明智さんのお兄さんと、変数の扱いが得意な毛利さんが新たにバイトに加わってくれたよ
明智さんにお兄さんに部室にきてもらうようにお願いした後日、明智さんと一緒にお兄さんが部室に訪れてくれた。
「やあ、妹がお世話になってるようだね。
僕は
千葉大のボードゲーム研究会に所属してる」
何個かのボードゲームやTRPGのボックスも持ってきてくれたんだけどやっぱりドイツ語や英語のものだね。
「はじめまして、ゲーム製作部部長で株式会社ライジング取締役社長の前田です。
お兄さんにはぜひ妹さんと共に俺たちのコンピュータゲームの自作TRPG化に加わってほしいんです、単純にセッションをテープに録音して、それを書き起こしてリプレイを執筆してもらったりもしたいですが」
「なるほど、妹がなにやら最近はこっちに入り浸っていたのはそういうことだったのか。
うん、それも面白そうだ。
最終的にはどこかの出版社に持ち込むつもりだってね」
「はい、桃の子太郎討鬼伝説TRPGをまずは門川書店に持ち込んでみようかと」
「なぜ門川書店なんだい?」
「門川書店はゲームブックへの参入に後れを取って今頃は歯噛みしてると思います。
それに似たものを持ち込んでこれは売れると思ってもらえれば製品化してもらえる可能性が高いのではないかと」
「なるほど、良い判断だね。
うん、じゃあみんなでボードゲームをやってみようか」
唐突な申し出にちょっとびっくりしたがまあ予想範囲でもあるか。
「え、ええ、やってみましょうか。
でもサークルクラッシャーなものは勘弁してください」
明智さんのお兄さんは笑っていう。
「ボードゲームはそういうものだから面白いんだけどね。
「いやそれは時間がかかりすぎるでしょう」
「じゃあ、タリオスマンあたりが良いか」
「ああ、それはいいかもですね。
RPGっぽいですし」
このゲームはファンタジーの世界の冒険者になって、究極の秘宝である「伝説の支配の王笏」を手に入れるのが目的のすごろく型ゲーム。
ワイワイと始めたのはいいが……。
「これ、全然ゴールに辿りつけないんですけど」
「いやそういうゲームだからこれ」
「コンピューターゲームならクソゲーって言われますよこれ」
「そうかもしれないね」
いやあ、ボードゲームのヘビーゲーマーだと難易度が高くても時間がかかっても気にならないのかな?
まあ、色々とファンタジーRPGの制作の参考になりそうなところはあるけどな。
そしてアルバイト契約も結んでもらったけど今回は明智さんと同じことができるということもわかってるので契約はスムーズだった。
「時間の空いた時にまた立ち寄らせてもらうよ」
「ええ、是非お願いします」
色々TRPG制作が捗りそうでもあり、逆に余計な時間を取られそうでもありだな。
そして、島津さんから紹介されてきてくれたのが毛利さん。
「はじめまして、
で島津さんが彼をフォローする。
「彼は数字計算に強くて沢山の変数や代入を弄るのが得意だから、数字をたくさん使うようなゲームなら彼のほうがいいと思うよ」
「ふ、それほどでもないがな」
「おお、それは助かります」
例えばRPGのHP、MP、攻撃力や守備力といった変化する数値を扱うものやSLGで武将の能力や兵数、国力がやはり変化するものなどはこういった数値変化を表すのに変数や代入を使うことが多い。
これも俺ができないことはないが得意な人がいてくれれば全然その方が助かる。
「ちょっとまってくださいませ。
いつも聞いていることですが部活の入部希望でも聞いておりますし、バイト希望の方には当然聞かせていただきますが、貴方はどのようなことができてそれをどうやってお金に変えられるのですか?」
「ああ、じゃあ作ってきたソフトを見てもらおうか、パソコンを借りるよ」
彼はフロッピーディスクを取り出して、パソコンにそれを差し込んでソフトを起動させた。
で立ち上がってでてきたのは某ゲームに似たような”九州三国志”というSLGの画面。
「いったいこれはどのようなゲームなのですか?」
相変わらずゲームそのものには詳しくない会長がそうきくと斉藤さんが言った。
「これは歴史系SLGですね。
大名になって他の大名を倒せば勝ちというものでしょうか?」
「うん、ちょっといじってみてくれれば内容はわかると思う」
そう言われて最初に手を上げたのは俺だ。
「ちょっとやらせてください。
大名は誰を選べるんですか?」
「大友か島津だね」
「じゃあ島津でやってみましょう」
「ああ、試してみてくれ」
ちょこっとじってみたけど、内政で国力をあげて、合戦で敵を倒していくというオードソックスなもののようだ、そんなに楽じゃないけど。
「よし、ようやく肝付を倒せたな」
「やってみた感想はどうだろうか?」
「ええ、かなり面白いと思います」
この手のゲームはなんだかんだで好きなやつが多いからな。
「それにしてもデータ数多いですよね」
「まあ、これくらいはね」
そして会長が言う。
「これでさらに作れるゲームの幅が広がるという訳ですのね。
では、採用しましょう」
こうして数字計算に強いプログラマーの毛利さんも新たに加わることになった。
「とりあえずはこれで一旦、求人誌への募集を打ち切ってもいいかな?」
「そうですわね、広告掲載費用は安くはないですし」
金を出して求人広告雑誌に募集を載せた意味はあんまりなかったけど、まあこれも経験だと思えばいいか。
”自分もプログラミングができるようになって自分でゲームを作り、ヒットゲームを作って、中村光ニ氏みたいなゲームプログラマになって、お金をたくさん儲けたい”
というマイコン少年は少なくないはずなんだけど、求人雑誌よりゲーム雑誌で募集したほうが良かったかもな。
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