


「うんこれだけ色々売ってりゃ十分だな。

 取りあえずトマトとピーマンとナスに、トウモロコシ、レタス、枝豆、アユとカジカ、卵は買っておくか」


 俺がそう言うと朝倉さんが首を傾げた。


「一体何を作るんです?」


「トマトとピーマンとナスと卵、レタスはコンビニでパンを買ってまだ残ってるソーセージやベーコンを使ってBLTサンドやホットサンドやホットドックでも作ろうかと。

 枝豆は先生用」


 明智さんが刻々と頷いて言う。


「ああ、それ、うまそうっすね」


「アユは塩焼きでもいいし鮎飯でもいい、カジカは汁にしようと思う」


 斉藤さんが頷いていった。


「そういうのも悪くないわね」


「トウモロコシは焼いて醤油かけて食えばいいんじゃないかな」


 最上さんが笑顔で言う。


「トウモロコシはもぎたてみたいだからきっと美味しーね」


「で食後のデザートは桃」


 浅井さんが頷いて言う。


「き、きっと美味しいですね」


 というわけでコンビニで食パンとコッペパンやマヨネーズ、トマトケチャップ、マスタードなども買い足してキャンプ場に戻った。


 アユやカジカの下処理は浅井さんに丸投げして、他の女の子には野菜を適当な大きさに切ってもらい、俺は火の準備。


 火の準備ができたらまずはアルミホイルに油と切った野菜を入れて熱を加えながら、ベーコンやソーセージも網で焼き、鍋でゆで卵を作り枝豆も茹でる。


 飯盒で米に水と醤油とだしの素を加えてアユを乗せて炊きながら、味噌仕立てのカジカ汁も作る。


 その間に薄切りにしたトマトとベーコンとレタスを食パンに挟んでやればまずBLTサンドが出来上がり、焼いた野菜や茹で卵を輪切りにして乗せてそれをアルミホイルに包んで焼けばホットサンド、コッペパンに焼いたウインナーを乗せてケチャップとマスタードをかければホットドッグだ。


「よし出来たな」


 ぜんぶ味見してみたが、まずいものはないと思う。


「美味しそうっす」


「おいしそうね」


「じゃあ、みんなで食べようぜ」


「いただきますわ」


「いただくです」


 斉藤さんや浅井さんは鮎ご飯にカジカ汁、会長や朝倉さんはホットサンドなど、その他の子たちはどっちも、ちょっとずつつまんでる。


「先生は枝豆とトウモロコシだけでいいんですか?」


「ああ、とれたての枝豆やトウモロコシはうまいしな」


 もちろん車の運転があるから酒は飲んでないけど、枝豆とトウモロコシだけでほんとにいいのか?


 みんなで桃も食べて休憩したら、キャンプを畳んで、コテージも片付けて、鱒をクーラーボックスに入れ、ブクブクも入れて持ち帰る準備が終わった、一休みしたら富士山をグルっと回って富士山サファリパークに行く。


「日本最大のサファリパークも、ちょっと見ておきたいもんな」


 俺がそう言うと会長が苦笑して言う。


「谷津遊園の動物園の参考にはあまりなりそうにありませんが」


 それに対して斉藤さんが言った。


「猛獣を飼う予定がないなら当然よね。

 今回は休暇旅行なのだから少しはお金から離れなさいな」


 富士山サファリパークは1980年に開園されたばかりの、日本最大級のサファリパーク。

 園内では、サファリ専用バスに乗ってライオンやチーター、ヒョウ、ヒグマ、ゾウといった動物たちを間近で見ることができる


「うわ、ヒグマ?! まじで直ぐ側まで来るんだな」


「ほ、ほんとですね」


 バスの中には黄色い悲鳴が響き渡っていたりもするが小さい子どもたちは逆にしげしげとヒグマを見てる。


バスの窓の金網越しに中をのぞき込んでる熊を見るとなんか変な気分だ。


「なんか俺達が動物園の動物になって観察されてる気分だ」


 朝倉さんが俺の言葉に頷いた


「それは言えるです」


 千葉さんも苦笑いしてる。


「動物園の動物ってこんな気分なのかな」


 ライオンのエリアではすごい数のライオンがいる。


「暑いのかなんかぐったりしてるやつが結構多いな」


 俺がそう言うと斉藤さんからツッコミが入った。


「そうじゃなくってライオンはネコ科だから普段昼は殆ど寝てるのよ」


「あ、そう言えばそうだっけ。

 猫もだいたい寝てるもんな」


 夜のナイトサファリの方が動物が活発で楽しいんだろうけど今回はしょうがない。


 そして動物園に比べて圧倒的に動物が近くで見られるのはサファリパークならではで、餌を挟んだ棒を金網から突きだして、目の前で肉に食らいつくクマやライオンの迫力を体験できるのもここだからできることだろうな。


 まあ谷津遊園の動物園の参考には確かに殆どならないけど。


 サファリショップでは、どでかいトラのぬいぐるみがあってけっこうリアル。


「これを持ってかえるのは大変そうだな」


「車で来るぶん買いやすいのかもしれないわね」


「なるほどそういうことか」


 谷津遊園や舞浜のアレは電車で来る入場者も多いけどここは基本車だもんな。


 サファリパークをぐるっと見て回ったら後は千葉に帰るだけだ。


「じゃあ先生よろしくおねがいします。」


「ああ、適当にパーキングエリアで休憩も取るぞ」


「トイレとかもありますしね」


 そんな感じで高速道路では適当にパーキングエリアに立ち寄りながら俺たちは千葉へ帰っていったんだ。


 テーマパークも色々種類があるがそこでしか出来ないことがある特化型はアクセスが悪くても強いってのはよくわかったな。

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