第4話王女は仇を打つ
私達は何も言えないまま部屋に戻った。
「当分南区には行けないようになりそうね」
事情を知ったアナはつぶやいた。とっても重い空気。
「ところで、あのエネミーはどうやって倒したんだ?」
「アリアが倒したんだ。…なんか怖い顔してアリアじゃないみたいだった。」
サファテお姉さんの言葉で、私はまだ伝えていないことがあったことを思い出す。今までは黙っていたけど、そろそろ伝えた方がいい。お姉ちゃんの仇を討つのだから。
「あの、さ。」
3人は私の方を見つめる。
「どしたの?」
「私、その…、王女、なの。」
「へぇ〜……ええっ?!」
そして疑うように目を見開いて言った。
「冗談でしょ??だって王家はもう死んで途絶えているはずだよ?」
アナは半笑いで言った。でも私は打ち明けてこなかった、このことを初めて話す。
「お父さんとお母さんは暗殺だと言われている。だけどお姉ちゃんは違う。お姉ちゃんはエネミーに殺されたんだ。」
カルラはわけが分からないと言ったようで、詳しく聞き出してくる。
「なんでアリアが知ってるんだ」
「私…目の前で見たからっ…お姉ちゃんが体を真っ二つにされる所を…!」
そうだった。お姉ちゃんの傷だらけの体。血まみれになって骨がむき出しになっている、憧れのお姉ちゃんの身体…最後まで、私は見ていた。
「今まで隠しててごめんなさいっ…でも、仇を打ちたいの。お姉さんの言葉で我に返ったんだ。二度と、私の大切な人をあんな風にはしたくない。」
私は、全て話した。なぜ隠していたのかも分からない。でも、私は決めた。お姉ちゃんの仇を討つ。
「アリアが言うなら嘘じゃないよね」
3人は納得し、笑ってくれた。これがあなた達じゃなければ、きっと信じて貰えないような気がするよ。
「臨時の管理人を務める、レオンハルトだ。亡くなった先輩の葬儀は後日行う。ここで黙祷しておこうか。」
部屋に戻った私たちに挨拶に来てくれた最年長の先輩。私たちは目をつぶり、祈った。黄泉の国でも、どうか、どうかお幸せに…
まだ少しみんなの目を赤いけど、少し切り替えるように頑張った。
「セルシオ、ちょっと…」
「?どうしたの?」
セルシオの髪の毛をひと房とり、言う。
「セルシオの髪の毛、結んだほうがいいかなって。」
後ろの高い位置で結ぶ。昔は結われる側だったから上手くは出来ないけれど…
「あ、ありがとう。」
「似合ってるよ」
私は笑った。
「今度、同期の一騎打ち大会があるってさ」
カルラはどこからともなく現れて、私とセルシオに話しかけた。
「何それ」
アナが聞く。
「知らないのか?この兵名物の一騎打ち戦!」
「へぇ〜、カルラと闘いたくないなぁ」
「俺も!」
「そうそう!セルシオ、女子なんだよ!この前私見ちゃったの、深夜に、お腹空いて一人でクッキー食べてたの!」
う〜ん、私からするとすごくいらない情報。だけど、彼女からすると重大情報。カルラからすると…ね。
「誰のだ!貴重なクッキーを!」
「実は…」
「実は?!」
セルシオは恥ずかしがりながら言った。
「手作り…」
アナは大爆笑。カルラは呆然。
「手作り…!」
「女子力の塊か!」
私もちょっと二人に釣られて笑ってしまった。
「アリアまで…」
その日の夜も、4人で幸せな時間を過ごせた。本当に良かった。
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