第5話2人の戦士は舞楽を使う

しかし、その人達は突然現れた。

「今日紹介するのは、短期留学生の、ケイとクララ。二人はアリアたちと同期生だから、仲良くしてやってね」

少し遠くにある、ライバル兵のスクエアネック兵団というところから来た二人の男女。私達と同じ部屋のため、何かと話さないと気まずい雰囲気に陥った。

「えーっと、私はアリアです」

「カルラという」

「アナです」

「セルシオだ」

二人はじぃーっと私達の顔を見て、口を開いた。

「はじめまして。僕はケイだ。」

「クララ…。」

ケイは順番に名前を読んで、覚えようとしてくれている。

「クララ!出騎士は俺たちだっけ?」

そう、たまたまなのか、計算のうちなのか、今日は一年生の出陣。クララはコクっとうなずいて頬杖をついた。

「ところで、みんなはどんな技を使うの?」

技…?適当に斬るぐらいしか教わってないけど…

「私は十字回転斬りができる。」

カルラは難なくいうが、十字回転斬りはものすごく難しい技で、天才と言われるものしかできないらしい。

「へぇ、他の人は?」

私達は不思議そうに言った。

「一般的な剣術ぐらいかな」 

すると、ケイは笑いだした。

「アハハハ!やっぱりテクニカルチャートは養育がままならないって噂は本当だったんだ!」

「ケイ、笑いすぎ…。失礼になる。」

ケイは私達をあざ笑う。クララはペシッと肩を叩いて注意をした。するとアナが、

「何を言うの!ひどいでしょ!」

可愛らしく怒る姿に、ケイは笑いを止めた。そして、可愛いと言って微笑んだ。その後アナはボソッとつぶやいた。

「今に見てろよ、てめぇ等なんか秒で殺したるから」

アナはほんとにイライラしている。それがわかった私達四人は、笑うことができなくなった。

「え?なんか言った?」

「なんにも言ってないよ!」

アナはぶりっ子して、にっこにこした。

「知らないの?『十大舞楽』!」

何それ?と言った顔になる私たち。

「舞よ…。舞によって体温を集めて力に変える。そういうこと…」

「舞ぃー?」

カルラはクララの方を見て言う。

「まぁいいじゃないか!僕達が見せてあげる!」

そんなこんなで、出陣の時間を迎えた。 

「さて、やるか!」

「暴走しないでよ…」

二人はペンを捻る。真っ先にクララは走り出す。

「氷風の舞、瓦解氷消!」

そう唱え、しなやかで不思議な舞をする。そして、クララはサイバーを地面に叩きつけた。すると同時に、ドドドッと氷山が現れた。すごい、これが…

「ナイス!僕も!豪炎の舞、気炎万丈!」

ケイはクララとは少し違う、力強い動きだ。今度は炎が、渦を巻いてものをもすべて焼き尽くした。

「これが…世界十大舞楽…!」

「凄いでしょ?」

ケイは見事なドヤ顔をみせる。

「アリア!ぼーっとしない方がいい!」

セルシオは私の前にいた機械を倒し、どんどん先に行った。

「オラァ!さっさと消えろぉ!」

得意の技でカルラは、調子よく倒していく。

「アリアちゃん、後ろ!」

アナの声でハッとする。背後でドガガ…と落下しながら攻撃してくる機械…!

「…ッ!」

危機一髪、大型機械の攻撃から飛んで避けた。あと少しで死ぬかもしれなかった…

「逃したか…王家の娘よ…」

え?今、機械の中から声がした…?いやまさか、そんなはずは無い…

「またぼーっとしてたのか!」

カルラにペシッと頭を叩かれ、我に返る。

「ねぇ、今声しなかった?」

「するわけ無いだろ!集中しろよ!」

カルラは私のことなんて気にせずバッキバキ倒す。

「ねぇ、そろそろ撤収の連絡が入るわ…」

クララは上を見上げて言った。

「なんで分かんだよ」

カルラはギッと睨んで言った。恐ろしい…

「太陽が傾いているから。」

「お、じゃあ帰るか!」

ケイはウキウキして先に進む。が、

「待って」

その服の裾を握ったクララ。当然のごとく、ケイは後ろにすっ転んだ。

「なんか雲行きが怪しくなってる」

「その前に大丈夫、じゃないのか……さすがクールガール…っっ…いてえ…」

ケイは苦笑いしながら後頭部の痛みに耐える。空を見上げて遠くをじーっと見つめるクララ。まるでケイのことなんて心配してないかのように…

「大丈夫?!ちょっと血が出てる…」

私とセルシオはケイの近くによって手当をした。アナはケイが苦手らしく、突っ立ってぼーっとしていた。一方。カルラは、クララに聴き込む。

「雲行き?んだよ、そんなんがなんか役に立つのか?」

ここにもクールガールがいた…。クールガールというか鈍感ガール?アナは嫌いなだけだろうけど…

「ええ。空と地は似ていないように見えて実は繋がっている。赤い空は危険の証…」

スッと指を上になぞる。

「ここ一帯が赤くなったら、良からぬことが起きる…気がする」

うーん、凄いこと言ってるのに、責任から逃げてるから説得力が皆無。

「さ、今度こそ帰ろう。ダラダラしてたら日が暮れる」

セルシオは頭を打ったケイを背負って言った。

「そうね、行きましょ」

スタスタとクララは歩く。

「待てよ、お前なんで雲行きだとか空と地の関係だとか分かんだよ」

トテトテ、と小走りにクララについていく私とカルラ。

「第六感…かしら」

そんな私達には目もくれず、前をまっすぐ歩いていく。

「なんだよ!それ!」

「カルラ、第六感は、勘の事。何となく、とか、感じる、とか根拠はないけど自分が予感することだよ」

私はカルラに説明した。論より証拠のカルラなら、きっとあまり頼ってこなかった術だと思う。

「よく知ってるのね」

クララなぜか嬉しそうに言った。その後、カルラはブツブツつぶやいたり、アナがケイのこと睨んでたりしたけど、無事兵寮についた。

「さ、包帯巻かなきゃ。頭部の出血は危険なんだぞ!」

ぐるぐるになったケイの頭。セルシオはケイの手当をしてあげて、運んであげた。ほんとに優しいと思う。こういうときは、言ってあげたほうがいい。

「セルシオは優しいね」

するとクルッと私の方を向き、じっと見つめた。そして、

「あ、あぁ…ありがとう」

困惑しながら微妙な笑みでお礼を行った。

「アリアちゃん、汚れたからお風呂入りましょ」

アナは灰かぶった髪を見て、言った。

「うん、そうだね。セルシオ、先入ってもいい?」

「あ、うん。いいよ」

うちの寮は大浴場が3つ。先輩方の入るのとはちがくて、底辺の私達は一番狭いお風呂に入る。

「一緒に入らないのか?」

ケイは、突然言い出した。

「ちょっとケイ何言ってるの。無礼よ」

クララは口元に人差し指を当てていたが、カルラは鼻で笑った。

「風呂で男女分かれるのは当たり前だろ!それともなんだ?ケイはいっつもクララと入っていたと言うのか?」

ケイは首を横にふる。どうやら、そうじゃないらしい。

「いや、だってセルシオ、女の子でしょ?」

?!みんな一瞬固まった。クララは呆れていたかな。

「あはははは!!!」

アナは爆笑。カルラもニヤニヤし、私も少し驚いた。

「俺は男だ!」

「ケイ、セルシオは男の子よ」

クララも白い目で冷たく放った。

「えー!そうなのか!?!手当うまいし、髪の毛長いし、優しいから、てっきり女の子かと!」 

いや、そうなんだよね。だけども流石に気づかなすぎる。

「……」

セルシオは、喋らずに、大浴場の方向を指し、私達に言っておいでと伝えた。落ち込んでいたのかな…。

「しっかり謝っておくのよ。強さとマナーは違う…」

クララもコツッとケイの頭を叩き、私達と浴場に向かった。

「悪かったよ」

「いや、こんな格好してる俺も悪いよな」

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