新たな部員の作成ゲームの希望の内容は桃の子太郎討鬼伝説のTRPG化?
さて、桃の子太郎討鬼伝説の売り上げがファミコンで1割、パソコンで2割という契約だったがそれが合わさった金額が10億円近くの収入になるとしても、今のところその銀行口座のお金を管理してるのはこの部活の会計の会長である。例えばゲームの研究のために必要な機材としてホムコンやSAGAマーク3の本体やそのカセットを買ったりや飲み物とかおやつの購入に関しても会長の許可は必要。
購入した際も当然領収証などもきちんともらうことをしないと自腹だ。
「こういう時にけじめをつけるのは大事ですからね」
「まあ確かに、下手すれば横領だもんな。
でも色々最新機材も増えたしテストや開発もしやすくなったな」
「無論投資は必要ですので。
それに無駄にお金を貯めておいても税金として持っていかれるばかりで馬鹿らしいですし」
そう言う会長に俺はうなずいた。
「そういうもんらしいね」
「そういうものですのよ」
そんな話をしているところで部室に入部希望者がやってきた。
「一年商業科の
自分、ゲーム制作部に入部希望ですができるっすか?」
それに対して会長がいつもの対応を返す。
「なるほど貴方はどのようなことができてそれをどうやってお金に変えられるのですか?」
とっさにこう聞かれても大抵ははっきり回答できる奴はいなくて今のところ部員は増えてない。
「はい、自分は桃の子太郎討鬼伝説のTRPG化とそのリプレイなどを書籍化して出版社に売り込むのがいいと思っているっす!
システムもある程度考えてきたっす!」
と持っていたノートを差し出してきた。
俺はそれを受け取って見てみたけど、なかなか細かく作られてるな。
ちなみに現在は地下迷宮龍の日本語ルール発売前で、翻訳ゲームのドリフターと国産の道々の2個ぐらいしかまだTRPGの日本語ルールはなく、ロード島のリプレイ掲載も来年の9月号から。
もっとも、好きな人は英語版を翻訳したもので遊んでいたりするんだけど。
ちなみに国産初ゲームの道々のリプレイ自体はすでにある。
「TR……とはいったいなんですの?」
会長はTRPGを聞いたことがないようで首を傾げている。
それに対して斉藤さんがこれだからゲームの素人はと言わんばかりに説明に入った。
「TRPGはテーブルトークロールプレイングゲームの略。
コンピューターロールプレイングゲームのもとになったもので、プレイヤーはルールブックごとに定められているルールに従って自分が演じる分身となるキャラクターを作成して、ルールに定められている世界観に沿ってゲームマスターと言われる人間が物語を進めて、必要に応じて成功失敗の判定をして冒険などを行なうものね」
さすが斉藤さんは詳しい。
「それって面白いのですか?」
朝倉さんが首を傾げながら言う。
「それははっきり言えばゲームマスターの力量や参加するプレイヤーの行動や運次第ね」
「なんだか面白くないと言ってるように聞こえるよ?」
最上さんも斉藤さんにそう言う。
「誰でも楽しめるものではないのは確かね。
でもハマる人はものすごくはまる遊びのようよ」
「でもやったことはないのでしょう?」
会長がそう言うと斉藤さんはうなずく。
「ええ、実際はやったことはないわ」
「じゃあ皆さん一度やってみるっす!
GMは自分がやるっす!」
と明智さんが手を挙げて言った。
「まあ、一回試してみるのもいいんじゃないかな?」
俺がそう言うと会長や斉藤さんもうなずいてくれた。
「まあ、一度試してみるくらいなら?」
「そうね」
というわけで地下迷宮龍の改造ルールらしい桃の子太郎討鬼伝説のキャラクター作成から始まって、俺以外はみんな職業選んでそれを決めたあとに、ダイスで能力値を決めたりしてなんやかんやでキャタクター作成終了。
ちなみに職業は会長が剣士、斉藤さんも剣士、最上さんも剣士、朝倉さんが忍者。
剣士は戦士で、忍者はエルフっぽい火術などの攻撃魔法と物理攻撃の両方できる万能職で、俺は勇者の太郎固定、なんか差別されてないか、これ。
「仲間に巫女や盗賊がいないとやばい気がするんだが……」
「まあこういうこともよくあるっす、時間ももったいないので始めるっす」
さらっと言う明智さんがちょっと怖い。
だが、人身御供になる奴がいない限り回復系は誰もやらないこともあって結構不人気ではある。
話は鬼に領主の館が襲撃されて太郎が鬼切丸を抜いて仲間が集まったとこから始まった。
「では、みんなで鬼ヶ島に進むでいいっすか?」
「ああ、そうしよう」
先を進んで雑魚の盗賊を刀などでバッサバサ倒すと皆スッキリした表情。
「ああ、これは楽しいですわね」
「たしかにこれは面白いわ」
敵からの攻撃も食らってるが治癒ができるやつがいないのでそのまま進む、そしてラスボスの鬼との戦闘で……見事に負けた。
「あー、もうちょっとでしたのに」
「サイコロの目が駄目だったわね」
「うーん残念」
「確率的には勝てそうだったんだけどなぁ」
「そうですか?」
朝倉さんだけは懐疑的だがまあ楽しんだから良しとしよう。
「まあこんな感じっすけど、どうっすか?」
と明智さんが言うと我に返った会長が言う。
「確かに面白くはありますけど、これをお金に変えることができますの?」
「それは……うーんと」
明智さんが言葉に詰まってるので俺は助け舟を出す。
「現状ではまだTRPGの日本語のルールは少ないですけど、箱に入ったルールブックやキャラクターシートに特殊な20面体のサイコロやフィギュアなんかを含めて一つ5000円くらいで売ってるはずですね。
アメリカでは結構人気もありますし。
ただ、箱型は専門店でしか買えないのでそこまで数は出ないでしょうけど、それなりの金にはなると思いますよ。
それに日本の翻訳されたゲームブックなどは文庫で販売されてますから、文庫やA4サイズのムックでTRPGのルールブックを売るのもありでしょう。
これなら普通に書店にならべてもらえるはずですし、多分10万部くらいは普通に売れるとおもいますよ。
どうやって出版社に持ち込むかとか問題はありますけど」
「なるほど、お金になるのでしたら大歓迎ですわ。
明智さんの入部を認めましょう!」
会長がそう言うので俺は思わずこぼしてしまった。
「え?! そんなあっさり決めていいの?
気をつけないとTRPGにも時間ガリガリ取られるぜ?」
俺がそう言うと会長はすまし顔で言う。
「そのあたりは部長であるあなたがなんとかしてください」
「へいへい、じゃあなんとかしましょうかねえ」
「皆さん改めて自分、明智をよろしくおねがいするっす」
まあ明智さんが嬉しそうだしまあいいか。
TRPGのルールブックは追加ルールとかシナリオ集とかリプレイとかノベライズとかでなんだかんだで稼げるはずだし、今ならこっちもブルーオーシャンだろうし、先駆者になっておくのは悪くないはずだ。
それにそれを元にパソコンでRPGにしたりもできそうだしな。
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