2日目は班で別れて行動
さて、修学旅行一日目の夜はみんながちょっとハイになって大騒ぎだったけど、それも疲れてくれば一人二人と寝落ちしてしまい大部屋も静かになった。
そして修学旅行2日目は班行動になるんだけど……。
「前田は斉藤のこと好きなんだってよ!!」
などと唐突にバラされる俺の昨夜の発言、慌ててる俺に対して斎藤さんはしれっと言った。
「あら、私も前田くんのことは好きよ。
本の趣味とかで話も合うし」
斎藤さんのその発言にもっと慌てると思っていた男子生徒はちょっとつまらなそう。
「そんなの女子はみんなしってたよねー」
「バレバレだよねー」
どうも女子にも昨夜の恋バナ情報が回っているのか、普段の態度でバレてるのか、ほぼクラス全員にバレてるらしい。
「ま、まあ、趣味の話が合うのは大事だよね」
俺がそう言うと斉藤さんは真面目に言う。
「ええ、そうよ、なかなか趣味の仲間というのは見つからないから大切なのよ」
なんだかんだで俺と斎藤さんの仲がいいということは、すでに同じクラスの女子にはそういうものと認知されていたらしい、男子は必ずしもそう思ってるわけじゃないと思うけど。
「今日は班で分かれての京都見物です、事故に遭ったり迷子になったりしないように、各班、各自気をつけて行動してください」
「あれ? 先生たちはその間何をするんですか?」
「ホテルで明日以降の準備とかいろいろですね。
あくまでも修学というのがこの旅行の目的であるということを忘れないようにしてください」
というわけで二日目はクラスの男女6人を1班として6班に分かれてのそれぞれ別行動で、移動は公共のバスとか電車とか場合によってはタクシーを使っての移動になる。
なので初日のように移動の最中にカラオケを熱唱したり、カードゲームで遊んでたりはできないけどこうやって移動手段を考えるのも社会勉強ってことらしい。
「まずは祇園に行ってみましょう」
実質的な班長である斎藤さんがみんなに言う。
「舞妓さんに会えるといいね」
俺はうなずいてそう言い、今田くんも同意した。
「そうだなぁ、せっかくだし美人の京都のお姉さんに会えるといいよな」
今田くんがそう言うと斉藤さんが言う。
「舞妓さんの殆どは京都出身じゃなく、地方からやってきた人たちよ」
「え、そうなん?」
今田くん、そこでなぜ俺に聞こうとする?
「ああ、そうみたいだよ。
ほとんどの人は京都出身じゃないみたい」
「そうなんだ、しらなかったぜ」
「私もー」
「そうなんだねー」
宮崎くんに朝倉さんと細川さんも知らなかったみたいだから、結構マニアックなネタなのかも。
市バスで祇園にむかい停留所で下車、そして着物のレンタルできる場所へ向かう。
「すみません、予約していたものですが」
「はいはい、お待ちしていましたよ」
京都といえば着物で有名だし、そのまま散策もできる。
みんな着物に着替えると気分は幕末だね。
「なんか新選組とか維新志士になった気分だね」
「たしかにな!」
「木刀持ってくればよかったぜ」
そんなことを言ってる俺たちの前に髪を結い上げた、女子たちがきれいな着物に身をつつんでやってきた。
「どうかしら、この格好は?」
斎藤さんにそう聞かれた俺は迷わず答えた。
「すっごくきれいだよ」
「あら、お世辞でも嬉しいわ」
そして班の他の人たちがバカップルを見る目で俺達を見ていた。
「いやあ、お熱いねぇ」
「そうよねえ」
そして、舞妓さんをちらっと見かけたりしながら、みんなで八坂神社へお参り。
「祇園さんはかなり歴史と人気のある神社なのよ」
斎藤さんがそう言うとおり確かに人がいっぱいいる。
「ここのご利益はなんだろう?」
今田くんがそう言うと斎藤さんが答えた。
「祀られている神様が
「縁結びねぇ」
「本殿床下にある龍穴という池から清水とともに気が湧き出ていて、その水に手を触れるとご利益があるそうよ」
そう聞くと女子二人が目を輝かせた。
「それは絶対やらなくちゃ」
「そうよね」
うん、中学くらいだと男子より女子のほうが積極的だよね。
なにか“母さんの匂いがする!”“何を言ってるんですか貴方様?”という声が聞こえた気がするが気のせいだろう。
その後、力水に実際にみんなで触れて、お祈りをした後はご飯を食べた後で市バスを乗り継いで北野天満宮へ向かった。
天満宮は学問の神様菅原道真が祀られている場所で九州の太宰府天満宮が有名だけど総本社はこっち。
学問の神様だからご利益は入試合格・各種試験合格・学力向上・学業成就・技芸上達祈祷なんかで、受験を控えた俺たちみたいな修学旅行の学生がいっぱいいる。
「みんな考えることは同じなんだなぁ」
人の多さに辟易してる俺に斎藤さんが言う。
「ええ、結局最後は神頼みなのよね」
科学万能と思われてる世の中でも神社にお参りする人間が絶えないのは不思議ではあるよね。
それはともかくみんなで合格成就や学力向上を願う祈祷を受けて勧学お守、勧学お札、祈願絵馬、必勝はちまき、梅茶、鉛筆のセットを受け取った。
「この鉛筆使って勉強すれば頭良くなるのかねぇ」
今田くんがそう言うと斉藤さんは答えた。
「心の持ちようだと思うわよ」
たしかにそうかもね。
祈祷という行為を受けて自信がつくだけでも勉強の結果は結構違うものかもしれないな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます