HARIE2 ぼっ、ぼっ、ぼくは、そんな、凄い人でも、ないんだな。アッ、アインシュタインの方が、もっと、凄い人なんだな
翌朝。清が目を覚ました時、タシマヤとはジフは台所にいた。
「こっ、これは、泊めてもらった、お礼なんだな。人に何か助けてもらったら、お礼をしなさいって、お母さんがいつも言ってたんだな」
清はジフに何かが描かれた三枚の台紙を手渡す。
「あらあら。清ちゃん絵がとっても上手ね」
「わ! これ、わたしの似顔絵だ。そっくり」
「なんか、紙の切りくずがいっぱい貼り合わさってる。こんな風にして出来た絵、わたし初めて見たよ」
タシマヤとジフは興奮気味に見つめる。
この二人の似顔絵と、あの小高い丘から眺めた町の光景と、昨日襲われそうになったドラゴン風の生き物が描かれていたのだ。
「こっ、これは、はっ、貼り絵っていうんだな。ちぎり絵ともいうんだな」
「すっごぉい! 日本にはこんな芸術もあるんだね」
「斬新ね」
「清くんって、日本じゃ超有名な芸術家なんだね」
「いっ、いや、そっ、それほどでも、ないんだな」
「こっちの国でも清くんは絶対偉大な芸術家として評価されるよ。この貼り絵、町の皆に見せに行こうっと♪ 清くんもいっしょにおいで。町案内もしてあげるよ」
「そっ、それは、嬉しいんだな。ぼっ、ぼくは、旅をするのが、すっ、好きなんだな」
朝ご飯を済ませると、清とタシマヤはわくわく気分でお外へ。
近所をてくてく歩いていく。
ほどなく、
「よぅ! 裸の大将!」
「裸のお兄ちゃん、おはよう!」
「今日はしっかり着込んでるな。裸じゃ寒いもんな」
町に人々から次々と声を掛けられてしまう。
清のことは瞬く間に噂になってしまったようだ。
「清くんは裸の大将じゃないよ。偉大な芸術家だよ。これを見て! 貼り絵っていう手法って作ったんだって」
タシマヤは得意げに清の作品を見せびらかす。
「うおおおおおおおっ! すっげぇ!」
「清という旅人が描いたのか!」
「あたしゃ、一二〇年近く生きて来たけど、こんな素晴らしい絵、初めて見たわ」
「清先生!」
「清画伯、弟子入りさせて下さい!」
「サインちょうだい」
大絶賛の嵐のようだ。
「ぼっ、ぼっ、ぼくは、そんな、凄い人でも、ないんだな。アッ、アインシュタインの方が、もっと、凄い人なんだな。そっ、相対性理論っていうのを、発見してるんだな。ぼっ、ぼくには、むっ、難し過ぎて、なっ、何のことか、さっぱり、分からないんだな」
清は照れ隠しをするかのように逃げていく。
「あっ、待って。清くん。照れ屋さんだね」
タシマヤと清は市民憩いの公園へ。
貼り絵無双清~ぼ、ぼ、ぼくは、いっ、異世界でも、放浪して、貼り絵、するんだな~ 明石竜 @Akashiryu
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