桃の子太郎討鬼伝説のTRPG原案が出来上がったので早速出版社に持ち込んでみた、そしてそろそろ節税についても考えるべきか

 7月も半ばになり一学期の一学期期末考査も終わった。


「よし今回も全教科満点のトップだったぜ」


「一緒に勉強しているのに差がつくのは、なにか悔しいわね」


 斉藤さんはそういうがなにせ俺の場合はチートだしな。


 まあ、成績が下がらなかったことに少し安心しつつ、一学期の終業式が終われば夏休みになる。


「よし! ようやくできたな」


 そしてようやく桃の子太郎討鬼伝説のTRPGルールやリプレイ、ソロアドベンチャー的なゲームブックなども原案が完成した。


「できたっすね!」


 明智さんと明智さんのお兄さんにも手伝ってもらったおかげでだいぶスッキリしたと思う。


「本当すっきりとまとまってよかったね」


 基本的にはわかりやすさを優先するために勇者や剣士、忍者、巫女、陰陽師と言ったクラス制の10面ダイスを2個使う100%ロールの下方判定で、レベルアップはあるがクラスチェンジやスキルの概念はなし。


 はっきり言えば地下迷宮龍にも似たようなシステムだな。


 データ的には戦闘に関するものが中心を占めて、忍者には罠発見などに有利な修正がついたりするけど、忍者以外はそれができないというわけではないようにしてる。


 忍者しかそれができないとそれ以外のプレイヤーが何もできなくて暇になっちまうからな。


「では早速アポを取りましょう。

 本社は東京都新宿区揚場町4番地のはずですわね」


「あれ?

 千代田区の富士見じゃなかっっけ?」


「門川書店の本社は昨年移転しておりますわね。

 一部グループ企業は残っているようですが」


「ああ、富士見出版はそっちに残ってるんだっけ」


 このころ富士見出版はアダルトアニメの『くりいむそーだ』シリーズのノベライズを数多く手がけた富士見美少女文庫がメインだけど、ファンタジーライトノベルブームの初期大ヒット作”ドラゴンスレヤーズ”が大ヒットして、ライトノベル雑誌月刊ドラゴンスレイヤーマガジンを創刊するくらいになる稼ぎ頭になったりもするはずだ。


 この頃のTRPGリプレイはボードゲームの兄弟のようなものとしてボードゲーム雑誌に掲載されていて、1984年には『タクテクスコンバット』誌では、『ドリフター』の日本語版が発売されたことに合わせてリプレイが掲載され、1985年には『シミュレーター』で国産TRPG道々のリプレイが掲載され、単純なルールの解説のためでなく、行われたセッションを元にして一つの物語を読者に楽しませるために書かれたこれは豊富なイラストやプレイヤーキャラクターたちの個性を活かしたテキストも相まって、読者に強く印象付けられて後のTRPGリプレイにも大きな影響を残している。


 明智さん達は当然というべきかこのリプレイの存在を知っていたので、自作TRPGのリプレイをかきおこすのも割とスムーズだったし、最上さんのおかげでキャラクターたちのイラストもあるからよりわかりやすい。


 門川書店は1970年代には文芸路線から推理小説などの一般大衆向けに路線転換し、”狗神家の一族””戦国に転移した自衛隊””セーラー服とガトリング砲””日本水没””時を賭ける少女” のような自社で出版した書籍を映画化し、それをテレビコマーシャルを利用して大々的に販売するメディアミックス戦略を成功させてもいる。


 そして1980年代には情報誌の企画なども行うようになり、85年には79年に制作されて、再放送で大ヒット中でガンガンプラというプラモデルが爆発的に売れているTVアニメ”機動要塞ガンガン”の中に出てくる”先行者”という一種のエスパーのように共感能力というか攻撃を察知する能力を持っていて、”キュピーン”という音とともに額に一瞬稲妻のようなものが走り、瞬時に敵を察知して倒す者たちの名前をとった月刊先行者も創刊したりなど、売れると思えば新しいものを取り入れるのは比較的得意な出版社でもあると思う。


「では早速アポを取ってみますわ」


 会長が門川書店とアポをとってくれたので、後日アポ取りができた日時に門川書店の入ってるオフィスビルを訪れた。


「流石に今までのゲーム会社と比べてすげえでかいビルだな……」


 ちょっとそのビルの大きさにびびった俺に会長が声をかけてくれた。


「やることは、いつもと同じですから平常心でまいりましょう」


「お、おう、そうだな」


 そしてビルに入り入り口にある受付でいつものようなやり取り。


「失礼します、本日このお時間でのアポを取っています北条と申します」


「はい、確認いたしました。

 応接フロアへご案内いたします」


 応接室じゃなくて応接フロアってあたりがまた違うよな。


「ありがとうございます」


 というわけで応接フロアへ案内されたが、周りのデスクでは編集さんや作家さんが打ち合わせをしているっぽい。


 対応してくれたのは、この頃のゲーム雑誌コンポジットの編集長の加藤辰男さん。


 もともとは玩具業界の新聞記者としてテレビゲームを紹介していた人でテレビゲーム雑誌の企画書を出して、企画が通ると編集長になった人。


 雑誌の想定読者層は、小学校高学年から中学生や高校生の男子のはずで、ゲームやパソコン本体の購入ガイドなどパソコンのゲームを記事を中心としつつも、そういったゲームを含んだデジタル世代の娯楽全体を扱う雑誌で表紙には人気女性アイドルを起用している。


 アダルトゲーム『天使たちの午前』などパソコンのアダルトゲームの記事を乗せつつも、ホムコンの大ヒットにより、『ゼピウス』の無敵コマンドを最初にとりあげたりなどで大きく売り上げを伸ばしている状態だ。


「今日はゲームブックのような企画の持ち込みと聞いてるけどその原稿はあるかな?」


「はい、こちらになります」


 俺は持ってきた原稿用紙を揃えて渡した。


「ふむふむ、じゃあ少々失礼して中身を確認させてもらうよ」


 彼は原稿用紙に目を通し始めた。


「ほうほう、なるほど」


 そんな感じで積み上がったところで感想を言ってくれた。


「うん、これはなかなか面白いね。

 うちでもゲームブックのようなものを出版したいと思っていたし、まずはリプレイをコンポジットに掲載しながら文庫でルールブックとリプレイ、それにソロシナリオを出版したいとおもうよ。

 これはきっとヒットするね。

 ぜひ全てをこちらで扱わせてほしいけどいいかな?

 何なら小説にしてもいいくらいだと思う」


 そこで会長が身を乗り出す。


「では、このゲームをそちら様で出版させていただくとして、こちらの印税はいかほどでしょう?」


「そうだね、発行印税は一割の10%だね。

 売り上げの実績次第では印税はあがるけど、最初はみんなそうだから」


「なるほど、了解いたしましたわ」


 そして契約書を取り交わして契約終了。


「うん、ではこれで契約成立だね」


「ありがとうございます、書籍に掲載されるのは何時くらいからでしょう」


「リプレイは9月くらい、文庫本の出版は12月くらいかな」


「わかりましたわ。

 どうぞよろしくおねがいしますわ」


 まあこういった出版物に関しての収入はまちまちで一冊単行本を出して100万円くらいで終わる場合もあれば、「ハーリーポッター」の作者J・K・ローリングストーンさんなどは作家としての史上最高額「1億2500万ポンド(180億円)」の年収を記録したりもしてる。


 日本の作家の場合70年代以降はトップが年収2億から10億くらいのようだけど年収が億から5千万に達する人も現状では少なくはない。


 もっともバブル崩壊後の1994年以降は作家が長者番付上位に名を連ねることはなくなったけど。


 ちなみにこの当時に関しての85年の時点では、総人口1億2104万9千人に対し年少人口2603万3千人で生産8250万6千人、老年人口が1246万8千人で、法人税率は85年の時点では、基本税率43.3%、中小31%、共同組合公益法人28%、所得税+住民税は88%でその内訳は、所得税70%、住民税18%、所得税頭打ちは8000万円。


「しかし所得税と住民税をあわせて88%って江戸時代の薩摩島津藩の8公2民よりひでえよな」


 俺がそう言うと会長が言った。


「あらこれでも所得税率は83年より5%下がりましたのよ」


「そりゃ国税は酷税とか言われるわけだ」


2018年だとこれが総人口1億2520万9603人で人口自体は多少増えているが年少人口が1573万5692人とめちゃくちゃ減っていて、生産人口は7484万3915人とこれまた大幅に減って、老年3462万9983人万とめちゃくちゃ増えていてこのあたりから年金が怪しくなっていった。


 一方の法人税は基本税率23.2%、中小19%、共同組合公益法人19%、中小特例が15%で45%、所得税+住民税は55%でその内訳は、所得税45%、住民税10%、所得税頭打ちは4000万円。


 平成26年82015年)までは所得税+住民税は55%でその内訳は、所得税40%、住民税10%、所得税頭打ちは1800万円だったんで金持ち優遇といわれていたし、税収が減った分は消費税で補ってるわけだからそれもどうかとは思うけどな。


 ちなみに公益法人等に該当する、社団法人、財団法人、宗教法人、学校法人、社会福祉法人などは基本的には非課税だが収益事業を行って収益が生じた場合は、課税対象となる。


「だからゲーム製作部を別会社で立ち上げたのか」


「そういうことですわね」


「まあ節税対策は税理士の先生に頼むけどな」


「そうしたほうがいいですわね」


 ちなみに新宿までの移動にかかる交通費なども経費にできるのでしっかり切符は取っておく。


 また営業等のため宿泊を伴う出張が多くなれば「出張旅費規定」を作成して宿泊費も経費に含めることができる。


 必要であれば北海道や大阪、博多などに出張に行ってそれを経費でおとすこともできるというわけだ。


「上杉先生が自動車持ってたら社用車扱いにさせてもらおうかな」


「それもいいですわね」


 個人の自家用車であっても、会社の「社用車」とすることで、車の取得費用を経費にでき、ガソリン代、自動車保険の掛け金、高速道路料金、車検費用などをすべて経費として落とせるので、結果的には節税できる。


 もっとも個人名義と違い法人名義だと保険料が高くなることが多いが。


 というわけで早速、上杉先生に相談しに行った。


「なんだ、私の車をお前達の会社の社用車にしたいだって?」


「はい、そうすれば会社の社員の移動に必要な場合のガソリン代や高速料金はすべて経費から出せます」


「何だそれをもっと早く言ってくれ。

 それなら構わないし必要な時は足になるぞ」


「ありがとうございます」


 法人向け生命保険に加入してその支払を会社の費用から払ったり、取材旅行費や求人広告費、広告宣伝費なども経費にできるしオフィスで使う事務用品、必要な印刷物は、すべて消耗品として経費計上できる。


「社員旅行も必要経費にできますので夏休みにどこかに行くのもいいでしょう」


「ああ、新しいゲームのネタになるものも見つかるかもしれないし、電鉄ゲームの取材も兼ねて夏休みは日本各地を旅行するのもいいかも」


 会社の社員旅行、すなわち社員で出かける旅行は福利厚生費として経費にできる。


 ただし、旅行期間は4泊5日までで、全社員の半数以上が参加しており、1人10万円までの旅行であることなどが経費として認められる目安になるが。


 その他福利厚生費用としては保養所や別荘・社宅の購入や維持費用。

 新宴会・忘年会・親睦会など社員全員が参加する宴会の費用。

 残業時の食事代や設立のクラブ・サークル活動にかかる費用。

 会社に必要な資格取得費用などは計上できる。


 決算賞与を支払っても損金扱いにできるが金額によっては所得税のほうが高くなる場合もあるから注意は必要だが。


「何にせよ必要なお金は使わなければ税金に取られるだけですからね」


「まったくだな」


 節税がどうとかあんまり考えたくはないが、ただ貯めるだけでは税金で持っていかれるだけなので、必要なものには金をかけてそれを経費としてちゃんと計上するのも大事なんだよな。

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