ゲーム完成記念パーティをやりながら、次に作る新しいゲームに関しても話したよ

 俺たちが作ったゲームはフェニックスでパソコンやホムコンへの移植作業をしてもらいそれぞれが可能な限り早く発売されることになった。


 そして、週が明けた月曜日の放課後に、俺たちはゲーム完成記念と委託販売成功を祝ってのおめでとうパーティを行なっていた。


「それではゲームの委託販売成功を祝って乾杯しましょう!」


 会長が音頭を取って、コーラとか烏龍茶とかの飲み物やポテチなどをつまみにして乾杯だ。


「乾杯!」


「乾杯」


「かんぱーい」


「乾杯です」


 ゴクゴクとそれぞれが飲み物を飲んでポテチをつまむ。


 そして会長さんが上機嫌で言った。


「それにしても三週間ほどで作り上げたゲームが2億円にもなるというのは正直驚きましたわね」


 俺はちょっぴり苦笑しながら言った。


「そんなに売れないかもしれないしあんまり捕らぬたぬきの皮算用はしないほうがいいですよ」


「たしかにそうかも知れませんわね。

 でもアイデアを元にお金を作り出せるというのは素晴らしいと思いますわ」


「ああ、ゲームとかはそういうものですからね」


 そんなやり取りを会長としていたら朝倉さんが聞いてきた。


「ところでこのあとはどうするんです?。

 しばらくなにもしないでボーッとしてるのですか?」


 俺はそれに首を振る。


「いや、俺は今度は落ち物パズルゲームの制作に取り掛かるつもり」


 俺の言葉に斉藤さんが首をかしげた。


「落ちもの?」


「うん、パソコンではソ連邦の科学者が開発して人気のテト&リスっていうゲームがあってね」


「よくわからないわ」


「じゃあ、実物を見せたほうが早いか」


 俺は秋葉原の怪しい店で手に入れたデッドコピーのテト&リスのソフトが入ったフロッピーディスクをパソコンにいれてそれを立ち上げた。


「なんか随分……」


「まあ見た目はちょっとだけど、やってみると面白いよ」


 壁などに<>などの記号を多用した画面なので洗練されてるとは言い難いのだけど、落ち物パズル元祖としての面白さは間違いない。


 この当時のソ連は冷戦下の状況のため、国内でプライベートなビジネスを行うことは違法であり、あくまでも個人的に楽しむものとして最初はソ連製コンピュータで開発が進められ1984年には完成していた。だが、1985年にIBM製コンピューターにテトリスを移植し友人たちにプレゼントしてこっそりとプレイしていたものが、東欧に密輸され、西欧やアメリカにも渡って、日本にも回ってくるくらい広まっていた。


 ここでめんどくさい話になるんだが、プライベートビジネスが禁止されていたため、その版権は旧ソ連が所有し、公共機関の外国貿易協会(ELORG)に移されたのだけど、それが後に契約上の色々問題を引き起こすことになるんだ。


「たしかに面白いわねこれ」


 斉藤さんは熱中してやっているとおり落ち物パズルの特徴はその驚異的な中毒性で、一度はまり込むと時間を忘れてやりこんでしまうのである。


 あ、ちなみに俺の手元にあるテト&リスは密輸品を更にかってに日本のパソコン用に移植したもので、許諾を得て販売されているものではないので表には出せないけど、このころ秋葉原というのは怪しい怪しい露天の店でこういったどこが作ったかわからないパチモノっぽいファミコンソフトやらデッドコピーのパソコンソフトやら電子部品やらが堂々と売られていたのだ。


「でしょう、でもそのままだと出せないからいろいろ変えるつもりだけどね。

 形じゃなくて色を揃えると消えるって方式にするつもり」


 俺がそう言うと斉藤さんは強くうなずいて言った。


「なるほど、それはぜひやってみたいわ」


「で、その間なんだけど、斉藤さんや会長にはエイサー王伝説の方のシナリオを書いてほしい」


「あら、シナリオは貴方が書くのではないのかしら?」


「ああ、ごめん。言葉足らずだったね。

 エイサー王伝説は基本的に話は一本道にするんだけど、話の中で一定の区切りでエイサーはヒロインの誰かに話しかけてその会話をしたヒロインとの親密度が上がって、最後のエンディングは一番親密度が高いヒロインと関係するエンディングにするつもりなんだ」


 美少女系フラグ式アドベンチャーゲームなどだとよくあるやり方だし、SLGやSRPGなどでも多用されたはずだな。


「なるほど、メインヒロインは最後の最後で決めるのではなくて、それまでのシナリオの中でどのように主人公とすごしたかで決まるわけで、つまりその主人公とヒロインの会話を書けばいいのね」


「うん、斉藤さんは常に冷静沈着な魔女マリリンとエイサーの会話を10日分作り上げてほしいんだ」


 俺はそう言ってストーリーのあらすじとマリリンの人物設定を渡した。


「わかったわ、これに従って書いてみるわね」


 斉藤さんがそう言うと会長も立ち上がって言った。


「私にもそれをやらせてほしいですわ!」


「会長もそう言うと思っていたから、会長には男装の麗人で実は王家の姫の騎士である高潔でちょっと高飛車なランスレットとのやり取りを担当してほしいんだ」


 会長にもストーリーのあらすじとランスレットの人物設定を渡した。


「もちろんです」


 とそこで最上さんも手を挙げてきた。


「あ、じゃあ私もー」


「じゃあ、最上さんは幼馴染で世話焼きの僧侶のアイリーンを担当してもらえるかな」


「もちろんおっけーだよ!」


 朝倉さんも手を挙げる。


「なら私もなにかやるです」


「朝倉さんにはミステリアスな女盗賊のクラリッサを担当してもらおうかな。

 普段はぶっきらぼうなんだけどいざというときには励ましてくれるみたいな」


「なんで私の担当がそんな人物設定なのかよくわかりませんがわかったです」


 最上さんと朝倉さんにもストーリーのあらすじとそれぞれの人物設定を渡した。


「あ、最上さんにはこのパズルゲームで右側に開いてる場所にプレイヤーを応援したり励ましたり驚いたりする女の子の絵を描いてほしいし、朝倉さんにはBGMやSEを作ってほしいんである程度できたらそっちもお願い」


 これはぷよ&ぷよを元にしたアイデア。


 ただコンピューター対戦やプレイヤー対戦の要素を入れるといきなり制作の難易度がぐんと跳ね上がるので、あくまでも可愛いキャラが反応してくれるだけにとどめておく。


「りょーかい」


「わかりましたです」


 こうやっていれば俺がパズルゲームを作ってる間にみんなの手が空くこともないだろう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る