第11話

時間が過ぎて今はギルドの見学の待ち合わせ場所にいる。手にはマリアが持たせてくれた籠があり、その中にはおにぎりが入っていた。家を出る時のマリアの笑顔を思い出す。

「アル、今日ギルドを見てくるのよね。おにぎり作ったからみんなで食べて」

マリアは俺がギルドを見たいと言った時、何も言わなかった。魔法がないんだから冒険者にはなれないのに、と言われるかと思ったが、マリアはそんな事は一切言わず送り出してくれた。

マリアとはまだ3日一緒にいるだけなのに、マリアの優しさを甘んじて受け入れている俺がいる。

「ごめんね!ちょっと遅くなっちゃった。」

昨日の男の人がこちらに向かって駆けてくる。走っていたからか、少し汗をかいているようだ。

男の人はじっと俺の事を見ている。

なんだろう…そして男の人は一瞬だけ険しそうな顔をすると、直ぐににこりと笑った。

なんだ…?

男の人の態度に言及することも出来ず、俺はモヤモヤとしたまま男の人に話しかけられた。

「君の名前は…アルくんで良いのかな?昨日君の保護者の人が名前を呼んでいたから、そうかなって思ったんだけど…」

男の人は頬を人差し指で軽く掻きながら聞いてくる。何か昨日よりも態度が少しよそよそしい様な気がするけど、気の所為なのだろうか…

「合ってるよ…お兄さんは?」

返事をして、男の人の名前を聞く。

「僕はラキフェル。魔法使いをやっているんだ。」

ラキフェルか…

自己紹介も終えた所で、手に持っている籠を思い出し、ラキフェルに向かって差し出した。

「これ、マリアがみんなにって…おにぎり」

「おにぎりか!凄く嬉しいよ。みんなも喜ぶと思う」

ラキフェルは思いの外喜んで、籠を受け取った。

「それじゃあ行こうか。ギルドに案内するよ。」

サッと手が握られて、歩き出す。

「僕のいるギルドは少し特殊でね、訓練場があるんだ。訓練場には結界が張ってあってどんな魔法も練習出来るし、どんな剣術を練習してもいいんだ。」

ラキフェルは前を向きながら話している。訓練場か…聞いた事がない。

「訓練場で腕を磨きたい冒険者が集まるから訓練場は人気でね、酷い時には一日中使えないってこともあるから、使いたい時は早めに予約しておく事をオススメするよ。」

ラキフェルはチラッと一瞬こちらを見た。ん?なんか、俺がギルドに入る前提で話が進められてないか?

「あ、もうすぐ着くよ。あのギルドって書かれている看板が僕のギルドだ。」

指で指されたところを見ると、白と赤で彩られた他の建物よりも一際大きな建物がそこにはあった。

その建物の扉には傭兵のような格好をした人が立っている。

ここがギルド…冒険者の集まるところ…

ラキフェルは傭兵のところまで行くと、傭兵に話しかけた。

「この子は僕が連れてきた見学者。」

ラキフェルがそう言うと、傭兵は畏まりましたと言って、気を付けのポーズをした。

ラキフェルが扉を開けると、そこには見たことの無い世界が広がっていた。

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