第7話王様ゲームと飛行船

「ね、今日凄い晴れてたから星が綺麗に見れると思うの!屋上に見に行かない?」

アナはクララの手を引いた。

「え、でも…。」

「行って来いよ、クララ!」

そのクララの背中をケイは押した。

「え、あ、うん!」

アナとクララに、カルラもついていった。

「なんのゲームしようか?」

廊下で歩きながら私達は考える。すると、話の最中だというのにケイは星空を見上げた。

「あ、ホントに星綺麗だ。」

寮の廊下は、部屋の前以外周りが出入りできる窓ガラスでできているから外が寮内からもよく見えるんだ。

「流れ星!!」

ケイは叫んだ。

「流れ星は昔、流れている間に願い事を唱えると願いが叶うって言われてたんだって。」

私は星空を眺めながら言った。

「そんな簡単な方法で願いが叶うなら、こんな残酷な世界をどうにかしてくださいって言えばいいのにな。」 

「私達が生まれる前の話だし、全然平和なときだから、そういう考えはないんじゃない?自分達の私利私欲に費やしてたのね。」

私とケイとセルシオは部屋に戻り、棚にいくつかしまってある遊び道具を取り出した。

「王様ゲーム??」

「くじ引きで王様になった人は、なんでも言うことを聞いてもらえるんだよ」

へー!、と、男達は感心し、なんでも知ってるな、と言った。

「楽しそうじゃん!」

「やろうやろう!」

そうしていると、また、流れ星が流れた。それを見たら私の良くない思い出が、脳を支配していった。

それは…。昔々の王女たちのお話。

「お姉ちゃん、流れ星だって!」

「あぁ、昔はね、願いが叶うおまじないがあったんだって。だけど本当は故人の魂らしいわ」

そう言いながら、お姉ちゃんは行ってしまう。これは王邸の中だったから、私はそこそこ平和な生活をしていたんだ。お姉ちゃんとは違って。

「お姉ちゃんはどうしていつも怪我してるの?」

「勝って生き残っているから。私は誰よりもこの国のためになれる。」

その頃の私には分からなかった。だけど、今となると、きっとお姉ちゃんは世界十大舞楽が使えたんだと思う。見たことはなかったけれど…。特訓の姿も、勉学の姿も。

「そっか!じゃあ私も強くなりたいっ!」

「寝言は寝て言いなさい。あなたは私と違う。向いてないわ」

…………、うわぁー!ぁ、あ、あ…あぁ…目が、覚めた!

「アリア!大丈夫か?!」

「あ、大丈夫!」

セルシオに抱えられて、ハッとする。

「ただいま〜!」

アナたちも帰ってきた。さあ、王様ゲームだ!

「王様だーれだ?」

王様はアナだった。

「わ!やった〜、じゃあね…2番が、好きな人に愛を伝える!」

ある一人を覗いて、みんなけろっとしている。

「なんで私なんだよ…」

カルラはげんなりしていた。

「好きな人とかめんどくせーことしねぇよ…まったく。」

そう言いながら、私の方にちかよって…

「アリア、大好きだぞ!」

ギューッと抱きしめた。

「男じゃないの?!」

アナはびっくり仰天!私も驚いたけど、なんか愛らしくていいかな。

「ありがとう。」

私も抱き返した。さて。まだまだ続く。

「じゃあ二回目ね。王様だーれだ?」

「あ、僕だ。」

ケイだった。

「じゃあ、1番と、4番は第一印象をお互いに伝えてください!」

1番は私だった。で、4番はセルシオ。

「うーん、不器用そうで、なんだか気分屋なのかと思ってたけど、今は周りのこと考えられるし、優しくていい仲間だと思ってる!」

「ツンとしてるから、人見知りかな、とか思ったけど……い、今は……」

そう言うセルシオを、カルラがぐっと口元を覆い、目でサインを送っている。

「同じように良い人だと思ってるって!」

にぃっと笑うカルラに無理があったのは言うまでもないけど、諸事情に首を突っ込むわけには行かないから…

「ありがと」

「ねぇ、アリア。話聞かせてよ」

ケイは、根に持っていたらしく、番号の札を捨てて言った。

「うん…。分からないところもあるんだけど、お姉ちゃんは私の憧れなんだ。強いから。だけどお姉ちゃんは私の事好きじゃなかったみたいなの。私よりお姉ちゃんの方がずっと厳しく育てられたから…。あの、アンジュっていう…」

みんなは一瞬フリーズ。そして

「えええええええええー!!!!!」

「あの、アンジュ様?!」

「お名前伺ったことはあったけど…王女様だったのか!」

「なんか雰囲気似てなくもないけど」

みんなびっくり仰天。まぁ、サイバー戦士を広めたのもお姉ちゃんだし。

「うん、そうなの。食事のマナー、体力とか技とか社交辞令とか…私はダメダメだった。でも、怒られたりはしなかった。お姉ちゃんは私より小さな時に怒られてたのに。それが気に入らなかったみたいで。」

それからお姉ちゃんは冷たくなった。

「それから、ある日お姉ちゃんは出騎士した。その頃と言っても、十一歳だから、特訓はさせられてたよ。だから、お姉ちゃんが行ったあとで、こっそりついていったの。何か出来るかもと思ってね。そしたら、大きな飛行機に……砕かれてた、お姉ちゃんの身体が…その瞬間を私は見てしまったから」

その時は苦しくて寂しくて悔しくて、泣いて泣いて泣いて…………復讐を決意した。

「私は大好きなお姉ちゃんを殺した飛行機ももちろん許さない…でも、こんな世界の方が!大切な人を奪う世界が!わたしは許せなかった。」

「アリアちゃん、それに関しては同じ意見だよ」

「だな、言いたいこともわかったよ。」

私は、初めて打ち明けたこの最悪の思い出。みんなはすぐ理解してくれるわけじゃなかったけれど、しっかり話を聞いてくれた。

「その、何?飛行機って、飛行船かなぁ?」

ケイは飛行船、海賊船、などよくある船の名前を述べていった。

「でも…、大きいエネミーって、集合体だったって例もあるから…とにかく、私達がいられる限り、調べてみることは出来る…かも」

クララは自分のベットから、パソコンを持ってきた。  

「そんなの持ってたっけ?」

「マイクロチップ作用になっててね…。収納力高くて。」

そう言いながら起動させた。そして、

「たしか、弟が調べてた気が…あ、あった。」

レポートゾーンというところをクリックし、開くとたくさんの文字とグラフに埋められたページが出てきた。

「何かわかるかもしれない…」

「クララの弟はすげーんだよ!世界トップレベルの研究してるし、でっかい研究所にスカウトされてるし!」

ケイは目を輝かせて言った。そしてくださいケイをかるーくスルーしてクララは言う。

「ええ、まずは謎の飛行物体を見つけたとき……」

「そんなのより、正体は書いてねぇのか?」

カルラは割とせっかちだから…勝手に下へスライドさせていく。

「飛行物体は操縦がかなり難しいため、人工的に作られたのもなのかと考察する…は?!」

つまり、機械の意志ではなく、操縦士の意志…?!

「それってどういうこと…」

「その機械は、中で操縦してる人がいるとか…もしくは、遠距離操作…?電波飛ばせばできるし…。」

クララはやたら詳しい。

「そんなのどこで知ったの?」

「独学よ…。小さい頃、なんであいつら動いてるのかなぁ…て思って…」

凄いなぁ……私はそんなこと考えもしなかったのに。そういう物だって思い込ませていたのに。

「いずれにせよ、人間の手が加わっていることはわかったんだから、それが誰なのか突き止めよう。機械と違って一人ひとり人間は違いがあるから。」

そう言いながら、セルシオは私の肩を叩く。

「仇が打てる。良かったな」

でも私は一つ思いついたことがある。

「私、同期の一騎打ち戦のあと、世界十大舞楽のちからを持つ人たちを探す旅にでる。」

そう、きっとお姉ちゃんと関わりもあるだろうし、何より強い人から技を盗むのがいいと言っていた人が多い。

「了解〜。じゃあ準備しなきゃね」

「旅先に美味しいご飯がなかったらどーしよ?手羽先食べたい!」

「それはいいだろ」

カルラたち三人は言った。

「え…?」

「一人では行かせない。ついていく。」

カルラは私の手をとっていった。

「そんな、私みんなの足引っ張っちゃうから…」

「何言ってるの?アリアチームは強いじゃない!」

アナはその手に自分の手をかぶせる。

「私…ついていきたいのは山々なんだけど…」

「一騎打ちのあと、もう戻らなきゃならないし……。」

クララとケイは悔しそうに言った。

「気にしないで。でもお願いしたい。舞楽を教えてください。」

私は一所懸命に頼み込んだ。クララは

「ええ、それなら出来る。」

笑ってくれた。

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