週刊少年ホップの袋とじで俺たちの作ったゲームが紹介されたおかげで爆発的に売れたよ

 5月には一学期中間考査、いわゆる中間試験があるが、ゲーム制作部では中間テスト前だからと慌ててる人は特にいないようだ。


「テスト対策はどの範囲をやっておけばいいですか?」


「今回はここからここだと思うよ」


「そうですか、ありがとうです」


 朝倉さんに出題範囲予想を教えていたら最上さんが感心していた。


「なるほどなー、そうやって山を張っておけばテスト対策も楽だよね」


「まあ、全部覚えてしまうほうが楽ですけどね」


 俺はそう言うと最上さんが否定する。


「いや、普通はそれ無理だからねー」


 朝倉さんもウンウンうなずいてるね。


「本当です。

 ゲームを作りながらテスト範囲でないものまで全部覚えるなんて普通は不可能です」


 そこでフッと会長が笑った。


「私やお母様期待の特待生なのですからその程度できなくては困りますわ」


「なるほど特進の上の特待扱いだったわけですか」


「それはすごいねー」


 会長の言葉に朝倉さんと最上さんは納得してるけどイマイチ意味がわからん。


 そして今週の週刊少年ホップの袋とじを開いてびっくりした。


「おおお?! 週刊少年ホップの巻頭袋とじに俺たちのゲームが紹介されてるぞ」


 そこで会長が澄ましたように言った。


「わが校の部活で制作したものだということもちゃんと載っているはずですわよ」


「まじか??」


 改めて読んでみたらたしかに個人名までは出ていないが、今年結成したばかりのうちの高校のゲーム制作部の5人で作ったことまで書いてあった。


「これってゲームソフトの宣伝に加えて、この学校の宣伝も?」


「ええ、電話でお願いしてみました」


 そういえばドラクレとかはこんな感じで週刊少年ホップで紹介されていたから子供の認知度は高かったんだよな。


 フェニックスなり堀井雄次氏個人なりがホップの編集部とつながりとかがあったんだろうな。


 そして、そのおかげもあってかその後に発売されたホムコン版の売上本数は予想を相当うわまわってあっという間に150万本を突破し、パソコン版も1万本ほどは売れたようだ。


「これはかなり予想以上だけど、やっぱり宣伝っていうか売りたいものの存在を知ってもらって興味を引くのって大事だよな」


 ホップのサッカー漫画コマンダー翼の影響で日本にプロサッカーリーグができたりするくらいだしな。


 でまあ、あまりにも予想以上の金額の収入になったせいか、会長が唐突に奇妙なことを言い出した。


「この際、貴方が16歳になったら会社を設立してはどうかしら、誕生日は6月でしたわよね」


「ええ、そうですけど……高校生が会社設立なんてできるんですか?」


「未成年でも親権者の同意があれば可能ですわよ。

 毎年新規起業される会社の1割ほどは未成年名義ですし」


「そいつは知りませんでしたよ」


 ぶっちゃけ起業は大学卒業後のつもりだったしな。


「もっとも、普通は節税対策のための実態がないぺーパーカンパニーなどを作る場合に利用されることが多いわけですが」


「まあ普通は高校生で取締役社長ができるとは思わないですよね」


「理論上は義務教育の中学校を卒業すれば、起業や就業は可能ですわ。

 昔は中学校卒業からそのまま自営業などの方も多かったと聞きますし」


「ああ、なるほど」


 ちなみに斉藤さん、最上さん、朝倉さんには俺たちの会話はちんぷんかんぷんみたいだ。


「でも学校の部費にするんじゃなかったんですか?」


「おそらく10億円ほどと当初の想定より遥かに入ってくる金額が大きかったですし、私がそれを皆から取り上げるような形もよろしくありません。

 それに我が学園に入学すれば在学中に会社社長になって億万長者になれるという宣伝もできますからね」


「なるほど、つまりはいつものように会長と学校の宣伝の都合ってことですか」


 くくっと笑って会長が言った。


「それはいけませんか?」


「いえいえ、むしろ学校が部費として全部持っていくものだと思ってましたし、そもそもこんな金額になるとは予想してませんでしたし?」


「もちろん会社のお金ということだからと言って役員が私的なことに勝手気ままにお金を使うことはできませんが、色々経費にすることはできるようになるでしょう。

 無論まずは親御さんが賛成するかどうかという問題もありますけど」


「うちの両親なら賛成はしてくれそうですけどね」


「なら、会社の設立手続きは司法書士や税理士の先生に依頼すればいいでしょう」


「株式会社の最低資本金は35万円だったっけ?」


「ええ、有限会社の最低資本金は10万円ですが、株式会社にしてしまったほうが良い気がしますわね」


 株式会社の最低資本金は1990年(平成2年)までが35万円、その後は1000万円であったのに対して、有限会社の最低資本金は1990年(平成2年)までは10万円、その後は300万円となった。そして、2003年2月に新事業創出促進法が改正され、特例措置として資本金1円での株式会社や有限会社の設立が法的に可能となり、旧商法や旧有限会社法を統合して2006年5月に施行された会社法では、最低資本金制度は廃止され名目上は1円から起業できるようになった。


「確かに」


 まあ、いろいろ面倒くさい手続きとかがあっても専門家に頼めば大丈夫か。


「いずれにせよ年齢が16歳になってからの話ですけども」


「そうですね、といってもさほど先でもないですけど」


 もう5月だし6月はだいぶ先のことと考えるほど先のことでもないから、両親には話しておいたほうがいいか。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る