富士急高原ランドも結構参考になったな

 さて、一夜熟睡して夜も開けた。


「ああ、疲れも完全に取れたな」


 窓の外を見れば富士山がはっきりときれいに見える絶景だ。


「このロケーションは素晴らしいな。

 立地もスタッフの対応もいいし富士急に隣接しているため迷うこともないし時間もかからない。

 建物の中もトイレを含めて清潔できれいだし、これは見習うべきだよな」


 後々までも富士急は人気の観光地でもあったがこういった姿勢を他所のホテルも見習うべきなのにな。


 で、朝飯のためにビュッフェへ向かう。


「みんなおはよう」


「おはようございま-す」


「おはようっす」


「ああ、おはよう」


 みんなも一日寝て元気になったようだ。


 富士山を見ながらの朝食ビュッフェはパンもサラダもとてもおいしい。


「ん、このロールパンうまいな」


「クロワッサンも美味しいですよ」


「サラダも新鮮でいいっすし、ケーキも絶品っす」


「ああ、ワインもうまいな。

 甲州ワインも馬鹿にできん」


「いや朝っぱらから酒はどうでしょう先生?」


 ともかくここは料理の美味しさや、ホテル内の清掃、スタッフの対応にはかなり力を入れてるようで、のちのちまで長く続いていくのもそのあたりが理由だろうな。


「やっぱりもう一度来たいって思えるって大事だよな」


「そうですねー。

 修学旅行のホテルなんてひどかったですし」


「まったくっす」


「まあ、修学旅行とかは予算の都合もあるんでな」


 ホテル宿泊者の特典で15分早く入園できるので俺たちは高原ランドへ少し早く向かう。


「こういう特典は結構大きいよな」


「そうですねー」


 まずはシャイニング・フラワーという名前の大観覧車に持ってみることにした。


「うわ~、富士山がすごいきれいに見えるねー」


 最上さんが富士山を見て言うと明智さんも頷いた。


「これはなかなか見れないっすよ」


「たしかになあ。

 この立地だからこその景観だよな」


 流石にこれはどうにも真似できないけどな。


 その次はワイキキ・ウェーブ。


 荒波にもまれたかのような体験をできる回転系アトラクションで左右のシャフトが別々に回転することでめちゃくちゃ揺られる。


「ぐおおお、意外ときついぞこれ」


「そうかなー?」


「そうでもないっすよね」


「だな」


 うん、なんでみんな平気なの?


 更に次は恐怖のスリラー館 2人乗りの車椅子をもしたライドに乗って館内を巡るお化け屋敷。


 交通事故の恐怖や人体実験の様子を体験できるがBGMが雰囲気出しててめちゃめちゃ怖い。


「うおおお?!」


 俺は結構ビビってるけど一緒に乗ってる先生は全くどうじてない。


「落ち着け、所詮作りものだ」


 後ろでは最上さんと明智さんもキャーキャー言ってるんだけどな。


「いいか、一番怖いのは作り物のお化け屋敷なんかじゃない。

 生きてる人間だよ」


「いやそんな哲学的なこと今言われても」


 まあ上杉先生がなんで動じないかはなんとなくわかった気がする。


 ここで高原ランドをでて、河口湖へバスで向かう。


「逆さ富士がきれいに見えるな」


 俺がそう言うと最上さんが頷いた。


「こういうのもいいですねー」


 それから昔話「カチカチ山」の舞台となったという天上山へ富士山パノラマロープウェイで登っても見たやはり富士山や河口湖がきれいに見え反対側の遠くには南アルプスなどの長野の山も見える。


「こういう景色を眺めるのもいいもんっすね」


「ああ、俺もそう思うよ」


「富士急高原ランドは楽しかったけど待ち時間がそれなりにあるのが欠点だよな」


 俺がそう言うと先生が苦笑していった。


「そればかりは仕方ないだろう。

 人気がある証拠でもあるからな」


「たしかにそうですね」


 日本人は行列ができているところに並ぶのが好きだしな。


 それが終わったら来た時と同様に富士急の急行と国鉄の特急を使って俺たちは千葉に帰っていった。


「やっぱ谷津遊園にも派手な絶叫マシンも一つぐらいは、ほしいかな?」


 俺がそう言うと最上さんが笑顔でいった。


「私はそう思うよー」


 明智さんも頷いて言う。


「自分もそう思うっす」


 二人がそう言うので俺は念の為聞いてみた。


「ちなみに富士急の最新のジェットコースターのムーンサルト・スクランブルが幾らぐらいするか知ってる?」


「それはわからないですねー」


「自分もわからないっす」


「うん、あれね。

 30億ぐらいするはずなんだ」


「さ、30億円ー?!」


「谷津遊園まるごとと同じ値段っすか?」


「うん、あれは世界に一つしか無いやつだからっていうのもあるんだけど。

 だからもとを取るのも大変なんだよ」


「それはそうですよねー」


「30億円分の元を取るっすか」


「うん、もちろんアトラクション用のチケットをもぎる人の人件費や電気代、メンテナンス費用はまた別だし、他のジェットコースターも10億円弱はするはずなんだ。

 谷津遊園は閉園されて放置されていたのと少し古いから安く買えてるのだけどね」


「遊園地のアトラクションってすごいお金がかかるんですねー」


「そうすると儲かってそうでも実はあんまり儲かってないのかもしれないっすね」


「まあ中古のコースターなら年代とかにもよるけど半額から1割位の値段で買えるけどね。

 でも東武動物遊園地の直径50 m級の観覧車で5億円、メリーゴーランドも数億円くらい、富士急高原ランドのウォーターライドも10億円くらいはかかってるはずで、なんだかんだで金はかかるんだよ」


 俺がそう言うと最上さんが納得行ったという感じに頷いた。


「だからしばらくはアトラクションはそのままで行くって言っていたわけですねー」


「うん、そういうこと。

 尤もいずれ新しいアトラクションは必要だけどね」


「浅草の華やしきはそういう感じじゃなかったっすけどね」


 明智さんが首を傾げていったので俺はそれにも答えた。


「あそこは無理にアトラクションをリニューアルしないほうが、浅草という地域にも会うし、アトラクション的に後楽園ともかぶらないしね」


 ちなみに舞浜のあれはコーヒーカップですら5億かかってるけど、これは小型なら数千万、大型でも数億円レベル、そして意外かもしれないけどこの時のアトラクション単体で一番建設費が高かったのはカリブ海の蛮族で約160億円と、舞浜の場合はアトラクションに対して付与する世界観の構築のためにかかってる金額が桁違いで、舞浜のアレが当初予定していた費用は650億円だったけど最終的な総工費は1581億円とかだったりするから、入場者数が増えないと即廃業閉園の可能性もあるから結構ハイリスクハイリターンな賭けでもあるんだな。


 この時点ではアメリカ国外の唯一のあれ関係のテーマパークであるという希少価値もあって外国人観光客も多いみたいではあるんだけど、遊園地ってのは初期投資やランニングコストが莫大すぎるからうまくやって客足を維持しないとすぐ潰れちまうんだ。

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