第3話怒りで出る力
「ねぇねぇ、ケーキほんとに食べに行くの?」
「当たり前でしょ」
カルラは真顔で言う。仕方ないのでお出かけの準備をしていると、
「すいませんー」
「めっちゃ声デカくない?」
多分荷物なんだろうけど、私はちょっとおかしくて笑ってしまう。
「なんの荷物かな!言ってみよー!」
アナは私達の手を引っ張って下に降りて行く。
「サファテさ、ん…?」
そこには一人の男と、血みどろになったサファテさんが倒れていた。
「さよなら。次はあなたかもしれませんね」
男はそう言い、笑って走り去った。
「待て!おいお前何者だよ!」
「アナ、そこはお願いします!」
セルシオの長い髪がゆれ、猛スピードで進む。
私は走って追いかけた。
「どこにいると思う?」
「分からない!けど、もしエネミーならばきっと暗くて乾燥しているところにいるはずだ!」
そう、機械は水が苦手。日光も鉄分が熱を集めてしまうのだ。
「あ!廃ビルの裏は?」
「だったらあのアパートの影の方が怪しい。」
私は走りながら一生懸命に考える。すると、わずかだけど南区に繋がるステーションから磁波を感じた。
「セルシオ!あっちだよ!」
磁波は、私の苦手な波動。頭が痛くなるんだ。
「ここか!」
そこはステーションの改札前だった。時間的にも人は少なく、動きやすい。だけど…
「ねぇ、セルシオ…あのさ、勘違いかもしれないんだけどね…街の人達の指先がサファテお姉さんと同じような色に変色して…」
「やっぱり、クロロフィル?!」
「クロロフィル?」
セルシオは私に注意を呼びかける。
「うん、多分。昔は高級着色料として使われていたんだけどエネミーによって悪用されたんだ。ウイルス性の薬物だから気をつけて。」
セルシオは物知りだなぁ…。そう感心していると…
「クロロフィルには独特の刺激集がするんだ。多分こっちの方に奴がいる。」
さらに隅っこの方に進む。すると、その通りエネミーらしき人物がいた。
「だれだ」
エネミーは私に言う。私は聞く。
「サファテさんを治す方法を教えてもらいたい。それからお前はなぜ人型のエネミーなのか。」
私は心底イライラしていた。どうしようもない嫌悪感が腹の奥で熱されていく。早く…早く、早く!助けないと!
「言え!」
私は荒々しい口調になってしまい、セルシオは私の後ろにいる。
「俺の毒は最強だ。師匠が開発したんだからな!治す方法はないね」
私は怒る。今までに感じたことがない。
「で?人型なのは何故かって?俺はエネミーからの攻撃に耐え抜いたんだ!」
何か誇らしげに言う。私は今にでも殺したかった。
「めでたく不死身のエネミーとなったぜ!お前らもそうならないか?」
「ならない。」
私はセーバーを抜く。そして、叫んだ。
「サファテお姉さんは言ってた。私はもうじき死ぬだろう。だから、お前に伝えておいて欲しいと!」
「何?」
私はセーバーを構え、言う。
「お前に私が殺せても、私の優秀な部下が100倍にして殺すって!今まで殺してきた仲間の分も、仇を討つって!」
だから私は倒さないと…早く…!サファテお姉さんが死ぬ前にっ!
「………」
とんでもない殺意とともに私は何故か目眩がした。そして、フラフラと足が動き、手も動いた。とたんに指先から足の先、頭のてっぺんまで熱くなり、力が湧いた。
「ギャッ」
いつの間にか私のセーバーは敵の左胸あたりを貫通していた。
「アリア!」
「ゲホッ、ゲホゲホ…早く戻ろう…」
意味がわからなかった。でも、会いたかった。
早く、サファテお姉さんに!
「サファテお姉さん!!!」
アナとカルラは深刻そうに見つめていた。
「どうしたの…」
「サファテ先輩、もう息してない」
カルラは言った。私は嘘だと言って欲しかった。冗談だって、本当は死んでなんか居ないって、言って欲しかった。だってさっきまであんなに笑っていたじゃない…
「アリアちゃん、先輩がね…よく頑張ったねって、アリアちゃん達にも伝えておいてって言ってた。」
「自分の姉の仇も、しっかり討ちなさいって…訳分からんかったけど」
私は多くの涙を流し、冷たいお姉さんの体に雫を落とした。カルラ達も怒りと哀しみに苛まれていた。
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